鍛錬の後に…
全話からすごい間隔が空いてしまって非常に申し訳ないですが。言い訳させて頂くとすればモチベーションと私受験生でして本当に不定期な投稿になると思われます。
side優輝
「セイ!ハアア!!!」
僕は光進 優輝、ただの高校生だったが唐突に異世界に召喚?された。この世界の人類は魔王に苦しめられているらしく魔王に対抗するために呼ばれたそうだ。送還することも出来ないらしいし、この世界は危険だしで取り敢えず鍛練をすることにしたのだ。最低限の知識や対応力は無いと逃げることも出来ないからな。槍の突きの動作をひたすらやっていたらカイグルクが言った、
「さて、取り敢えずこの辺で1度休憩しようか。まだ初日だしな。」
「わかりました!」
僕は槍を樽の中に入れて一先ず休憩することにした。暇になり周りを見てみると翔人が素振りを行っていた。一切のブレのない体。正眼の構えから繰り出される重い振り下ろし。一つ一つの動作に無駄がなく、一種の芸術と言っても差し支えないであろう程に洗練されていた。それに目を奪われているとカイグルクが翔人に話し掛けた。
「カクトもそろそろ休憩と行かないか?もうそろそろもう1人の勇者殿も来るだろうし。」
「ふむ…それもそうだな。1度休憩するか。」
「みんなー!!お水持ってきたよ!」
と、アリスがこちらに走ってきて人数分のコップと水差しを持ってきた。それを貰い喉を潤してから数十分待っても何故か美之は来なかった。流石におかしいと思い、
「何かあったのかな?僕、ちょっと見てきます!」
「ああ、分かった」
そう言ってから廊下に出て少し歩くと美之が小太りの男と大柄な男2人に囲まれて何か話している。表情から察するにいい事でないことは確かだ。僕は咄嗟に駆け出し
「美之!!!」
と叫びながら間に飛び込んだ。そうすると驚いた顔をした小太りの男が不快そうに
「なんですか?貴方?結界が貼ってあったはずなんですがねぇ?今、私の妻を連れ帰ろうとしてるところなんですから邪魔しないで頂けますかね?」
「何が妻よ!あんたなんかの妻になるわけないじゃない!嫌よ!勝手に決めないでよね!」
どうやらナンパ…と言うかなんと言うか。変なやつに目わつけられてしまったらしい。
「何を言っているのです。貴方は私の妻になるのですよ!このアンブル伯爵のね!光栄でしょう?」
「美之が嫌だと言っている。辞めて頂こうか。」
「なんだと!小僧が!私に逆らうと言うのですか?この伯爵の私に!無礼な!」
「伯爵だから何だ!彼女が嫌だと言っているのが分からないのか!それはただの悪質な脅しだ!爵位が無ければ女を落とせないなど悔しくは無いのか!」
「何とも不快な小僧だ!どうせここは防音で視界を遮る結界の中だ!こんな小僧如き殺しても揉み消せる!やってしまえ!女の方は腕までは良いが殺すなよ!」
そう言ってから直ぐに傍に居た2人の雰囲気が変わり殺気のような物を発してきた。そして剣を鞘から抜き。此方に走ってきた。流石に不味いと思い離れようとするが後ろから美之が「ひっ」と怯む声が聞こえペタンと座り込んでしまった様だ。下手に引くと美之が危ないと思いどうにか守れないかとと考えて居るともう目の前に剣が迫っていた。咄嗟に手を前に出し目を瞑ると手元でガギィンという音が鳴り響いた。目を開けて見ると僕の手に、淡く光る槍があった。
「なんだ…これは?」
そう言って驚いていると後ろの伯爵が喚く。
「何をやっている!小僧1人くらい早く殺してしまえ!いつもあっさり殺してるでは無いか!」
そうして男2人がまた飛び掛ってこようとするが男達との間に翔人が飛び込んで来たそして流れるように剣を避け、相手の後ろに回り込み気絶させてしまった。そして伯爵に向かいこう言い放った。
「貴様、俺の友人に手を出したな?それは俺の敵と言う事だ。俺は敵には容赦をしない主義でな?タダで死ねると思うなよ?」
「ひ、ひぃ!!!な、何を!!私は伯爵だぞ!」
底冷えするような視線と僕の方まで漏れてくる殺気に怯えているのだろう。翔人は目にも止まらぬ速さで奴の目の前に向かったと思ったら、次は奴の左腕が飛んでいた。矢継ぎ早に右腕も切り落とそうとしていたがレイブンが間に入り剣を受け止め、こう言った。
「その辺にしといてくれないかな?こいつをここで殺されると後々面倒なんだ。」
「なんだ?邪魔をする気か?」
「いや、こいつの派閥の奴らは何かしら悪いことをしていると言うのは掴めていたのだが捜査に踏み切るには実権が足りなくて難航していたんだ。そしてこいつは勇者に手を出し騎士団長と聖女に見られている。もう言い逃れは出来ない。死刑は確実で石打ちの後、縛り首だろう。それにより我が国の悪徳貴族…こいつらみたいな貴族は殆ど排除できるだろう。ここは1度此方に引き渡してはくれないか?死亡時の立ち会いは出来るようにする。どうだろうか?」
「ふむ、それは構わない。が、もし優輝が死んだり怪我を負ってしまったらどうするつもりだったんだ?」
「危なそうな雰囲気だったら止めるつもりだった。あんなに直ぐに殺そうとするとは思っていなかったが。最悪の場合だが死んで直ぐなら聖女様なら治せる。彼には悪いがそういうセーフティがあった為今後の為に言質くらいは取っておきたかったんだ。」
「話は分かった。筋は通っている。今回も見逃そう。だが、3回目は無いぞ。誘拐犯共。」
「ああ、分かった今回の件は誠にすまなかった。私の方でもこの様な事態が無いように貴族の馬鹿どもを潰した上で警備の者を見直そう。」
「痛い痛い痛い!何をしておる!貴様ら!私を早く治さんか!私はアンブル伯爵だぞ!偉いのだぞ!後で覚えてれおよ!伯爵の私をこんな目に合わせよって!」
「ふむ…翔人殿、もう一本くらい行っておくか?鉱山で働く訳でもないし、構わないぞ?」
「そうしておくか」
言うな否や翔人は右腕も切り落とした。凄い光景ではあったが美之に手を出そうとしたやつだ自業自得であろう。
「イギャアア!!!痛い痛い痛い!!!」
するとアリスが歩き出し伯爵の肩の辺りに手をかざし魔法のようなものを掛けた。何をしてるのかと思っているとこう言い放った。
「貴方に死なれては困るのです!小煩い貴族共をお掃除できなくなるのです!」
何かと思ったがただ止血しただけだった様だ。騒ぎ立てる奴にレイブンが猿轡を噛ませ黙らせて何処かに連れていく。ふと、後ろを見てみると美之がショックで気絶していた。無理もない。目の前で腕が切り落とされて血が吹き出していたのだ。担架を持ってきてカイグルクと僕で部屋まで運ぶ事にした。翔人は返り血は浴びなかったが伯爵が暴れ回った事で血が服に付いてしまったみたいで、風呂に案内されるらしい。取り敢えずこの件は収まったようだ。今日はもう疲れたから寝よう。
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side ???
時刻は夜、彼の寝床に1人の男が焦った様子で向かってきた。
「失礼、至急伝えたいことがありまして。入っても宜しいでしょうか?」
「よかろう。入れ」
「王よ、人間どもの国のひとつからかなり大規模な召喚魔法が確認されました。おそらく、勇者が呼ばれたのだと思われます。如何なさいましょうか?」
「ふむ、あの国か…ならば四天王のスキュレーに監視をさせるのだ。かの国は隠密を見破るのは上手いが四天王たるスキュレーならば大丈夫であろう。もし勇者を確認出来たなら迅速に殺すように!これは大事な仕事だ。我の魔法具とパスを繋いだ通信器具を渡しておく。定期的に連絡を行うように言っておけ」
「ハッ!直ちにスキュレーを任務に向かわせます!」
(さて…今代の勇者はどれ程の者か…居たとしても流石に来たばかりではスキュレーなら始末できるだろうが…どうしたものかな…)
どうしても嫌な考えが頭から離れず長い夜が流れて行った。
この国の貴族は大抵自尊心だけは高いため奴隷等にしても自害してしまう事が多い為多くの場合は打首か国外追放に落ち着きます。