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04話

   ――――再び辺境の平野――――


「・・あたしはマーラレイヤ!マーレって呼んで」


 軽症だったから覚醒が早かったのか?結構な頑丈な作りの体・・目を向けてはいけない奴だ。


「ん・・解った。それで今この馬車の止まってる場所が、マーレ達が最初に襲われた所な訳。そして一緒に居た人達はこの場所で倒れていたはずだが、あっちの森の方に引き摺られた後があって・・獣か魔物だろうな?身内?両親とか?兄妹とかか?」

「ううぅん・・違う、村に良く来る知り合いの行商の人だよ。彼等があたしを街へ連れて行ってくれる事になってたの。最近頻繁にこの街道に盗賊が出るから、警備騎士隊の定期巡回に付き添う方が間違いないって言ってた人もいたけど」

「・・そうか。それが待てなかったのか?」

「お金の問題だって。あたしのお父さんはその方法で街へ出かけてたけど、今までにお金が掛ったとは聞いてないわ。多分その仕事のやり方じゃないかな?うちでは作った作物を街で行商する為だったけど、彼等は村を巡り歩いて物を買い集めてから街へ行くって言ってたから」


 そのマーレの言う街までは、馬車を使った移動で五日程の道のりに成るらしい。そして国の警備騎士隊は、マーレが住んでいた村から折り返し繰り返していたと。この様な物騒な世の中でも街には余分な蓄えが出来ないので、定期的に必要な作物の搬入に滞りを防ぐ対策が施されていたのだ。


「そこでの五日間の護衛になるのに、それが無料とは考え難いけどな」

「税金!?」


 そんな嫌な響きに驚いた訳では無い、馬車の中で話し込んでいた2人に外からの物音が聞こえたからだ。今はこの血生臭い場所から直ぐに離れるのが賢明だろう、この馬車が囲まれる前に離脱する必要がある。


「痛かった」

「・・・」

「痛かった!」

「・・・・」

「痛かった!!」


 何となくだが、言いたい事やら何を思っているかは解る気がするが、ここでは知りたくないし理不尽でしかない。ちょっとした仲違いで、手を出してしまった彼氏みたいな窮地に立たされても、彼女を叩いたのはオレで無く盗賊だからだ。ここで(ごめん)は違う!(お前の敵は討った!)それは知っていても納得していないからの言い草だから、そこは自分自身が遣り返したかったが本音だろう。

ここは敢えてそこを無視して、イオは馬を操るのに御者台へと移動する。そこで悲しそうな顔で訴えていたマーレは、喉が潤せる飲み水と携帯用の食糧から驚きの速さで立ち直った。


 馬車は荷馬車に幌を被せたモノでそこの使い勝手は良く成っているから、イオが座っている御者台から馬車の中から会話できる小窓が付いていた。それが近代的なガラス窓・・それではないが、外側にある二重の布をペロッと捲り、後ろ側の帆の隙間を少し開ければ風通しの良い快適空間が完成する。


「さっきの話しの途中だった奴はね、そこで護衛にお金が掛からないのは必要な物資を街まで供給?それの売り上げに適正な税金が掛かるから、その他に支払える余裕のある人はいないんだよね」

「何も保護されないよりは、ましな制度だとは思えるな」

「そう?」

「ああ、何もせずに自力でやっとこ街に辿りついた者から、法外な税金を掛けてそいつ等の身ぐるみをハグ奴を良く聞くからな。そんな街が幾らでも或るとは良く聞かされたよ」

「・・掛けられてる税金が高いとお父さんは良く零してたけど、他よりは少しはマシなんだね」

「多分な。その護衛に掛けてる警護の人員の数は解らないが、その街までの行き帰りには10日も掛かるし、その間に必要な賃金に食費等の細々な経費の負担も出るからな。生産者の負担と釣り合いが取れてるかは解らないが、人を動かすにはお金が掛るのは確かだ」


 ここでの問題は多い、街中では人々が食べれるだけの自給自足が行えたりはしない。それを行える有り余る広大な大地が回りに在っても、さらにその回りを囲う壁を作る訳にもいかないからだ。ならば最低限となってもひと固まりの場所に村を作り、そこでの治安を守る采配をして行く。その先での街道の警備体制は、近隣の村人からの税収があるから維持されている。それはそこそこ立派な統治制作が、ここに行われていると思わざる負えない。


「・・それよりだ。こっちの方角が街でいいのか?」

「ほぇっ?」


 いや、その返事は聞こえてはいけないモノじゃないか?それ聞いちゃうか?って感じでしかないだろ。しかもここに居るのは、この世界が全く良く解らないオレと連れて行かれて初めて行く事の出来るマーレしかいないのだ。


「・・えー何?えっと何?そうそう、道は難しかしく無かったわ。それは殆ど一本道みたいな感じなのと、枝道が出て来ても馬車が通れる道では無い・・だったかな。次の村までは後二日くらいあるけど」


 二日?馬車の移動は馬任せでしかないが、人が歩いて移動するよりは十分な距離が稼げる。特に乗っているだけでいいのだからそれは楽ちん・・座り心地は決して良くはないけど。そんな重宝な馬車でも夜道を走らせはしないので、人が日に歩く三倍と考えても次の村までは二百キロも無いだろう。


「・・見えるか」

「見えるって何が?」


 そりゃ村だよ!っと言いたいが実際に今は見えないので、ここで一度止まってその村の偵察をする事にした。この上空・・ふわふわと浮き上がりそれが三十や四十メートルにでも上がれば、それらしい建物が見えてもおかしくはないからだ。

ただ問題なのは、マーレをこの馬車の中に一人残すのはどうなのか?マーレを一緒に抱えてふわっと上がれるのか?これは風魔法だよって教えても良いのか?その辺は大した問題じゃないと解釈する。


「なっ!なに?何するの?」


そんな事を訴えるマーレの腰をギュっと抱き見つめ合う様に抱き合うと、馬車の御者台の上から飛び降りアイテムから、傘の様なモノを頭上に広げフワッと魔法の発動・・そんな魔法じゃないけとな。


「ちょっと!今ので浮いて行けるのは解ったけど、あたしはイオの顔と胸しか見えないじゃない」


 解ってたよ、それと気づいてもいた。こいつは結構な我が儘女であったと。しかし、ここで簡単な解決には辿りつけない。その初めての高見からの見物に興味深々なのは解って遣れるが、マーレを落とさないように腹側をぎゅうぎゅう締めたら何が出そうだよね?ズリ落ちなければいい的におっぱいの下あたりで押さえても、柔らかいからプリンとしちゃうよ、知らないけど。

その結果が二人の太ももを片方ずつ別々に縛る・・色々と食い込んではいけない場所を淘汰して上手く縛った。その補助がお腹をそこそこの力で抱き止めている。それとたまにはしゃぎ過ぎた時には後頭部への頭突きをお見舞いした。


 これで移動する方が速く無いか?その疑問を口にしないのは、長く浮いていられない・・縛っている場所の負担が大きいからだ。結局そんな事をしている暇があったら先に進めが、何処からか聞こえた気がするが知らない事にしよう。

この馬車の中には、馬の為の餌である藁は積まれていた。しかし、その他の自分達様の食物は、ここに積まれてはいない。それはつまり飢えを凌ぐ食物は、イオが僅かに持っていたモノしか無いのだと。その結果が一泊の野営をせずに、次の村までの強行へと成った。

このイオ達が目的としていた村に強行での結果から、日が昇って幾らかの朝と呼べる頃合いに到着を果たした。


   ――――アフシレン王国・貴族ルシル・ド邸――――


 その頃の王都では、イオが遭遇した死体と可した剣士隊が消息を絶ってから二十日目であり、王都の規約に基づいた捜索隊が出される決定が決まった。

この捜索隊は消えた者達の消息を掴むのが目的である為、そこの選出に自選他薦は問われず問わられずになるが、効果が得られるかの優先度を除く事は出来ない。


「義援金の寄付願いとは」

「・・如何なされたのですか?ルシル・ド・イーツエンイ様」


 その手に持つ、王宮からの要請が書かれた書簡を読んでいたルシル・ド・イーツエンイの、険しくなった表情を察した従者の配慮の声が掛った。その身の腰近くまで伸ばした綺麗な銀髪の持ち主は、その声を察し呆けた態度に崩して答えた。この王都騎士の五指に入る彼女は、今一度眉目秀麗を張り詰めて決意を語った。


「まあ、困り事は簡単には収まらなかったといった所だ。そうなれば動かずに侮られるバカを被りたくはないから、既に出されていた者達からの人選に掛るぞ」


 ここまでに出されていた王宮からの使命なら、その特使が任を追っているので関われる筈も無かったが、この捜索隊の選出となれば話しは別である。その目的がここでは違っていても、自らが望まずな接触を避ける必要は無い。それは仕方なくな事ではあるが、好機などとも思っていないと嘘吹くのは容易いからだ。ここからは名誉や維新の言葉ばかりになるかも知れないが、そこは誰よりも縋りたい所でもあった。

この王都ではそんな明暗を分ける日を皆が待っていた、その事が収まるか命運を賭けて討ちに出るかの日としてだ。


「私は何の為に・・誰の為に戦うのだろうか?」


 その独り言は誰かの耳に入る筈もない、それ程に誰もが急を醸して動いていたからだ。その王宮でも慌ただしさが増していく、それは何処の誰がどの様な編成隊を引いて動くのかと。

深く知らぬ者が傍から見れば気に掛けずな所でもあるだろうが、見知りな者にとってはその勢力図がここで明白にもなる。そこが各々の貴族家同士の争いであれば、その陣頭指揮者に困ったりもしないが。


   ――――舎街・ヤハク村の宿の一室――――


「こらっ!大人しくしろ」

「出来るか!お尻が痛いって言ってるの」


 そのお尻を庇っているマーレは、素っ裸のまま両手を前面に押し出す格好で文句を唱えているのだが、そっちでもねえよと言いたい。むしろ何処から無くしたかの恥じらいに誤れ!その心境が吹き出してもいる。


「ずっと座り続けて痛くなったのはオレの所為じゃないし、この薬で治るかも知れないだろ?」

「無理!その薬は傷しか治らないのは他の場所で解ったじゃない。だからじっくり優しく撫でてくれてればいいのよ」


 なんでだよ!幾ら撫でても簡単に治ったりもしねえよ。そんな我が侭なマーレはプンプンしながら、勝手にオレの寝床に入ってくる。しかし、確かに今は無くなった恥じらいだが、今朝にはそこにあったのだ。


「大人にしてしまったオレの責任だな」

「何の話?」

「何でもない」


 そんなオレの上から、布団の様に素っ裸で覆い被さるマーレがそんな事を聞いてくるが、その説明はまだ不要だ。だがこの村に一軒しかない宿屋で、ここに泊まる交渉を済ませたのはマーレだった。実によく有る話で氏素性の解らない者を、簡単に泊めてくれはしないからだ。

そこで出番とばかりに、良く解らない地域的な話題を遺憾なく披露をしてそこで納得させていた。そしてその二人の馴れ初め的な間柄は、二人は何故かの婚約者同士である。

ここから二人は街に出て行って、時が来れば結婚へと道は開かれる。だから今は同じ寝床で婚前的な行為に・・そうでもねえよ。例え素っ裸のマーレがオレに覆い被さっている今でも、オレの潔白は証明出来る。それに座り続けてお尻が板の様に・・それ揉んで治るか!


 それよりもだ、寝息が聞こえて来たマーレのお尻りを片手で揉みながら、余った手で片胸を揉み上げる。ここは勘違いしないでよね!揉みしだいて堪能してたりはしない。だから未練で揉み続けずにもう片方も揉む・・持ち上げて怪我が無いのを確認しただけだ。

それと、眠むさに負けて予備の服の買い物に出て行かなかったので、今は着る服の持ち合わせがまったく無い。その結果が今の彼女の素っ裸であるのだが、モノのついでに体に残っている老廃物・・スライム的な全身が口らしきモノなのでそれで除去をする。ええ、つまり全身の至る所を満遍なく綺麗にするには、ちょっとした場所で声音が変わっても気に掛けてはいけない。夜通しの疲れを仮眠で消し夕暮れには嫌でも目を覚ましてそれ也の夕食を取った。


 そこは何もせずで寝起きなのだからそれ程の食欲が顔を出したりしないが、この今を逃すと明日の朝までは食事に有りつく事が出来ないからだ。

明日にはこの村を出て次の村へと向かうので、その為の昼食時の弁当らしい物も頼める事が解った。その支払が出来るのなら今でも頼めるが、そこで出来上がった料理を何処に置いておくかを知られても得は無いので、それなら道行で待ち合わせをしている人達の分として、結構な数を買い込む程度の嘘なら不信に取られたりはしないだろう。

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