レッド アイ
m(_ _)m
サライは言う。
「先ずは何者だ?何故こんなところに居る?」
「説明してもらおうか?」
ケイは思った。
『怖い・・・』
『いや、きっとツンデレだ。』
『・・・・ツンデレ・・・だよねぇ・・・(泣・・』
『しかなねぇ・・・』
『誰かと問われれば・・・・』
『やっぱ、これっしょ!!』
ケイの手が空中から何かを掴み取る。
手品だが。
二枚の名刺だ。
ケイは鮮やかな手つきで名刺を投げる。
二枚の名刺は、まるでマジシャンの投げるカードの様に、サライと狂鬼の手の中へ。
サライは思った。
『こいつ・・・』
『絶対、怪しい!!』
狂鬼は名刺を受け取ると、
「ケイさん・・・
「ですか?
「はじめまして・・・・
「私はこう言う者です・・・
そう言うとケイに自分の名刺を投げる。
マニアックスマスター
狂鬼
と書いてある。
「狂鬼さん。よろしく〜。」
明るく応えるケイ。
ケイはサライに向かって。
「お美しいお嬢さん。」
「僕が何者かって?」
「女性に優しく。金には厳しく。」
「◎◎プロダクション所属の、諸角ケイと申します。」
サライがますますケイに対する不信感をつのらせた時、ケイの後ろに赤毛の男が現れた。
赤毛の男は言った。
「この男、ケイさんの事でしたら、ご安心ください。」
「先ほど、この洞窟に転送されたばかりの、異世界からのゲストです。」
ケイはレッドに。
「あ、レッドさん。」
「どこに行ってたんですか?」
「こっちは大変だったんですから。」
狂鬼はレッドに突っ込みを入れる。
「先ほどは、見事にスルーをされてしまいましたが・・・
「今回も、私は無視ですかな(笑)・・
「いや、こうなっては、無視も意味がないでしょう。」
「うちの家訓でね。」
「もし二人のマスターに出会っても無視しろ。」
「一人は通称『マスター』と呼ばれる男。」
「そして、もう一人が、マニアックスマスター狂鬼。」
「はて?・・・・
「どこかでお会いしましたかな?・・・・
「バスチェン一家をお忘れですか?」
「あなたと、もう一人のマスターに関わったばかりに、危うく全滅するところでした。」
「ああ・・・
「あの時の・・・
「赤毛の少年でしたか・・・
「フフフ・・・・
「立派になられて・・・
レッドはサライに。
「先ほどは失礼いたしました。」
サライも応える。
「あの時は名乗ってなかったな。」
「お主のことだから、私の名前くらいは盗聴してたと思うが、改めて名乗ろう。」
「サライだ。」
「あの精密射撃には救われた。」
「騎士殿と魔道士殿はご無事ですか?」
「ああ。少し戻った所で陣を張っている。」
「それでは合流しましょう。」
「打ち合わせが必要な局面です。」
一同が戻りかけた時、ケイのスマホが鳴った。
「うわっ。びびった。」とケイ。
ケイがスマホを確認すると、メールが届いていた。
メールの着信音だったらしい。
メール
送信者:明日への希望
タイトル:はじめまして
添付ファイル:精霊の守護呪文
本文:添付ファイルを開いてください。
「その変な道具はなんだ?」とサライ。
「ちょっ・・ちょっと待って・・・」
ケイは指先で器用に操作してファイルを開く。
優しさを感じさせる水色の光が顕れ・・・・
サライとケイの体力を回復させ、先ほどの戦闘で負った、火傷や切り傷を瞬時に治す。
『やはり魔道士か・・・』と思うサライ。
さらにメールの着信音が・・・
メール
送信者:死への扉
タイトル:青の鎧
添付ファイル:青の鎧
本文:
ケイ専用アイテムです。
戦闘の前に着用してください。
両手の手甲には、カタールが仕込まれています。
刃渡りは40センチ。
刃は一枚刃のタイプで、諸刃です。
各種宝玉が装備されています。
ケイは思った。
『おおおおぉぉぉぉぉ・・・・』
『TRPGの達人の俺に、ピッタリの展開!!』
『カタールが一枚刃ってとこが通だね。』
『三枚刃は使いづらい。』
『髭剃りじゃあるまいし・・・』
『この鎧は、秘密にしとこっと。』
『やっぱ、ヒーローは突然、格好良く。ああ、俺ってステキだぁ。』
連続して、もう一通のメールが。
送信者:明日への希望
タイトル:MP回復用
添付ファイル:聖なる福音
本文:
パーティにMPを消耗している仲間がいたら、添付ファイルを開いてください。MPを回復します。
「今度は何だ?」とサライ。
「いや・・・
「別に説明するほどの事じゃ・・・」
サライの不信感はレベルが上がった。
4人がカーク達が待つ辺りへ着くと、3匹のトロルの死骸が。
おそらく洞窟の外から入って来たのか?
しかし、その死に様は異様だった。
一匹は首を斬り落とされ、一匹は心臓のあたりに大穴が開き、もう一匹は、体が内部から爆発したかのよう。
レッドとサライは少し驚いたが、特に突っ込みは入れなかった。
魔法か、魔法を充填した武器でも使ったのだろうと思っただけだった。
実際には、カークの『魔槍ゲイボルグ』の実験台にされたのだが。
合流した一行は、挨拶、自己紹介を済ませると、カーク、レッド、サライ、ヴィーシャは、さっそく情報の分析と作戦会議を始める。
そしてケイは・・・
髪をササっと整え、ひとり、ミユ魔道士(19才)に歩み寄った。
あからさまに不信感むき出しの彼女の前にひざまづく。
「俺は貴女たちの力になりたい……。」営業モード全開!男は眼で語るんだよっ。
ちょっと上目使い、これポイントね!
ついでにさりげなく手を取ったりしてー。
ピッ!
メールに添付された『聖なる福音』のファイルを開くと、魔道士達の周りを淡い光が包んだ。
「これで少しは信用してくれた?」
ちょっと困った顔を作って、彼女の反応を見てみた。
『ん〜この駆け引きがたまらん!』
通りすがりの妖精ハリセン。
『……うわぁ……みんな引いてる……気付けよ……』
ミユがスマフォを不思議そうに見ている。
「何?あ〜これ?スマートフォンってんだよ。」
ってもピンとこないよな〜。ん〜と。
「まあ、俺の魔法のおもちゃってとこかな〜。音楽も楽しめちゃう優れ物!」
チャカチャカ手の中で弄びながら見せる。
『てか、このスマホまじ不思議だなぁ。』
『スマホは芸能人の命だけど、マジ命綱だなこりゃ。』
「まぁ、あとでゆっくり見てもい〜よ。」
ケイのお守りはミユに任せて、4人は真面目に作戦会議。
レッド。
「狂鬼の予言は、私の知る限り当たります。」
「しかも、たちが悪い。」
「予言が当たることを前提に、回避しようとすると深みに嵌る。」
カーク。
「知ってる(笑)。」
「さっき、それで80名ほど死んだ。」
ヴィーシャ。
「行方不明の4人、古龍、アヤ、ナニワ、マリオの安否を確認しましょう。」
「ここの魔物のバックに王虎がいると分かった以上、三匹目のサイクロプスにこだわる必要もないでしょうし。」
サライ。
「4人の安否の確認には、次の三匹目のサイクロプスは、避けて通れまい。」
狂鬼が口を挟む。
「さっきのゴブリンが、私の言う二匹目じゃないかも知れませんよ・・・・
レッド。
「こいつの発言はスルーで。」
「かまうと酷い目に合う。」
結論として、行方不明の4人の安否の確認が取れるまで、一行は前進することになった。
しばらく進むと、道が二つに分かれていた。
カークが指示する。
「斥候を出す。」
「レッド。右を頼む。」
「ケイ。左だ。」
「それぞれ500メートルまで前進し、いったん戻って来い。」
サライ。
「ケイ?」
「私が行こうか?」
カーク。
「いや。狂鬼はサライを殺したくないようだ。」
「こっちに危険が迫れば、サライを助けようと情報を落とすだろう。」
「サライは残ってくれ。」
ケイは思った。
『ヒーローの見せ場、来た!』
『さっきゲットした青の鎧とかあるしな。』
『なんか俺に冷たいサライさんのハートを、ここで押さえておくかぁ!』
「ん・・・そしたら俺、左側、見てこよっかな・・・もし何か居たら、見つからないように逃げてくるし。」
「まあ、さっさと戻って来るから、休憩がてら待っててくれよ。」
『妙に左が気になんだよなぁ。』
『なんか違和感っていうか。』
『確認しないではいられない、妙な気配っていうか。』
「なんかあったら、速攻で戻って来るからさ。」
そう言うと、ケイは灯りのためのジッポーを片手に、左へ進んで行った。
『ちょっくら偵察といきますか〜。』
「泣かないで〜そこはほぉら〜フフフン〜たいせつぅなもの♫」
ケイは、薄暗い洞窟の奥を、鼻歌まじりに進んで行く。
『ちょっとビビってるもんだから、やたら明るい曲ばかり思いだすなぁ。』
『こんな中を歩いていると、前に聞いた怖い話を思い出してしまう・・・』
あれは真夜中の2時を過ぎたころでした・・・
私は夜道を足早に進んでいました・・・
ふ……と、道路の脇に視線をやると・・・
ポーン ポーン
ボールの跳ねる音が・・・・
「え?子供?こんな時間に?」
暗闇のせいか、通りの向こうの子供の顔は見えません・・・
私は目の前のボールを拾い、子供に投げ返そうとしました・・・・その時です。
「ありがとう。お姉さん。」
なんと声は私の手の中からしました。
ボールと思っていたのは・・・
子供の頭部だったのです!!!
『やべぇマジ怖えぇ。』
『なんだってこんな時に思い出すんだよっ。』
『俺のおばか!』
カツカツカツ・・・響くは俺の足音のみ・・・・
「うん!異常な〜し!もどろっと!」妙に明るいケイの声。
ケイはくるっと回れ右をして引き返そうとした。
その時!!
ポーン ポーン……ピィッ ピィッー
「何か・・・き 聞こえる・・・」
ポーン ぷにょ ポーンぷにゅ
(子供の頭部だったのです。)
そのセリフが、ケイの頭の中をリフレインする。
「拾わない・・・俺は拾わない・・・」
ケイはブツブツ言いながら、早足で進みだした!
音はどんどん近づいてくる!
「わわわっ頭だ!ガキの生首だぁぁ!」
思わずダッシュで逃げ出した!
『嘘じゃなかった!山田先輩から聞いた怪談はマジだったんだぁぁあ!!」
ダダダダッッ!!
ぷにゅポンぷにょっ
例の音はどんどん追い着いてくる!
ぷにゅにゅ ポーーン ポコン!!
ケイの背中に何かが当たった!!柔らかくて弾力のある何かが!!
「うぎゃぁぁあ!!」
「ぴぎゃ〜〜!?」
ケイの絶叫と何かの声が、ハモって洞窟内に轟いた。
「はわわっ あたっ あたま・・・嫌だ絶対に 見ない・・・っ」
ケイは盛大にコケながらも、なんとか起き上がろうと必死だった・・。
「こ、腰が抜けた〜〜……」
「ピィーッ びっくり オドロイタ!」
ポコポコとケイの周りを何かが飛び跳ねている。
「ゴクリッ……」ケイは怖い物見たさで、おそるおそるジッポーに火を付けた。
ーシュボッー
「ピピッ」薄明かりに照らされたそいつは、だいたい手のひらくらいの大きさで、なんと言うか……青いゼリーみたいな丸い姿をしていた。
丸い身体に大きな目。パクパクしているのは口だろうか?
「ゼリーボールなの〜♫」
そいつは跳び回りながらなんと喋った。
「はぁ……そうなの〜」
ケイは、なんとも愛嬌のあるそいつに、つい釣られて間抜けな受け応えをした。
ゼリーボール。
魔物は魔物だが、弱い。
攻撃性も少ない。
小物。
見た目を説明すると、
『ぷ◯◯よ』かな・・・
同じ色が揃っても消えないが。
『そうなの〜とか言ってる場合じゃなかった。取り敢えずこの先を確認して来ないとな。』
「じゃな。ちびっこいの。」ケイはそいつをポンと触ってやった。
ビビって逆走して来た道を、再び進もうとする。
「ピピッ そっちカベ。」
くるくる回りながらゼリーボールが言った。
「ん?行き止まりって事かよ?」
ピョコンと跳ねた。
「ん〜〜ならみんなと合流するか……」
「ゴウリュウスルカ!」
『ん?俺の真似してんのかこいつ?憎めない奴だなぁ。』
「なんだ?お前もついてくんの?(笑)」冗談まじりに聞いてみるケイ。
「ついてくー!」とケイの肩に乗っかって、もうその気らしい。
思ったほど重くはなかった。
「じゃ行くか。プニョ吉。あ、お前の名前な。」
「やっぱ名前は必要だろ。思いつきだけどね。」
「俺はケイだから。」
そう教えてやると、頭から肩から腕からと跳ねまくって、「プニョきち♫ケイ♫」と嬉しそうに繰り返している。
「あ〜もう大人しくしろっての。」
ケイはみんなの所へと急いだ。
『左は行き止まりだと、早く伝えてやんなきゃ。』
ケイはプニョ吉を肩に乗せたまま、来た道を戻っていた。
「こら、あぶねーだろ。」落ち着きなく肩から腕に転がってきたのを、軽く叱りながら元の位置に戻してやる。
「ピィピィッ♫」返事のつもりなのか、鳴き声をあげる。
そんな遣り取りを交わしながら進んで行くと……。
何か聞こえる。
音がする度に地面が揺れる。
「やな予感……」
ケイは、プニョ吉を両手で握ると走り始めた。
少し先に灯りが見える。
どうやら皆んなと合流できそうだった。
「遅くなって悪い。左は行き止まりだ。」
同時にプニョ吉は、ケイの肩の上に。
定位置にする気のようだ。
妙な音は近づいて来る。
カークが指示。
「俺とサライは前衛。」
「後は後衛に回れ。」
右の通路からレッドが飛び出して来た。
レッド。
「騎士団長。戦術的撤退を上申いたします。」
次の瞬間、音の正体が姿を表わした。
「げっっあれは〜!」叫ぶケイ。
シューッ、ギギギギ・・・
サイクロプス?
それともロボット?
眼玉を赤く光らせ、凶暴な吠え声を上げながら、こちらへと向かって来ていた。