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異界の風  作者: 獣王丸
5/23

出撃前夜

m(_ _)m

読んでください。

ありえるか!!!!


傭兵の契約を済ました直後に、目の前で依頼主の王冠を盗まれる。


こんな話が噂になったら、俺も仲間二人も失業だ。

すぐに追撃に入ったが、心の中では分かっていた。


無理だ。

追いつけない。


俺が謁見の間を出ようとした刹那、ハジメが話しかけてきた。

「古龍さん。これを使ってください。」と、腕輪を持ったハジメ。


いや…

この際、藁にもすがりたいが…

ヨボヨボになってチにたくない…


俺の心を読んだのか、ハジメは続けた。

「ご心配には及びません。このアイテムには、リスクは(ホトンド)ありません。さあ!!早く!!逃られてしまう!!!」


「すまん!借りる!!!」


人生には選択の余地が無いことがたまにある。

そして大抵の場合はろくでもない結果に終わる。

だからそう言う時は、『それは自分で考えた選択だ。』と思うようにしている。

そして後でこう言うのだ。

『あの時は良い考えだと思ったんだ。』


俺はハジメから受け取った腕輪を腕に巻き、奴を追いかけた。

とてつもない加速が始まった。

この感覚は?

地球にいた頃乗っていたバイクに近い。


こっちに来て、馬やらドラゴネット(小型の竜)やら乗ったことがあるが、これだけの発進加速は無い。


俺は、すぐに奴を見つけた。

あざやか過ぎる赤毛。

奴は窓から城の庭園へ飛び出す。

俺もあとを追い外に出た。

奴との距離を読む。

もらった!!!

差し馬のジョッキーが勝利を確信した瞬間って、こんな感じかも知れない。




うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!


奴は突然振り向くと、いきなり王冠を投げてききゃがった。

それもムチャクチャ厳しいパスだった。

俺は急制動をかける。

必死にジャンプ!!

体を伸ばし…

指を伸ばし…


中指の先が王冠を触った。

なんとか指先が…


インターセプト!!!


って、俺、空中じゃないか!!

知ってると思うが、宝石細工なんて華奢なもんだ。

ヘビーデューティには出来ていない。

俺は必死に王冠を腹で抱く。


着地点は???


助かった!!

平地だ!!!


俺は受け身を取り王冠の無事を確認し、頭を上げ奴を探すが。


姿は無い。

いや、いたと言う気配さえ無い。

最初からこの庭園には俺しかいなかったような。


まるで狐に抓まれたような気がする。


奴は何のためにこんな真似をしたのか?


王冠を投げるときも、苦労して手にした獲物を手放すとか言う感じはまるで無かった。

むしろ俺をからかって遊んでいるような。


とにかく。


戻ろう。


謁見の間に戻り王冠を王に返した俺は、いちやく英雄扱いだ。

小一時間のうちに、サイクロプスを仕留め、謎の怪盗から王冠を取り戻したのだ。

実際は、とても英雄って気分じゃない、

奴にはいいようにされた。

だがこう言う場合は英雄として振舞うのも礼儀だろう。


しかしその前に、ハジメと話をつけねばならない。

相場の三倍近くは…

高過ぎる。(泣


「腕輪を貸してくれる時、」俺は腕輪を返しながら尋ねた。「リスクの話をしたよな?」


「え、そうでしたっけ?」とハジメ。


「『リスクは(ホトンド)ありません』。確かにそう言った。」


「ああ。そのことでしたか。」と、惚ける。


「心配するな。」と俺。「こうして生きて帰ってこれた。怒らんよ。」


「この腕輪は僕のアイテムの中ではたいした物ではありません。」とハジメ。「人間の潜在能力を引き出すだけです。今夜は筋肉痛で眠れないかも知れませんが。」

「運動能力の安全装置を外す訳ですから、常用はまずいですが、緊急事態には役に立ちます。」


なんだ、まともなアイテムも持っているじゃないか。

それじゃあ本題に入るか。


「ところで武器の値段なんだが。」俺は切り出した。


「あの値段は、仕入れ代に手数料を加えただけです。特別サービスのお友達価格ってやつですから。」すぐに切り返された。「あれ以上は、まけようがありません。」


「しかし、あかしあの値段は…」俺は頑張った!!


「良い物は其れなりの値段です。」ハジメの表情は、『何を言ってるんです?』って感じ。


「第一、今、刀を振ってみて、何も気がつかなかったのですか?」とハジメ。丁寧な言い方だが、ここで刀を誉めねば、俺がたいした武芸者じゃないみたいじゃないか。


「確かに物はいい…しかし…」ま、負けるものか!!!


「そうですよね(ニコッ)。」と、にこやかなハジメの笑顔。


いや実際いい刀なんだって。

俺はこっちへ来て以来、ずっと日本刀を使っている。

はっきり言って最高の剣だ。

しかし、少しだけ不満があった。

こっちで使うには、僅かに短い。

刃の肉厚ももう少し欲しい。

なんせ戦う相手の殆どが怪物だし。

新しい刀は、ちょうど俺が思っていただけ、厚くて長いんだなこれが。

手にも馴染むし、バランスだって文句無しだ。


いかん、いかん。

これが奴の手だ。


「しかし刀一振りに三本分の値段は…」たとえ少しでも値切る…多分…


「まあ、どうしてもご納得いただけないのでしたら、相場の刀と取り替えますが。」ここでハジメ、絶妙のタイミングでナニワとマリオに、チラッと視線を。


二人とも…

クリスマスプレゼントをしっかりと握り締めた子供みたいな目で、俺を見てるじゃないか!



「わはははは…」突然に王の笑い声が。

「算盤が得意な武芸者に、ろくな者はおらん。のう、カークよ。」と王。


「はい。古龍殿は武骨を絵に描いたような武芸者。」と騎士団長。「算盤でハジメ殿に向かっても、討ち死にでしょう。」


「うむ。」王は続けた。「武骨な武芸者を雇えたことへの感謝として、そして先ほどの見事な働きの褒美として、その武器の金、ワシが払おう。」


どうやら一件落着した。

アヤちゃんは『良かったね。』って感じで俺を見ている。

こんはずじゃ…


「あ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」ハジメが叫んだ。


なんだ????


「古龍さん。大変です。」真剣な様子「あの黄金のプレートが…無い…」

「今の奴だ。…

「しかし僕からスリ取ったのか???…

「有り得ない…

「でも実際に無いし…


俺はハジメの茫然唖然とした姿を見れて、少し嬉しかった。

取られたプレートは拾った物だし。

第一、黄金かどうかも分かっていない。

ハジメのこの姿を見れた件に関してだけは、赤毛の男に感謝の念を感じていた。

しっかしハジメの奴、真剣に怒ってやんの(プッ


「絶対に許せない…」ハジメの言葉が丁寧で静かなのがヤバい感じだ。喧嘩腰モードの時は怒りをコントロールしている感じなのだが。


ハジメの怒りをよそに、王と騎士団長は話を進める。

どうやら俺たちがハンマを目指しているとの情報を得て、俺たちの到着を待っていたらしい。

流石はハンマ王国。なかなか優れた情報部をお持ちのようで。

さっきの酒場で見た連中が、今回の征伐隊の平均レベルなら、俺たちの到着を待っていたのも分かる。

サムライウォーリアー古龍と言えば、それなりに名前が通っているのだ。


すでに魔道士二人は先行させている。

出撃は明日の午前7時に決まった。


何やら騎士団長とアヤちゃんが揉めてる。


カーク騎士団長。

「アヤちゃん、ダメだよ。明日だけはダメだ。」

「正直に言おう。今回の討伐隊の予想死傷率は20%だ。女の子の行くところじゃない。」


「大丈夫ですよ。騎士団長様。酒場のバイトが優先ですから。」とアヤちゃん。


まあ、その後も多少の打ち合わせがあったが、俺たちは城を後にした。

城門を出たところで、ハジメが話しかけて来た。


「古龍さん。申し訳ありませんが、僕は明日朝7時の出発には間に合いません。」


「また、どうしてだ?」と俺。「ハジメの分のギャラも契約には入ってるぞ。」


「王や騎士団長が思っているほど、楽な戦いにはならないと思います。」


「予想死傷率20%の読みが甘過ぎると言うのか?」


「はい。だから少し仕込みをする必要があります。傭兵のギャラは生きて帰って満額になります。生きて帰れなかった傭兵の後払い分は支払われない。僕たち4人分のギャラを確実に受け取るには、あと少々の仕込みが要ります。」


「分かった。王には俺から言っておく。」と俺。


「今日はこれで失礼いたします。」ハジメはあっさりと別方向に歩いて行った。


俺たちは、酒場の方へと歩いて行く。

俺、ナニワ、マリオ、アヤちゃん。


「ねえ。古龍さん。」とアヤちゃん。「まだ宿は決まってないんでしょう?」


「ああ。まだだ。」


「じゃあ、私が紹介してあげる。」笑顔が可愛い。

「今ね、傭兵さんや商人さんが多いから、紹介もないとろくな宿に泊まれないわよ。」

なんか嬉しそうだ(笑


アヤちゃんの紹介してくれた宿で、4人で食事をした。

アヤちゃんは家に帰り、俺たちは部屋へ。

風呂に入ったり、明日の支度をしたり。

ナニワとマリオは、また新しい武器を撫で回している。

武器についている宝玉の種類や、特別な使い方に関しては、ハジメは二人に教えてくれなかった。

そのレベルに達すれば、自然に分かると言っていた。


俺の刀に関しては宝玉とかは付いていなかったが、何か緊急の時に役立つ仕掛けがあると言っていた。


あの野郎、俺にもはっきり教えなかった。

値切ったことうらまれたかなぁ。


ナニワが話しかけてきた。

「ねえ古龍さん。あの赤毛の男のことなんですけど…」


「どうかしたか?」


ナニワは話し始めた。

「どう考えてもおかしいです。」

「城の財宝が目当てなら、夜にでもこっそり忍び込めばいい。」

「何もあんな時に。」

「いや、白昼に襲うとしても、古龍さんがいない時に襲えば、何の問題もないはず。」


マリオも話しはじめた。

「じゃあ、何が狙いか?」

「黄金(かも知れない)プレート?」

「でも酒場で拾ったばっかりでしょ?」

「酒場にあんな目立つ赤毛、居なかったと思う。」


お!

いいぞ。二人とも。


俺は話した。

「じゃ、目的は何だと思う?」


ナニワ。

「ハジメか、古龍さん。」


マリオ

「僕もそう思う。」


俺。

「かなり良い線いっているな。」

「ま、今のところ手掛かりが少な過ぎる。」

「今日は寝るぞ。明日は早い。」


・・・・・・・・・・・・・・・・


俺は目が覚めた。

気配を感じたからだ。


ナニワとマリオも同時に目を覚ましていた。

いや、この二人は気配を感じて起きてきた訳じゃない。

二人には警戒用の結界を張らせていたのだ。

それでも以前は目を覚さなかったが、最近はやるようになった。


ランプの灯りは芯を絞ってあるが、目は充分に慣れている。

俺は手話でサインを送る。


『二人とも窓ぎわへ。』

『表に伏兵がいないかチェック。』

『いなければ退路を確保。』


相手の出方を待つ。

どう来るか?


気配はドアの前だ。


そして…


ノックの音が…

m(_ _)m

読んでくださり、ありがとうございます。

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