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02話


勇者復活 !


 あの異世界最強と言われた大魔王との決戦、ついにそれを倒してここに幕を閉じる・・それを消滅させ異界の無へと落としたがその勇者が道ずれに・・この世界を創造したとされる女神でさえも、消えてしまった勇者であるレナードの行方を探知する事は出来ず非常に焦る事に成る。


   ――――翌日・和室造りの一室・時間軸は当時からは400年後――――


『女神様、1つお聞きしても宜しいですかな?』

「なっ、何かしら?」


 この異世界の魔剣の長とも呼べるこのモノが、我が主であるレナードの隣に座っている女神に厳かを感じつつも声を掛けたのだった。しかし、隣とは言っても寝そべったままのレナードは、先程から何も語ってはいなかったが。


『あの大魔王との決戦の後、我が身が400年程の放置が成されていたのは気の所為でしょうか?』


 ほんと長かったよ!人の身であれば、4回以上は転生しとるわ!そんな事を魔剣は内心に思う。この世界へと女神から仕わされて早や九百年・・この女神ならアリか。


「き、気の所為よ。そこは忘れてた訳でも無いわ。あの後・・大魔王と一緒に異界に飲まれて、両方ともに行方が解らなくなったのよ。そこでその場から千年先くらいまで視野を飛ばし、この五つの世界をくまなく探したけど見当たらないから、それなら異界からは吐き出されていないのだと判断をしたの。その異界の散策はしたけど私怨や怨念や未練みたいなモノしかなくて、彼が前から零していた愚痴がそこで引っかかったわけ。私との子供が・・兎に角それで翌日には、レナードの残りカス程のこれの破片を見つけたわ。そのカスに(私との子供が欲しいでしょ?)って何度も語りかけたら、ココがここまで元気に・・ココが最初に複製されたのは何故なのかしら?」


 そこでスパーンと主の何かを?勢いよく女神が叩いたが、魔剣に目はないので人と同じ有様を知る事はない。ただ、叩かれた瞬間には異常な活力・・魔力がそこで強固にされたのを感じ取ってはいた。叩いて良かったのかは別にして・・


「それが昨日なの」

『・・?』

「今は体の殆どが修復されているから、後は魂を体に戻しあの魔王退治のご褒美として、今一度の遣り直し人生を与える事にしたのよ。彼をどの辺に送り込むのかも大方は決めたので、貴方を連れ戻したのは先程になるわね。それがたまたま時間移行の途中だったから、そっちの時間では400年と数えるけど、私の時間では半日にも成らないわよ?それより貴方もレナードと、離れ離れな生活には無理があるのよね?」

『・・はい。主様の生涯に尽くす定めとして存在しますので、魔力の結びつきが消えないのであれば新たな主を迎える事は出来ません』


「レナードの魔力は心配なく補給を約束するから、又しばらくは先に行って安全な道を作って置いて欲しいの。それと貴方が表立った従属の形に成れば、それ程の偉大なる力の為に災いを呼ぶかも知れないから、少し変わった形でお願いね。その所は又後で指示するとして・・」

『わが自身の力が、偉大と言われるのですか?』

「それくらいに力が発現されなくなった世界がそこにあって、その未来では誰かの脅威になる存在も現れないわ。そんな温室で彼がその生涯を過ごすのが、戦いに明け暮れずに済む気の置ける場所になるはずよ。そこで必要な労いには私も伺う積りだもの。それに貴方達が突然その場に沸いてしまったら不自然極まりないから、そこに必要な既成事実は私が用意するわ。そのおもな所の担当は貴方になるけど、そこも宜しくお願いするわね」


 それが本当に用意されたモノかは解らないが、女神の言う世界で主が不在のままの魔剣は、軽く100年近くを過ごす事になった。

生き物では無い生を持たない魔剣だから、時が過ぎる事には無頓着で当たり前だが、その回りを型どる生或る世界はそうでは無い。現に魔王討伐後は150年も掛からずに、そこに合った幾つかの国が滅んでいる。それは絶滅をした形ではないが疫病が蔓延しそこでの生活が出来ない状況や、単に士農工商での繁栄に釣り合わない土地なども在ったからだ。


 あの大魔王の存在すらも消え350年の時が過ぎ、この身勝手な女神の手からペイって放たれ100年もの時も過ぎた頃には、後に改名されたアフシレン大国のレグシルツの街の武器屋で、売れ残りのデットストックな魔剣として身を落としていた。


   ――――大魔王滅失より・時間軸は当時からは500年後――――


*ここはアフシレン領域アフシレン王国辺境大森林*


ここに主人公であるレナードは、ある事情を抱えながら目覚めた。彼は新たな人生が遣り直せるとの事で、この異世界らしき場所へ飛ばされた。それでも大変な・・特別な苦労事も今は抱えていないが。

この見渡す限りが鬱蒼とした木々で、そこら中を覆い茂っているのは見るからにここは森であるだろう。そんな森の小枝に成っている、どんぐりみたいな実をあちらこちらに見つける。しかしそんなドングリも今は食べたりはしない・・


「・・スライム化は良い選択だったかも知れないな」


 そんな事を呟く・・彼はここに飛ばされる前に色々な選択肢に迫られた、それにはここに来ない選択肢も・・だ。遣り直しの人生を選んだ事で、今までの人生を捨てる事になる。だが、死ぬ事に成った前の人生に未練を持っても仕方ないし、もう1度の遣り直しのチャンスをくれるのなら・・それが正直な所、引き換えに成る今までの人生をオレは覚えていなかった・・まったくな程に覚えていなかったのだ。

(それって選択する必要とかも無くね?)その過ぎた過去に未練やへったくれも沸き様がない。なら、ここでのもう一度の人生は丸得な一択であるはずだ。


 それにしてもあの時の担当者が、酷いと言うか結構なびっくりさんだった。(そっちに行くって貴方が決めたのなら、さっさと行って下さい)もう少しの説明があってもおかしくない?

そのまま何も知らずにこちらへポンと放り出されたら、遣り直しの人生が最短で終了しちゃう所であった。

オレだって若さ故の急ぐ過ちを何度も見て来たのだから、ここは謙虚に説明を求めより良い選択で後悔は少なくする事を選ぶだろ?そんな足下を確かめて進むオレを、突き飛ばすかの様に担当だと言う者がほんと面倒臭さそうに(自分で勝手にヘルプを見て決めて下さい)規定時間内でとお願いもされ、オレの遣り直し人生はこんなに軽いのだと。


 その規定時間内とされたその間を監督する気も無い担当者は、ここで席を外しこの場から離れた・・(あれ休憩だな)何処の役所だ?まさかの公務員か?2度と帰ってくんな。って、さすがにそこを憤慨するとか問題にならないだろう。

それより自分の身が一番大事なのも確かなので、そのヘルプには何が在るのか?しかし、そこにそれ程の重要なモノが書かれてはいなかった。まず行先・・そこは魔法が存在する世界。何これ?魔法が存在しない世界も在るのだと。


 この文言には引っ掛かりを覚えた、それは在るのがおかしいと引っ掛かったのでは無く、無い世界の方に違和感があったからだ。少なくとも前に住み人生を送っていた場所には、その魔法が存在していた場所なのだろう。魔法が在れば何でも出来る・・そんな事は無いが少しは便利であるからだ。

ってか、それが書いてあったのにそこは選択不可で行先も決まっているとか、どんな策略に嵌められてるの?これって理不尽!とか言う奴のセリフを言わせたいのか?言わないけどな。ここは間違いなくそっちの勝手で何処かに飛ばされるらしいが、その飛ばされる場所は選べないし環境設定もダメだけど、そこでの個人設定?は有りとか今更だし。


 そこでキター??神とかの設定もある。あなたは神に成れるかも知れない?ホント何だこのバカ設定。

この手の尊大なモノを選んでも簡単に成就されたりはしないし、その険しい道のりを邁進する前で半ばに死ぬ事に成るだろう。それより村人や街人なら成就する為の試練は無いし、そこは周辺に放置され生きる糧を得る為に稼ぐ苦労があるだけだ。

他の種族も豊富にあった・・が、現体躯と同程度の質量変換に限るとの文言がついていた。・・知らないがこの体程度の獣人・亜人・魔物・ドラゴン?これってその屈強な所は付与されず・・だ。その魔物の群れの近くに放たれても、そこでの扱いは他人の餌だろ?人じゃないけど。


 屈強な体躯を持たずのレベル?から、どんな試練が熟せるかの想像もし難い所だが、種族間の諍いが少ない奴であれば人よりも特性は強くである。森の魔物枠(鳥類・獣類・子鬼・大鬼・・)モンスター枠(ゴブリン・オーク・スキュラ・マミア・オーガ・・)嫌な分別でそこは気が滅入った。

そこに変なのが居た・・スライムである。こいつは不思議な生態の持ち主で、悪食によって魔力を搾取する仕方をする。その食事の仕方は捕食をするでもあり融合でもある・・だ。


 このスライムには身を守る為の擬態化能力があり、その相手に融合する質量の割合でそれが可能とあった。さらに付加される能力に制限が無いので、融合する相手の能力も得られるポイントの高さが書かれていた。それは一定の期間と経験値を重ねてそれから得られる特性では無く、巡り合える相手次第だが効率良く融合すれば馬鹿に出来ない所だ。

世の中は必要な知識を与えるのに、時と場所を選んではくれない。最初の学びで人種を選ばなかったオレには、当座が凌げる支度金は授与されなかった。それとオレが選択したスライムは森に生息する種族であったから、その結果が何処か奥深い森の中へと落とされ、ここから始まる試練を嫌が上でも受けなければ成らなくなっている。


「・・ウルフか?」


 そうカッコ良くオレは呟いても、相手が(はいそうです!)そんな返事がされる事はないのだ。そいつはそんな事は関係なしにオレを仕留めるべく、死に向かわせるレクイエムの声音を大きく零していた。攻めてここから立ち去れとの威嚇の唸り声であれば、二つ返事と愛想まで振りまき添えられたのだが。

そいつはどう見ても後足しの二本立ちに成ったら、オレよりもデカそうな体躯をしている。ここで幾らかの切ない逃避も相手の決意で蹴散らされ、抗えない殺意の籠った暴力を幾度も浴びる。

その暴力が効果の高い瞬殺力を発揮出来ていないのは、身を隠し保護を助ける森の中であったからだ。そいつにとっても思わぬ場所で大きな餌と遭遇したのだから、これが要領が得られない戦いにも成っていた。



 それでもあっちから何度か足に受けた攻撃で動きを封じたと確信したそいつは、少し余分に距離を取ってから一気呵成に突っ込んで来た。

そこで一つの明暗が生まれたのは、そいつの前足がオレの左腕を抑えようとし、こっちの首に狙いを定め大きな牙を剥き出して来た。その時その前足を腹で受け左腕を逃がすと、その広げて向かってくる口を左腕でワザと受ける。その刹那にその腕は噛み千切られたが、オレの腕を咥えたままのそいつを後方の大木へと頭から叩き突けた。


 そこで一瞬の怯みを得ると、オレの腕を咥えて張っているその喉に、そこを突き破る程の強靭な右手の手刀で貫き通した。

オレはそれが絶命したのを確認し終えると、そいつに千切られた腕の回収に入った。しかし、少し時間を取り過ぎたせいで張り付けるような接合は旨くいかず、直に体内へとの捕食行為で取り入れ再生をさせた。それと結構な血と肉の損失の補充の為に、絶命させたその魔物も一緒に糧として自分の体へと取り込む。


   ――――和室造りの一室・女神宅――――


「これって正解を引いたと言えるわよね?」

『女神様?レナード様が選ぶモノでしたら、どれも正解に導けたのではないのでしょうか』


 このレナードが魔物をお食事な行為に入った所で、その直ぐ上からこの成り行きを覗いていた女神達が、少しだけ気を緩め弱音を吐露した。


「そこはむしろハズレだらけだったのよ。選択肢が有ると見せかけて置いて、それを選ぶとピロ~ン!そこでお目覚めの瞬間に逆戻りな感じにしてたの」

『それは詐欺と同じではないのでしょうか?』

「仕方ないでしょうよ!村人や騎士程度であっさり死なれても簡単には戻せないの。あの場所は時を進めていなかったから、こっちの都合が効いたのよ。ただ、いきなりあの魔物との触発には驚いたわ。能無し金なし武器なしが良く勝ったと褒めましょう。おめでとチューは10割増しの預けとしておくわ」


 勝手に押し付けの借りを誰も喜ばないのでは?割増しのきついチューは、吸い取られそうだし。


『・・何はともあれこの遣り直し人生は、幸せなモノにさせてあげられそうですな』

「それはどうかしら?確かに今一度の人生を与える約束はしたけれど、そこで幸せに暮らせるとは一言もいってないわ。私と一緒に暮らしたあの頃より、喜べる幸せなど在りはしないもの」


 何時からそう成った!そこは全く聞いてなかったが、この世界を創造した女神だからそこに不可能な滞りが起こる筈か無いのです。


「あぶない、あぶない。危うくニアミスしちゃう所だったわ」

『結構な大きさの魔力の塊が近くにおりましたが、それは危険なものでしたか』

「そうよ。人間達のミスで人で非ざるモノに変わってしまっただけで無く、捕らえきれずにダンジョンからも逃がしてしまったわ。それが先程の近くで追って来た騎士隊と戦い、その者達はあの場でそれに返り討ちに成ったわ。もっともそこで倒した騎士隊を糧にせず、近くに感じた大きな魔物を捕らえるのに又離れては行ったけど。今のレナードでは、それと戦ったら間違いなく糧とされてしまうわね」


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