第7話 王都への旅路2
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王都への旅2日目、俺たちは馬車に乗って王都を目指していた。ムルド村と違いエスタロンは大きな街なので当然王都までの街道があり、その間の行き来も盛んである。比較的安価で商人などが馬車の荷台の余ったスペースに乗せてくれるので、前世でも馬車に乗ったことがなかった俺は興味本位で利用してみようと思ったのである。
馬車の中とはいえ一泊野宿を挟んで2日の長い道のりである。1日目は街道ということもあり周辺の魔物は定期的に討伐されていて、特に何も起こることなく終了した。
2日目も初めは順調で途中から森の中の街道を進んでいた。
「いや~自分の足で歩かなくていいなんて最高だな」
「そうだけど揺れるのが難点かな」
確かにある程度は舗道されているがアスファルトのように平坦というわけではないので、結構揺れる。俺は前世から酔いには強い方なのでそこまで気にならなかったが、テトラは少し酔ったようだ。
「大丈夫か?」
「うん、今日中には着くし我慢できるかな」
すると馬車が急に止まった。俺は咄嗟にテトラを抱えて壁に激突した。俺もテトラもけがはなさそうだ。
「も~急に何かな、、、」
「突然どうしたんだ、、、」
俺たちは原因を確認すべく馬車を降りて先頭に向かった。
「つ、積み荷は全部差し上げますので命だけは助けてください」
「無理な相談だな、積み荷は全部もらうしお前らも口封じに全員殺す」
二十人ほどの盗賊たちが馬車の進行方向に立ちふさがっていた。この馬車は比較的小さく、護衛も冒険者ギルドからFランクの冒険者を三人しか雇っていないため、ねらい目と判断されたのだろう。
確かにねらい目だ、、、。
護衛の冒険者は震えておりすでに戦意を喪失している。いったい何のための護衛なのだろうか。
ここで止まっていては今日中に王都に着けないため、俺は盗賊の方に歩みを進めた。
「あの~馬車が進めないのでどいてもらえませんか?」
「あ?なんだお前最初に殺してのか?」
恐らくその盗賊たちのかしらであろう男は問答無用で剣を振り下ろしてきた。突然のことだったので反応が遅れたが左手で剣を抜いて受け止めた。魔法を使ってなかったでかなりギリギリだった。
魔法の修行に手一杯だったので筋トレぐらいしかしておらず、剣はあくまで防衛用に持っているだけで剣術などは一切使えない。
正直切られなかっただけでも褒めてほしい。受け止められると思っていなかったのか男は少し動揺した。
その隙に筋力強化を発動する。これで不意打ちでも後れを取ることはないはずだ。ちなみにこれが初めての対人戦である。隣に死の恐怖を感じつつも今まで修行してきた自分の力がどれくらい通用するのかというわくわくも感じている。
「どいてくれないなら容赦しませんよ?」
「一回止めたぐらいで調子に乗んなよ」
戦いの始まりである。男は剣を合わせたままで蹴りを入れてきた。俺はそれを距離を取りつつ躱した。そして即座に魔法陣を構築する。発動時間を意識してレベル2のファイアーランスを選んでいる。
効果範囲は狭いが比較的魔法陣が簡単なので発動時間が短く、レベル1のファイアボルトと違い威力が高いのが特徴である。
「ファイアランス」
手のひらを男に向けて魔法を発動する。魔法名を声に出す必要は一切ないのだが、なんかかっこいいので修行中言いまくっていたら癖になってしまった。
炎の槍が出現し男の方へかなりのスピードで向かっていく。男は魔法が来ると思っていなかったのか、対応が遅れ直撃した。
「ぎゃあああああああ」
炎の槍は男を貫き燃やし尽くすと、男の叫び声と共に消えていった。やはり俺は魔法が使えるので使えない人間よりは確実に強いのではないのだろうか。そう思いつつ、茫然としている盗賊たちに話しかけた。
「まだやるか?」
魔法を見せたのでオークのように逃げてくれるかと思ったのだが、魔法の効果範囲が狭かったので束になってかかればいけると思われたのか盗賊たちが一斉に襲い掛かってきた。
俺の周囲を範囲魔法で焼けば対処できるが、それだと後ろの人たちにも被害が出てしまう。
そこで両手に魔法陣を構築し、
「ダブルストーム(俺が命名)」
両手でファイアストームを発動し後ろ以外の周囲に放った。魔法陣の同時構築はかなり難しいのだが、同じ魔法なら同じ魔法陣を二つ構築すればいいのでなんとかできる。
らせん状の炎は周囲の盗賊たちを吹き飛ばしながら焼いていった。残ったのは焼け焦げた人間の死体20体だけである。人が焼ける臭いは初めて嗅いだが、いいものではないなかった。悲惨な光景と合わせて吐き気がした。修行で魔物とやりあっていなかったら吐いていた自信がある。
俺は振り返って商人に、「じゃあ問題も解決したことですし、出発しますか」と言おうとしたら、
「あなた様は高名な魔法使いのお弟子さんなのですか?」
と言われた。俺みたいな魔法学園に入学すらしてない半端な奴がそんなすごい奴なわけないだろと思ったが、リエールは帝国の元宮廷魔導士であることを思い出した。
俺はまだ全然実力がないのに俺の師匠がすごい魔法使いと見抜くなんてこの商人のおっさんとても洞察力があるのであろう。
「まあ一応」
とだけ返しておいた。一応嘘ではないからな。
「やはりそうでしたか、魔法の発動時間とその威力、前に見た魔導士とは比較になりません。やはり凄まじい才能と師をお持ちなのでしょう」
やっぱり商人だけあってお世辞がうまいなあと思っていると、
「やっぱりユウはすごいかな、魔法学園主席も楽勝かな」
テトラまでこんなお世辞を言ってきた。俺をからかっているのだろう。確かに入学はできると思っているし、それぐらいの努力はしてきたつもりだが、さすがに上位に食い込むのは難しいだろう。
それから少しして王都ヘ向けて出発した。それからは流石に何も起こることはなく、少し予定より遅くなったが王都に到着した。
冷静に考えるとこの時間に宿って開いてなくね?と焦っていると、
「この時間に開いている宿はないだろうから助けてくれたお礼に私の家の空き部屋に泊っていくといい」
と言われたのでご厚意に甘えることにした。そのまま食事をもらい部屋に案内されてから俺とテトラは今後の計画を立てることにした。
「試験はいつかな?」
「四日後の正午から」
「それまでの予定は何かあるのかな?」
「余裕も持ってきただけだから何もない」
個人的には、観光したいところではある。
「じゃあ私と一緒に冒険者ギルドに登録に行くのはどうかな?」
「いいね、じゃあ明日いこうか」
魔法学園や騎士学園では生徒が冒険者登録することを推奨している。理由は属性魔法を使える魔法使いや魔法が使える剣士の数が少ない少ないからである。なのでかなり重宝されるため、小遣い稼ぎでやっている者が多いらしい。また、学費や生活費を稼ぐために冒険者をやっている人もいるそうだ。
だが、そういうものはかなり少ない。調べてみてわかったのだが、魔法を使える才能というのは遺伝性が高いからである。魔法で功績をあげたものが貴族になったりするため、学校に通っているのは大半が貴族なのである。
なので学園の設備やサービスの質が高く、それにより学費も高い。一応俺は卒業できる分の学費は稼いでいるのだが、生活費に関しては何かしらの手段で稼がなければならないだろう。
話し合いの結果明日は観光とギルド登録、明日以降は別行動でテトラは簡単な依頼を、俺は入学試験に向けての復習や調整をすることになった。
と言ってもそんなにすることも無いので王都を周るつもりだが、そう思って今日も眠りについた。
最後まで読んでいただきありがとうございます。