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03話


   ――――そして再び辺境大森林――――


 目下に屍と可した剣士達に程なく遭遇してしまったレナードは、そいつ等の対処に苦労する事になった。おや?こんな所に死体が・・何処の殺人ミステリーだ?獣や魔物しか遭遇しない森の奥深い場所なら、人の死体が形を残している理由に推理が必要だよ。

おっと!そこは余程の馬鹿でなけれは、垂れ汚された血の全てが固まってない事に気づいて欲しい。ここで死体と成って転がっている剣士らしき六人は、ほんの少し前に死体にされたその事実をだ。

誰かにこの場を見られたら?そんな心配は不要な奥深なこの森は、間を置く事もなくその糧に群がるモノ達が傍に寄るが。それは違ずに周囲に殺気が膨らみ、その場の間抜けなモノは音を立てたか腹の虫が焦ったかの区別はつかなかったが、動きに遜色なく飛来するそれは群と呼べる数であった。そいつらを風魔法で横薙ぎにすると、好まずな抱擁を大木と交わす破目に成る。


「・・使えるな」


 先程倒し捕食を済ませたウルフらしき魔物は、お得プレゼントに風魔法の付与をしてくれた。そこは無理強いな感じでしかないが、全てを奪い盗られたモノに拒絶の意を表せはしないのだ。そして、呼ばずの無遠慮な訪問者達に数度の痛いオモテナシを与えると、諦めは悪かったがそれでも撤退へと向かわす事に成功する。


『そうそう諦めが感じんね。その者達を生き返らせたりは出来ないから、自然の摂理に任せてそこに放置するしかないもの。その遺品は有効活用とし大切に使えば、後で化けて出る事もないでしょ』


 何処かの上?から女神は呟くが、その声を届かせてはいない。それでも今のこの場が何処であるとか、この死体を受け入れる・・問題なしで引き取ってくれる場所を探せはしないのなら、森に棲まうモノに不要な物だけを天の恵みとして受け取らせる事にした。


 獲得品・・(数えるのが面倒な程の金貨と銀貨と銅貨・・アイテム収納袋六つ・・袋内包の六人分の衣類・・防装備と大剣小剣六人分・・)


 それにいつまでも森の中をブラブラと放浪しているのは楽しくない!景色の良い場所で自らが自炊をするキャンプとか、それを今は全く憧れなかったけど。

空気が美味しい所で旨い物を食べる・・スライムがそれを望む事は無いし、それに興味が引かれはしないだろう。少なくても餓死の危機を感じたなら、その食物に縋る行動があったかも知れないが。

必要な物・・数枚の衣類が重要であった。今の自分の装いはスライムの能力で衣服を表していた・・衣服に偽装した肉体は、脱衣が出来たりはしないからだ。人の目など無い・・素っ裸の形態に成って貰い物の衣服を着る。体に衣服を書いた変態認定は、この世界で通用はしないだろう。


「・・増えてるな。・・上からか?餌扱いされるのも困るんだよ」


 その辺らしい上の方を見渡すと、そこ吹く風に困らずの鳥らしい魔物が、こちらの隙を逃さぬ様子で間を詰めている。こっちは死体が運べるアイテムらしき物をその本人達から譲られたが、いつかこれの不都合を背負う事を考えた結果が、この場への放置とその後処理の委託であった。

その御礼が死体本人の肉体となるのは、厳しい生存競争を繰り返している森の中では、それこそ大変喜ばれる報酬だと言えた。


 その決意と衝動で足を動かす事に急かされたが、その判断を迷わせる様な出来事は起こらなかった。ただ、何も考えずでは自責の念に足が鈍っても困るので、新たに得た能力とお得なアイテムの使い道や、ここで採取した得物の活用法をついでに考える。そこも問題の定義からは少しずれているので、ここは移動しながらのやっつけ思考程度であるが。


「三百メートル程は飛べるけど、着地場所を見極めないと大怪我になるな」


 それは思い付きの試みで木のテッペン付近から飛び出し、数度の風魔法をそこで流用すると地に落ち切るまでに飛べてる距離である。そこを勢いよく跳ね上がれたならさらに距離を伸ばす事も可能かも知れないが、その木のテッペンへと登るには大変な苦労が必要だった。

この木登りの苦労をする必要が無くなったのは、それから三日程の日時ど道のりを経てからである。それでも夜道を迷わず進める程の豪胆な器量の持ち合わせは無かったので、そこは日が暮れたらその場で身が潜められる場所を見つけて休んだ。


「飛べないスライムはスライムじゃない!」


 そして飛んでいた?少し大き目な傘の様でありパラシュート擬きを、枝と蔦と恵の服を合体させた物を使って作り、上からの落下距離を飛躍的に伸ばす事に成功した。それで木のテッペンからの落下や自ら跳ね上がり、それをアイテムからパッと出して下から風魔法・・似非気球のこの世界版と言った所か。


「♪行ってみたいな他所の国♪」


 この光景を見ていた女神は最早それに呆れるしか無かったが、そんな美味しい得物を狙って飛んでくる愚か魔物も近くには居なかったのと、それを地上から迎撃する猟師も現れなかった。その高さも弓では無理があるから、他に射止める武器はこの世界には無いだろうが。



 その上空から動いている何かを見つける、最早や餌を探している鷹と対して変わらなく成っていたが、体の為に魔力の補給源は必要不可欠なので、対峙するのに問題がなさそうな獲物を捕食するのにだ。ここでの戦いはとてもシンプルである、相手の面前へと出れば怯え逃げる魔物はまずいない。その相手が強者か弱者かの判断は、戦った結果で知る事には成るが。だがそれに気ずいたのか?その前に息が途絶えたかは、そいつしか解らなかったが。

今は降り掛かって来る気の休めない状況が日々続いているので、そこから得られる経験だけは濃密と言えたであろう。


   ――――和室造りの一室・女神宅――――


「何故かしら?戦いに明け暮れているのよね」


    ――――辺境の平野――――


 今は焦りに塗れていた。先程からチラチラと見えたのは森では無く平野では無いのか?しかし、6~7割は開拓が済んでいない野山であったが、どうしても贔屓目に偏りそこは平野だと思いたい。それがどちらであっても、誰にも何の影響もまったく起こらないのだが。


「どうした?」


 そこに何が起こっていたかの予想はついていた。それが道らしきものだったので、それに沿ってふわふわと何度目かのウキウキ移動を続けていた。そしてついに動く物体・・生きている人間を確認する。

それがこっちの方角へと向かって来る馬車、その馬車に振り落とされない様にと数人がしがみ付きながらだ。その先に有ったもう一台の馬車が反対を向いて止まっている。


「・・おっ! おおおっーー!」


 その馬車にしがみついていた者達は上からの問い掛けでこちら向き、ウキウキ滑降中の姿に驚きの気勢みたいなモノを発した。その中の一人だけはこちらを見ていなかったので(盗賊だー)と叫んでいる。

その馬車の上を過ぎてから地面へと滑走すると、止まって襲われている馬車へと全力で走り寄った。それが幌型の馬車・・そこで数人が一人に向かって攻撃をしていたが、それも直ぐに決着した様でその動きが鈍くなる。その直後に見えてなかった馬車の背後から若い女の悲鳴も届いた。


「いやー!誰かー」

「おいおい、女にまで・・そのまま荷物みたいに馬車に積むとか、ほんと中々凄いなこの世界」

 

 その場で殴られたらしい女はぐったりと崩れ、そいつ等が女をその馬車へと放りこんだ。ここでの遣る事は決めていたので、その足を止めずで考えを纏める。それも流動的に・・予想通りにその馬車は逃げる様子で走り出した。その馬車の外で見かけた男は三人、その内の二人が馬車の中へと消え一人は御者台で馬車を操っている。

馬車を引ける様に調教された馬は、操り手が無くなれば勝手に走り去る事は無い。その馬車に追いつける可能性がここで低くなったと感じ、ここに来るまでに練習済みの石での投擲を決意した。

だがそれの用心を重ねその石を三連投し、その中の一つの石が標的と射線が重なったので風魔法を放った。


 この風魔法の能力は移動・・だと認識している。その効果範囲は起点から終点までが、手の平サイズの石で七十メートル程であった。

因みに自らの身に掛けると、そこから十メートル程度は阻害を受けない効果があった。そしてその効果範囲内では重力の法則は無視される・・干渉を受けないのだから、そこでは標的を外す事も無い。

今回は石の三連投で保険を掛けていたが、そのどれかが当たれば良いではなく、そのどれかに射線を重ねられれば良い・・だ。

そして御者台の上で鼻歌まじり?に馬車を操っていた者は、突然飛来した何かでその頭を強打されくぐもった悲鳴と共にあらぬ方向へと吹っ飛んた。


「何だ!何があった?」


 それでその馬車が急激に速度を落とすと、その馬車の中から声の当人らしき男が顔を出し叫んだ。その顔のそばを勢いよく追撃の石が通り過ぎ、それを投げていたイオに気がついた。


「・・止まったか?・・お~い、まだワンアウトだから、次にさっさと交代しろよ。オレは完全試合を狙ってんだからさ」


 ついっと出た下らないボケだが通用する気がしない、しかし今に安堵した自分からうっかり出た本音には絡んでいた。この馬車を止めるのは成功で、後は中に連れ込まれた女の安否と見えてない追加支援者の有無の確認が必要だろう。そこで出て来た奴らの手には、適当な盾変わりに使えそうな物を持った二人が、厳つい顔つきで各々ともにイオを罵りだした。


「何やってんだこのクソがき、オレ達が何だか解ってねえな」

「まったく・・ぶっ殺すぞてめえ」

「何って偉そうに言える仕事は今はしてないよね?」


 そんな威嚇をする二人の間へ、集めておいた手持ちの石を投げ込んだ。そこで素早くアイテムから貰い物の剣を抜き出し身構える。


「その石には気を付けろよ。・・死地で気を緩ますんじゃねえよ」

 

 イオの先で向かって左側にいた男と落ちて来た石が射線で重なると、一気に風魔法を使ってその顔面に石を叩きつけた。そして一足飛びで右にいた男の懐に入り、その男を手持ちの剣で斬り飛ばす。


「死んだが?・・まあ、どっちでもいいけどな。それよりも馬車の中は?」


 そこで急ぎ馬車の中を覗き込むと、そこに怪我の女・・どっちかって言うと女の子?そんな女の子が意識を離して転がっていた。直ぐに死ぬ事は無いな・・その判断から馬車の回りの探索を始め、この盗賊達が三人組だと理解した。

この馬車の襲撃地点に目を遣るが、そこに先程は倒れていた者達の姿も見えない。そこで嫌な予想に辿り着いたが、ここではこの盗賊達の武装の摂取を優先する。

まずは馬車の中で気を失っていた女の意識を取り戻させ、馬車の旋回の仕方をそこで教わり最初の襲撃現場へと戻った。そこで消息を絶った被害者がどう成ったかの憶測は高めたが、ここでモサモサと新たな餌にされても困るのでこの後の行動を急ぎで決めた。その当初の予定を変更する気がないのなら、その予定に付き合う事にも・・だ。


「オレの事はイオって呼んでくれ。そっちは?」


 イオでーす!良く解らないけど多分本名だと思う。その良く解らないのは以前の記憶がないからで、貴方の名前はイオですとあの適当な担当者が言っていたからだ。


   ――――和室造りの一室・女神宅――――


『・・良かったのですか?勇者として後世にも伝えられたレナード・ヴァン・ケッペルと言う高名をお持ちですのに』

「その名の持ち主はもう他にいるのよ。そしてそれ也の功績を残したから、何かで足が付いても困るもの」

『その扱いが踏襲した蛮族と変わっておりませんが』

「それに近いわね。そこは後世でのポット出が、何かのオマージュに間違われてもそれも嫌じゃない?それよりはバンピーの有象で、そこに埋もれているのが良いでしょ?」


 この主人公は憶に数える非凡な人生を望んでいる・・そんなスライムが居たりはしないが。勝手に名を変えさせた女神は、主の為を思った魔剣の申し出を跳ねた。しかし、女神としての行為にモノ言いたい所だが、妻としての立場であれば勝手も構わないだろう。どこにでも夫婦にしか解らないルールらしきモノがあるからだ。

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