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異界の風  作者: 獣王丸
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赤毛の盗賊

m(_ _)m

読んでください。

「ハンマ王国騎士団長、カーク・ラテマンです。城の騎士が挨拶をしてきた。


「古龍です。」にこやかに応えた。「こっちは相棒のナニワとマリオ、それにアヤちゃん。向こうで別口の商談中がハジメ。」


「やあ、アヤちゃん。」カーク騎士団長が挨拶する。「君も古龍さんのパーティに参加するのかい?」


アヤちゃん、顔広い!!

ま、小さな城下町だし。

それに、ちょっと印象的な娘だ。

女の強さやしたたかと同時に、少女の(はかな)さを併せ持つ。

ある年齢以上の男性には、たまりません!!!


「騎士団長様、こんにちは。」明るく応えるアヤちゃん。「う〜ん。酒場のバイトのシフト次第ね。この人たち人が良さそうだから、ほっといたらハジメさんにいいようにされそうなんで。」


ええええ!!!


「確かに(笑)。」と騎士団長。


俺は人を見るとき、先ず笑顔で判断する。

腹に一物ある奴は、100%の笑顔は造れない。

そう言った意味ではカーク騎士団長の笑顔は、俺を充分に気に入らせた。

きっと、実直な男なのだろう。


「古龍殿。」騎士団長は続ける。「先ずは城の危機を救ってくれた事、お礼を申す。ところで古龍殿たちも、この度の魔獣討伐の傭兵募集に応募の方とお見受けいたしましたが?」


「はい。」俺は応えた。「何やらバタバタとした流れになってしまいましたが、是非、貴国のこの度の討伐隊の末席に加えていただけたらと馳せ参じました。」


「それは心強い。」

騎士団長が話を続けようとした時、一名の騎士が駆け寄り、何やら耳打ちをした。


「古龍殿。」ちょっと姿勢を正して騎士団長は話しかけてきた。「この度の古龍殿のご活躍、既に国王陛下のお耳に入ったご様子。陛下自ら、お礼を申したいとのこと。謁見(えっけん)の間まで、ご同行願いたい。」


俺とナニワとマリオ、それにアヤちゃんは、カーク騎士団長の案内で城の中へと進んだ。

なにやら交渉中のハジメは、その場に残った。

ちらとハジメの様子を見ると、和やかな商談と言うより、激しく言い争っている様に見える。

ま、ほっとこう。


謁見の間に通される時、武器は取り上げられなかった。

田舎の小王国だし、治安は良いのだろう。

それにハンマの王家は、代々、名君と誉れが高い。


ハンマは地理的に、通商路の重要ポイントにある小王国である。

王家は代々、商業、流通、金融に力を入れている。

小国とはいえ、なかなかに豊かである。

周りの大国にしてみれば、ハンマを占領するメリットも大きいが、そうなれば他の国が黙っていない。

戦争になれば、流通陸路の拠点というハンマの価値がなくなる。

そんな微妙なパワーバランスの上で、なかなかの外交力を発揮しているのがハンマ王家なのだ。

国民からも敬愛されている。


俺たちは謁見の間に入った。

ごてごてと飾り立ててはいない。むしろ質実剛健な印象を受ける。

最初は大臣が話を進めようとしたが、国王ハンマ14世が手で軽く制した。

いつもの事なのか、大臣も王に話を譲る。


「この度の活躍、見事であった。」飾り気の無い王様だ。「国民になりかわり礼を言う。」

「ゆるりと話をする前に、」王の合図で大臣が契約書を持ってきた。阿吽の呼吸だ。名コンビなのだろう。


契約書の内容は、文句の付けようが無かった。。実務屋の大臣の作と見た。


さて、別料金(城で倒したサイクロプスと、酒場で倒した7人の傭兵)の話を切り出そうとすると間髪を入れず若い文官が、金貨の入った袋と明細書を持って来た。

明細書にはサイクロプスは勿論のこと、7人の傭兵の分も記載されている。


「手狭な国だが、良い面もある。」にこにこしながら国王。「何かあれば、直ぐにワシの耳に入る。」

「その金額ならハジメも文句は言うまい。だいたい、あやつ、戦争準備の物資の買い入れでも、『ちょっと嚙み』で旨い汁を吸っておるしな。」


「恐れ入ります。」俺は応えた。

確かに名君と言われるだけのことはある。


国王は続ける。

「さて、これからが本題なのだが、この度の討伐隊、城から30キロほど南にある、通称『サイクロプスの洞窟』攻撃してもらう。」

「戦力は傭兵のみ。約80名。指揮はそこのにおるカーク騎士団長がとる。」

「あとは城の魔道士が2名。これは既に洞窟の近くでキャンプを張っておる。」

「これだけだ。」

「つまり正規軍の出撃は無い。」


少し間を置き、王は続けた。

「神魔大戦は約5000年前に終結した。」

「実を申せば、それまで、この土地の人と魔族は上手くやっていた。」

「大戦は、神と魔の陣取り合戦。」

「こんな辺境の惑星(ほし)の、辺境の土地。」

「陣取りの価値も無いわ!」


「しかし大戦の終結が、事情を一変させた。」

「この国にも、小さいながら光帝神を祀る神殿が出来た。」

「人界は神を信仰する世界となり、件の洞窟も魔王軍の出城となった。」

「人と魔族の行き来は無くなり、小競り合いが起こるようになった。」

「生まれなくてもよい、恨みも生まれた。」

そこまで言うと、王はアヤちゃんを見た。


「王様。わたしのことはいいですから、お話を続けてください。」とアヤちゃん。


「すまなかった。」王はアヤちゃんに頭を下げた。これは中世では考えられん。


王は続ける。

「今でもそれほど大きな衝突が起こっている訳では無い。」

「ただ、この国は通商の国。キャラバンが襲われるという事は、この国の生命線に関わることなのじゃ。」

「何十年かごとに、そう言う事件が起こる。」

「そして、我が国は討伐隊を出す。」

「魔族は大人しくなる。」

「その繰り返しなのじゃ。」


「古龍殿。」王は俺に話しかける。「征伐隊に正規軍を出さない訳。ご理解いただけるか?」


「魔族の恨みを、この土地に住む者に向けさせないためですね?」俺は答えた。


「そう言うことじゃ。」王は肯く。「傭兵を差し向けるなら、恨まれるのはワシ一人で済む。」


・・・・・・


沈黙が場を支配する。


若い騎士が入って来て、王に耳打ちする。

「かまわん。通せ。」と王。


「諸君らのパーティの主計局長が来たようじゃ。」王は場の空気を変えようとしてか、明るく言った。

直ぐにハジメが入って来た。

手にはなにやら持っている。

俺たちの武器だ。


「陛下におかれましては、ご機嫌うるわしゅう…」ハジメだ。


「堅苦しい挨拶は良い!この悪徳商人めが!!」茶目っ気たっぷりに応える王。「その武器はなんじゃ?」


「はい。この者たちに武器を頼まれておりまして。」ハジメは俺たち3人に武器を渡すと、請求書を俺に。


俺はちょっとムッとした。

「相場の2倍!いや3倍に近いぞ!!」俺は思わず国王の前である事を忘れて怒鳴った。


横でマリオが七節棍をヒョイとバラし、またヒョイと振ると一本の棍になった。

あれ?こいつ、こんなに上手かったっけ?

いや、そんな場合じゃない。


「こら!国王陛下の前で武器を振るうな!!!」まったく、冷や汗もんだ!!


「あ!!!」恐縮するマリオ。「陛下!!申し訳ありません!!」


「良い良い。」笑顔の国王。「今は戦時下。余の雇った兵の武器、見せてもらおうか。」


「恐れ入ります。」俺は王に頭を下げる。

そしてハジメに文句を…


「あ〜〜!!」今度はナニワだ。いったい、どうした。

「これ、宝玉が仕込んである。」


宝玉だって〜〜!!!

俺は呻いた。


宝玉と言うのは、こっちの世界独特のアイテムで、分かりやすく言うと魔力の結晶のような物だ。

色も形も様々だが、使い手の腕次第で、とてつもない力を発揮する。


「あ〜〜〜!!!」続いてマリオ。

「僕のもだ!!目立たないように細工がしてあるけど、これ宝玉だ!!!」


二人の興奮に、部屋にいた全員が気を取られた瞬間。

一人の男が王の後ろより現れた。

そんな所に誰もいなかった。

まるで気負いの感じられない、ごく自然な歩調で歩く。

その男の手には王冠があった。


この中で一番早く反応できたのは俺だった。

小刀と請求書をハジメの手の中に戻すと、大刀を片手に一気に間合いを詰め抜刀した。

剣は空を切った。

その男は俺の頭上を軽がると飛び越えた。

一瞬、頭上からの攻撃に備え低く構えた俺を嘲笑うかのように飛び越えると、ハジメ、ナニワ、マリオ、アヤちゃん、カーク騎士団長の間を駆け抜けて部屋を出て行く。

誰も反応出来ない。


その様は、サッカーの一流選手というより、沖縄の『てぃ』の達人の動きを、俺に想像させた。


ち、畜生!!!

追劇態勢に入った俺の網膜の中で、その男の赤毛が残像となり、妙な連想を呼び起こした。


『逃げ水』


こいつは…

手強い!!!!!

m(_ _)m

読んでくださり、ありがとうございます。

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