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第5話 王都への旅立ち

開いていただいてありがとうございます。読んでいただけると幸甚です。

 いよいよ始まった魔力のコントロールについての修行だが、これについては元々細かい作業が得意だったこともあってか、驚くほどスムーズに進んだ。簡単な無属性のレベル1の魔法、筋力強化をリエールに普通は二か月かかると言われたが、一週間で使えそうなところまでいった。


「さあ、人生初の魔法を行使してみるさね」

「はい、師匠」


師匠に言われ、まず掌から魔力を放出する。そしてそれを筋力強化の魔法陣へと変形させていく。今回は2秒ほどかかったが、もっと素早く構築しなければ実践では使えないだろう。ちなみに魔力を魔法陣の形に変形させることを魔法陣を構築すると言う。ちょっとかっこいい。


そして魔法が発動し、体中の筋肉に強化がかかる。試しに走ってみると普段の2倍ほどの速度が出ている気がする。成功である。レベル1だけあって魔力消費は少なくその分効果と持続時間も控えめであるが、それでも使っている人といない人では話にならないレベルである。


騎士はそんな魔法をかけて剣を振るうのだから強いはずである。さらに上位の魔法をかけた騎士というのは正直想像ができない。


「成功じゃないか、正直魔法の構築に関しては、なかなかのセンスさね」


初めて師匠に褒められた気がする。そこからの日々はひたすらにいろいろな魔法陣を覚え、実際に構築して使うのを繰り返で、ひたすらにレパートリーを増やしていった。リエールはその都度実際に使うときのコツや注意点を教えてくれた。


ちなみに属性魔法を使う際にしなければならない魔力の変換は本人が持つ性質のようなものであるため、頭でその属性をイメージするだけで自然と変換してくれるので簡単である。


それから半年がたち7歳になったころには火と闇、無属性の中級魔法まで、つまりはレベル1~4までの基本的な魔法は使えるようになっていた。ちょうどそのころ、


「もう私から教えることはないさね。これからは私の研究書を参考にでもして、自由に自分で考えながら進んでいくさね」


急に修行終了宣言を出された。当然納得がいかなかった。


「まだ習うべきことがたくさんあると思います」

「私とユウ坊じゃ使える属性も違うし、得意不得意も違うさね。だから私とあんたの進む道は全く違う。あんたが進む道には前にも後ろにも誰もいないあんた一人さね。だから自分で切り開くんだよ。」


そう言われ、わかっていても黙ってしまう。


「大丈夫、あんたならできるさね。あんたは年齢に合わないぐらい賢いし自分で歩いて行ける足もあるさね。」


そう言われるとやらないわけにはいかないではないか、


「でも、何か聞きたいことがあったら聞きに来ますからその時は答えてくださいね師匠」

「かわいい弟子の頼みならそれぐらいは答えるさね」


これから始まるのは、わからないことだらけで、しかもやってみたいことだらけの終わりの見えない修行だけど、だからこそ今までで一番わくわくしている。学園に入学できるようになる12歳までにどこまでいけるがわからないが、やれるだけやってみよう。その思いを胸に一人での修行を開始した。


 それから約5年が経過した。今日は入学試験を受けるために王都へ旅立つ日、そしてそれに合格したらしばらく帰ってこれなくなってしまう日でもある。ちなみに受験するのはこの国で一番レベルが高いアスリオン魔法学園だ。国の名を冠しているだけあって、生徒も教師も超一流である。


俺は落ちると目も当てられないので、滑り止めに別の魔法学園も受けようと考えていたのだが、


「私の弟子が、一番の学園以外に行くなんて許さないさね」


と一蹴された。落ちたら恨むぞ、、、そんなことを考えていると、


「兄様本当に王都へ行ってしまうのですか?私は心配です」


そう言って、少女が寂しそうな表情を向けてきた。妹のアイラだ。5年が経ち、小さかったアイラももう8歳になった。水色のきれいな髪は腰近くまで伸び、お人形のような見た目をしている。将来とんでもない美人になることは間違いないだろう。しかしなぜか6歳を過ぎたころからにぃにだった呼び方が兄様になってしまった。


理由も教えてもらえず、なんど言ってもアイラはこれがいいと直してくれない。貴族でもないのにお兄様と呼ばれるのは正直恥ずかしいのだが、、、本人は変える気はないようである。


「ああ、ずっと目標にして頑張ってきたんだ。それにお兄ちゃんは強いから心配いらないよ、あと長期休暇にはちゃんと帰ってくるから」

「私が心配してるのは、王都で兄さまに虫がつかないかどうかなんですけど」


よく聞こえなかったが見た目と同じくらい心がきれいな妹んもことだ、きっと庭の花がどうやったらもっとキレに咲くかとか考えていたに違いない。


「王都までの道のりは遠い、魔物にはくれぐれも気をつけろよ」

「何かあったらすぐに帰ってくるのよ」

「兄様、手紙書きますからね」

「うん、じゃあ行ってくるね」


家族との別れの挨拶を済ませ、家から出ると、


「家族との挨拶は済んだかな?」


テトラが待っていた。5年が経ち女児から美少女へと変化を遂げている。髪型ははショートカットから少し髪を伸ばしてボブになっている。俺はボブが世界で一番好きな髪型なので、正直グッとくるものがある。それはさておき、見送りに来てくれたのかと思ったが、それにしては俺のようにリュックを背負っている。


「さあ一緒に王都へ向けて出発かな」

「????」


彼女はいったい何を言っているのだろう。そんな俺の疑問を感じ取ったのか、


「結婚するんだから一緒に行くにきまってるかな、大丈夫この日のために冒険者としてやっていけるように修行してたから、ちなみにちゃんと両親にも言ったかな」


そう言ってポケットから鋼でできた籠手のようなものを見せてきた。かなり使い込まれているように見える。本気のようである。それならば止めるつもりはないし、二人なら心細くない。それよりも問題なのは、、、


「結婚ってなんの話?そんな話したっけ?」


そう言うと、テトラは少し驚いたような顔押した後、元のクールな顔に戻って、


「ふーん、忘れちゃったのかな?でも今度は落とすから忘れてても問題ないかな」


問題ないらしいので二人で村を出ようとすると、出口にリエールが待っていた。そしてただ一言、


「楽しんでおいで」


とだけ言ったので、俺も


「はい、存分に楽しんでまいります」


とだけ返した。そして二人は王都へ向かって足を進めるのであった。

読んでいただいてありがとうございます。

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