黒猫ツバキ、若き天才魔女であるコンデッサが強敵のモンスターと戦うのを応援する
ここは王国の辺境。
若き魔女コンデッサは、強大なモンスターと向かい合っていた。
戦いが、今まさに始まろうとしている!
しかしコンデッサの中に、怖れを抱く気持ちは全く無かった。何故なら彼女は20代ながら、魔法使いとして天才的な才能の持ち主なのである。
しかも、コンデッサの側には使い魔の黒猫ツバキが居る。ツバキはまだお子ちゃまの猫で何も出来ないが……でも使い魔だから、人間の言葉が喋れるのだ! あと、応援も得意なのだ!
『ふっふっふ。いつでもかかってきなさい、無謀な魔女さん』
「モンスターのくせに、やけに丁寧な話し方をするヤツだな。では、私のオリジナル魔法をおみまいしてやろう」
左手には光の魔法!
右手には闇の魔法!
異なる系統で、加えてどちらもオリジナルの魔法を2つ同時に操れる――コンデッサはやはり、魔法の天才であった。
「喰らえ! 魔法《ライト》と魔法《ダーク》!」
「ご主人様。魔法のネーミングが、安直すぎるニャン」
ツバキの発言を聞き、コンデッサは魔法を放つのを躊躇する。
「……喰らえ! 魔法《煌々烈火来電一閃不可視光線》と魔法《無明暗黒劇毒浸食不可逆波動》!」
「その名称は、難解すぎるニャ」
「喰らえ! 魔法《ピカピカピーカ》と魔法《ドロドロド~ロ》!」
「それ、ダサすぎるニャン」
『あの……そろそろ戦いませんか? 魔女さんと黒猫さん』
「喰らえ! 魔法《光通信はとっても便利》と魔法《闇金融にご注意を》!」
「社会問題に関連するワードは、使わないほうが良いニャ」
「……喰らえ! 魔法《化粧のしすぎで顔が真っ白》と魔法《化粧の失敗で顔が真っ黒》!」
「ご主人様は、全世界の女性を敵に回しちゃうつもりなのかニャ?」
『いつまで、貴方がた主従の漫才を聞いていなければならないのでしょう……』
「喰らえ! 魔法《白河の清きに魚も棲みかねて》と魔法《もとの濁りの田沼恋しき》!」
「いきなり歴史ネタをぶっこむのは、やめるべきニャ」
「……喰らえ! 魔法《白紙委任は慎重に》と魔法《黒字経営でも油断しない》!」
「完全に、意味不明ニャン」
「喰らえ! 魔法《猫が居る世界は光》と魔法《猫が居ない世界は闇》!」
「素晴らしい魔法の名前ニャ! 満点にゃ!」
『もう帰ります』
「敵さん、逃げていったニャン」
「ふっ。わざわざ魔法を放つまでも無く、勝ってしまった」
「ご主人様は強いニャ! 凄いニャ! 天才ニャ!」
こうしてモンスターとの戦いは、魔女コンデッサの勝利に終わったのである。
「結局、ご主人様はモンスターさんとは戦わなかったニャンね」
「いいか? ツバキ。《戦わずして勝つ》ことこそ、最上の勝利方法なんだよ」
「やっぱり、ご主人様は天才ニャン!」
「そのとおり」
「ご主人様はジーニアス(genius=天才)な魔女……これからは『G-魔女』様と呼ばれるようになるかもしれないニャ~」
「それは、すごくイヤだ」
♢
『白河の清きに魚も棲みかねて もとの濁りの田沼恋しき』は、江戸時代の寛政の改革を批判・風刺した狂歌です。それを、どうしてコンデッサが(あとツバキも)知っているのかについては、スルーでお願いいたします(汗)。
ご覧くださり、ありがとうございました!
♢
本作はファル様より頂いたイラストをもとに、お話を考えました。
ファル様へ、心より御礼申し上げます!