爾前(にぜん)
王虎は執務室で物思いに耽っていた。
いや、物思いと言うのは正確ではない。
生まれて初めて味わう種類の、感情と感覚。
戸惑っていたと言うべきなのか?
王虎の強さは傑出している。
人々の歴史の中で、神と呼ばれたことも、10回や20回ではない。
ある時代のある惑星では、全野生の守護神として。
また他の時代では、破壊の化身として。
今は仮初に人の身をつかっているが、王虎が本来の姿で顕現したならば、誰もが神名を思い出すであろう。
6枚の翼を持った、荒ぶる白き虎。
前神話時代、つまり、神々の時代より遥か太古の時代より存在している。
神々が幾派閥にも分かれて争い、最後に勝利を収めた神々が光帝神軍と呼ばれ、敗走した神々の生き残りが魔王軍と呼ばれるようになった神魔大戦。
それぞれが『神』と『魔』と、分かれて呼ばれる様になったのは、後の話。
その時は、どちらも神々だった。
大戦中期に、邪夢が反光帝神軍を結束させた時に魔王を名乗ったが、それは現在意味する『魔』と言うニュアンスでは無かった。
『魔』が『悪』であり、光帝神と対立する存在となったのは、大戦において敗北したからだ。
世界中の神々が、『我こそは正義の味方』とばかりに争った大戦だったが、その最中にさえ、王虎に正面から戦いを挑む軍勢は無かった。
ただ、王虎には守るべき一族はいなかった。
徒党を組む必要は無かったし、そんな気も無かった。
彼は神々より、遥かに古い存在だったのだ。
彼の強さに憧れ、付き従っていた若い神々はいたが。
一対一の戦いで、王虎に勝てる神々はいなかったが、神々は王虎に勝る唯一の能力を持っていた。
そして、ある意味で、それは決定的とも言える利点となった。
それは繁殖能力。
新しい神々(第二世代)は、恋をして、結婚をし、一族を造り、勢力を拡大していく特質を持っていた。
前神話時代の存在者達(第一世代)とは、その点が大きく異なっていたのだ。
だからこそ、神話時代以降の神々は頂点を目指し合い、そしてその争いは、まだ決着をみてはいない。
光帝神軍と反光帝神軍(魔王軍)に分かれ、冷戦状態が続いている。
今の宇宙の在り方は、王虎にとって、非常に不快な在り方だった。
『神』と呼ばれようが、『魔』と呼ばれようが、裏でやっている事は同じ。
少なくとも、王虎にはそう認識できた。
王虎は呟く。
「古き大神との契約か・・・
「今頃になって・・・
王虎は、古き大神からの、直接の分霊である。
その強さを分け与えられた時、同時に一つの宿命も与えられた。
その永い生涯(存在を続ける期間)に・・・・・
恋はただ一度・・・・・
今、王虎を捉えている感情。
それは紛れもなく『恋』と呼ばれるものだった。
『古き大神』が、その血肉と霊で、世界をお創りになった。
その時、『古き大神』自身の、霊と力を与えられた神々を、第一世代と呼ぶ。
『古き大神』の分霊である彼らは、世界の始まりから在った。
王虎が誕生した時、『ゴライ』の名を『古き大神』より賜わった。
大戦末期に魔王軍として参戦した時より、『魔人王虎』で通している。
彼の正体が、第一世代の神『ゴライ神』である事を知っているのは、僅かな側近に限られる。
魔王邪夢ですら知らない。
世界が創造されたのは、およそ120億年前。
つまり、王虎の年齢は120億才だ。
しかし今、王虎を捉えている感情は、彼の120億年の人生の中で、経験したことの無いものだった。
ーコンッコンッー
ノックの音が、王虎の思考を中断した。
『珍しいな。』
この洞窟の周辺は、人界における王虎の領地ではある。
終戦時の条約で、惑星ナーブは光帝神の領土ではあるが、魔物も多く暮らしている。
王虎はそんな隠し砦を『星の数』ほど持っている。
王虎は既に第二次神魔大戦は必然と考え、周到に準備しているのだ。
しかし、この洞窟の殆どの事は、ここのボスに任せてある。
サイクロプス
+
ケンタウロス
+
1000倍
古龍が最初に出会った、大怪物である。
見た目はともかく、知能が高く、加えて中々の人望もある。
第一ここに住む魔物たちにとって、直接会うには王虎は怖すぎる。
アウスと言うダークエルフの少年は懐いている。
あとは、副村長を勤める魔人の嵯峨萕くらいしか、この部屋には訪れない。
『アウス』かな?
そう思いつつ、王虎はノックに応えた。
「どうぞ。」
ドアが開き入って来たのは、若い神族だった。
妖精ハリセンは突っ込んだ。
『リンリン・・・
『何しに・・・
『てかっ、どうやって?』
その男は言った。
「あの・・・すみません・・・・」
「旅の魔族ですが、連れとはぐれて・・・・」
「こちらに村長さんが、居られると聞いて・・」
「プッ。」
王虎が吹出したのは、何千年ぶりのことだろうか?
「これはこれは・・・」
「リングル・リングスター准尉。」
「光帝神軍の英雄が、こんな所に何の御用ですかな?」
リンリンは照れに照れて応えた。
「昔のことですー!」
「今は退役少尉で、軍とは縁を切りました。」
「流浪の空手家をしております・・・・」
「!!!!!」
「ってか、??何でその名前を知ってるんですか?」
王虎は応える。
「お目にかかるのは初めてでしたな。」
「魔人王虎と言えば、リングスター准尉・・・失礼、退役少尉も、お聞きになられたことがあるのでは?」
青ざめるリンリン。
「殺さないで・・・」
「今は凛々流空手総帥のリンリンです。」
「光帝神とは、完全に縁を切っています。」
「はっはっはっ・・・」
王虎は朗らかに笑う。
「いや、失礼。」
「で、凛々流の総帥が、こんな所にいる訳を教えてくれんかね?」
リンリンは、これまでの経緯を話した。
ハジメと村に潜入して、情報収集と称して、村の酒場で一杯やっていたらしい。
いい気分で呑んでる内に、ハジメの姿が無い。
仕方なく店の勘定を払い、ハジメを探しにでたが・・・・
「クックックッ・・・」
笑いを噛み殺しながら王虎。
「サイクロプスに相手を頼まねばならぬほど、組み手の相手に不自由しているなら、私が相手をしてあげても良いが?」
「ほんとですか???」
と喜ぶリンリンだが、我に返り。
「いや、有り難いお話なんですが、ハジメさんにカラテの秘伝書を売って貰える約束でして。」
「とにかくハジメさんを探さないと。」
「では、村長に会うが良いだろう。」
王虎は悪戯っぽく言う。
『いきなりここのボスを見たら、この男がどう言う反応をするかを見てみるのも一興。』
「そこのドアを開けて進みたまえ。ここの責任者がいる。」
「ありがとうございます。」
リンリンは王虎に礼を述べ、古龍が入って来た方のドアを開け、洞窟内部へと進んだ。
短い通路を抜けると、最初に古龍が瞬間移動させられた岩棚に出た。
「ダレダ?」
「オウコサマノ客人カ?」
「ナルホド・・・」
「オウコサマガ、キニイルタイプダナ。」
村長は、発音はちょっとアレだが、意志の強さを感じさせる話し声だった。
リンリンは、ポッカーンとして、村長を見上げた。
「こりゃ・・」
「ごっついなぁ。」
「殺気は無いけど、鬼気ってのがある!!」
「客人、ナヲオシエテクレナイカ?」
「イヤ、チョット待て。」
「ミマワリニイク。」
「サイキン、フオンナ気配。」
「スコシツキアッテクレ。」
村長は、武器と盾を腰の辺りに装着して両手を自由にすると、掌をリンリンの前に、そっと差し出した。
乗れと言っているようだ。
リンリンは嬉しそうに乗った。
村長はリンリンを掌に包み込むと、ギャロップで走り出した。
やがて道は登りになった。
最初は穏やかだった坂がきつくなっていく。
とうとう30度くらいの急坂になった。
リンリンには、垂直に駆け上がっている様に感じる角度だ。
やがて出口が見えた。
人族が知らないだけで、この断崖に囲まれた岩山には、幾つも出入口がある。
今回は、その内の一つを目指している。
村長は穴から天空に向かって跳び出した。
外は、正午はだいぶ過ぎていたが、夕刻と言うにはまだまだある太陽の高さだ。
村長はジェット機のように跳び出したが、見事に姿勢を調整すると、出来る限りソフトに着陸した。
王虎の客人に気を使っての事だろう。
村長は、両の掌を、そっと開いた。巣から落ちた子雀をいたわるような仕草だった。
「客人、スマナイガ、ワレノアタマノ角ニ、ツカマッテクレ。」
リンリンを角に捕まらせると、森を疾走した。
突撃速度の重モ◯ルス◯ツの頭にしがみ付いている様なものだ。
この状況を快く感じ、ワクワクとする高揚感を感じられるのは、リンリンくらいのものだろう。
やがて丘の上で止まった。
遠くに、太陽に照らされた、ハンマの城が見えた。
「トコロデ、マダナマエをキイテナカッタナ。」
「ヨカッタオシエテクレ。」
「凛々流空手総帥、リンリンです。」
なんか、すっかり和んでいる。
「ワレノナハ爾前。」
「オウコサマヨリ、タマワッタナダ。」
「フダンノミマワリハ、サンポノヨウナモノダ。」
「ダガココスウジツ、イロイロトオカシイ。」
爾前は、ハンマの城下町を指さした。
「アノ人間ノマチ。」
「リンリンは人ダナ?」
「アノマチカラキタノカ?」
「カエリタイノカ?」
「リンリン、ノゾムナラオクル。」
「俺のことは気にすなくて良いですよ。」
「爾前に付き合いますよ。」
「それに俺が来た町は、ずっと遠くなんで。」
「爾前はずっとあの洞窟に居たんですか?」
思いがけない言葉が出た。
『リングル・リングスター准尉なんて、昔の名前で呼ばれたせいかもな。』
リンリンは、光帝神軍の歩兵だった。
志願兵だった。
三つの宇宙で、好き勝手に勢力を拡大する神々。
その陰で、神々の争いに巻き込まれ苦しむ弱小種族。
今こそ光帝神の名の元に、宇宙に秩序をもたらせなければ!!!!
これは聖戦である!!!
邪神どもに正義の鉄槌を!!!
苦しむ民衆に、真の平和と信仰を!!!
若き日のリングル・リングスターは、光帝神の掲げる正義に、血沸き肉踊った。
この聖戦。
おそらくは世界で最後の戦争!!!
しかし、リングル・リングスターの所属は、陸軍の歩兵部隊。
ミスリル合金削り出しのコックピットで宝玉を操作すれば、遙か数キロ先で火柱が上がり任務終了…
そんな訳にはいかなかった。
文字通り、『地獄の戦場』。
はらわたを撒き散らして、死んでいく仲間。
そして敵兵・・・・
魔法が充填された兵器は、兵士と民衆の区別はしない。
リングルの目の前で死んでいく弱小種族たち。
『俺は何をやってるんだ?』
殺した敵兵の数だけ、軍服に星が増えていき、准尉となった時には、あの志願兵だった頃の理想など、リングルの心のどこを探しても無かった。
少尉になる話は、何度も断っていた。
少尉になり、光帝神直属の空挺大隊へ。
しかし、仲間を捨てれなかった。
リングルがどんなにそう呼ばれるのを嫌っていても、彼は英雄だったのだ。
リングルが少尉への昇進を受けたのは、大戦が終わる直前だった。
今の部隊に残ることを条件に。
大戦が終わり、リングルは軍を去った。
爾前に話しかけられる。
「ワレラハフルクカラコノ地ニスンデイル。」
「人ノマチモフルクカラアッタ。」
「オオイナルタタカイノマエ、マモノモ人モ、ウマクヤッテイタ。」
「イマハテキドウシ。」
「ドチラニトッテモ、コノチ、フルサト。」
「デテイケナイ。」
「人、タクサンマモノコロシタ。」
「コウテイシンノナノモトニ。」
「ワレラモ人コロシタ。」
「マオウジャムサマノタメ。」
「ツマラヌムカシバナシダッタナ。」
巨大サイクロプスは、軽やかに身を翻えし、森へ向かった。
暫く走ると、湖が見えて来た。
突然、サイクロプスは止まった。
爾前の口から牙がのぞき、唸り声が漏れた。
「ヨウスガオカシイ。」
「キノセイカモシレンガ。」
「リンリン、チュウイシロ。」
爾前はさらに湖に近づくと、リンリンをそっと降ろした。
「スマンナ。」
「野暮ヨウダ。
「スグスム。」
サイクロプスは、湖に向かい、野獣の咆哮をあげた。
湖に向い走り始め、いきなり飛び込んだあ。
サイクロプスは、その巨体に見合った水飛沫をあげ、水中に姿を消した。
未だうねりが静まる前に、湖面は巨大なコブ状の盛り上がりを造り出し、その水の塊りが弾けて爾前の体が飛び出した。
体には、爾前と同じくらいの水竜が巻き付いていた。
両者はもつれ合ったまま、再び水中へ。
轟音と爆水を巻き上げ、没して行った。
湖面のうねりがようやく収まりかけた時、上陸して来る者があった。
血で錆びた銀のような甲冑だった。
一体、二体・・・・全部で十三体の甲冑が現れた。
それぞれ、戦斧やクレイモアで武装している。
甲冑の隙間から水がこぼれている。その量から推し量れば、甲冑の中身は、空洞と言うことになるが。
十三体の甲冑は、リンリンの方へと進軍を始めた。
光帝神軍では、『聖なる鎧兵』。
魔王軍では、『彷徨う鎧兵』。
呼び方は違うが、本質的には同じものだ。
先の大戦で戦死した兵士の魂を、魔力の力で鎧に封じ込めたものだ。
呪われた魂は、未だ戦場にいるのだろう。誰も解き放ってくれる者はいない。
リンリンは鎧兵の装備から、かっての友軍であると判断した。
十三体の呪われた魂は、血汚れた鎧に身をつつみ、戦場の定理に導かれ、リンリンを包囲するフォーメーションを取り始めていた。
「虚ろざわる者ですか。」
「ならば成仏させてやるのが、俺の務めかな。」
「かっての戦友たち!!助けてやるよ!!」
「凛々流空手!!参る!!」
リンリンは、在らぬ方向へ走る。
包囲されるのを防ぎ、相手を直線状に並べるためだ。
「凛々流の使い手を、易々と包囲できると思うなよ。」
「凛々流、狼の歩法!!」
妖精ハリセンが突っ込む。
『それ、あんた戦時中から使っていたじゃん。』
『マーシャルコマンドーのマスターとして。』
リンリンは鎧兵の先頭の一体が孤立したのを確認すると、踵を返し、そいつに突進した。
「凛々流奥儀!!!虚空五段蹴り!!!」
あ、踏み切りが手前すぎる!!!
グワガラドッシャーン!!!!
それは『虚空五段蹴りとしては不完全だったが、『ジャンピングヒップアタック』としては、パーフェクトだった。
リンリンの巨大な尻に潰され、鎧は崩れ去った。
破壊された鎧から、蒼白い鬼火が立ち昇って行く。
成仏したらしい。
「南無南無・・」
「成仏せいよ。」
「しかし、我が秘技を、とっさに間合いを狂わせ防ごうとするとは。」
「生前は、嘸かし名のある武人だったと見た。」
リンリンの目前に、既に二体目が迫る。
「お主・・・・聞いた事はないか?」
「凛々流の手刀には、剣の神が宿ると。」
「くらえ〜〜〜!!!!!」
リンリンの左肘の内側が、見事に相手の喉を捉えた。
角度、スピード、タイミング、どれもが完璧。
相手の鎧は、喉を中心点にグルグルと数回転したのち、大地に叩きつけられた。
バラバラになり鬼火が立ち昇る。
リンリンは自らの手刀を眺める。
「う〜〜む。手刀を造った時の、この小指のアーチが納得いかん。」
「俺も未だ未だだな。」
妖精ハリセン。
『あんた、今のウエスタン・ラリアートですから!』
『そもそも、小指、当たっていない!」
続いて三体目。
「凛々胴回し回転蹴り〜〜〜!!!!」
あ、今度は踏み切り位置が遠すぎるって!!
リンリンの踵は相手の直前を掠める。
当たってはいない。
そのまま着地。
両者は目と目、鼻と鼻を突き合わせる程の距離だ。
突然、鎧は頭部から下に向かって、真っ二つ崩れる。
リンリンの凄まじい蹴りが、真空の刃を造っていたらしい。
「凛々流奥儀。真空蹴り(ニヤリ)。
妖精ハリセン。
『・・・うわぁ・・・・』
『絶対、いま考えついたな。』
さらに近づきつつある三体に。
「凛々流、肉弾重爆撃!!!」
これは、見事なショルダータックルだった。
こう言う技は、得意らしい。
三体が粉微塵になって、蒼い鬼火が立ち登る。
さらに近づく五体は、真っ直ぐに突撃して来た。
生きていた頃なら、ツーマン・セルを崩さず、先ず包囲に来るような場面なのだが。
リンリンも五体に対し突撃。
しかし、擦れ違いざまに、身体を僅かにズラし、横からの膝蹴りを水月に叩き込んで行く。
空手では見ないタイプの蹴りだ。
喰らった相手は一回転して次々と地面に叩きつけられ、鎧は砕け散り、鬼火が立ち昇る。
アメリカンフットボールのガードが使う、キチンシンクにしか見えない。
一回の対面交差戦で、五体を葬った。
最後の二体は、キャプチュードとエメラルドスプラッシュを決めて倒した。
再び、湖面が盛り上がった。
二匹の大怪獣が飛び出して来る。
今度はかなり陸寄りで、角度も斜めに付いている。
上手くすれば、地面に落ちる。
縺れ合ったまま、巨獣達は地面に叩き付けられた。
爾前は水竜を絞め殺しにかかったが、水竜の尾が鞭の様にしなった。
背後よりの一撃が、巨大サイクロプスを弾き飛ばした。
爾前の巨体が地面に叩きつけられ、そのまま野球のスライディングの様に、リンリンの近くまで滑って来た。
リンリンと爾前の目が合った。
「客人、ソッチハオワッタノカ?」
「仕事ガハヤイな。」
サイクロプスは素早く立ち上がると、武器と盾を、腰の辺りの留め具から外し、油断なく構える。
盾で半身を隠しながら、水竜に突撃する。
水竜の口から、凄まじい勢いの水流が発射された。
河川工事なので使う、ハイドロポンプ並みの威力だ。
爾前は盾で受けたが、水流はサイクロプスの突進を止めた上に、さらに弾き飛ばした。
ドラゴンの盾が無ければ、流石の爾前も、ただでは済まなかっただろう。
高速の水流は、鉄をも切断するのだ。
吹き飛ばされた爾前は、またまたリンリンの近くまで、スライディングして来た。
爾前はリンリンに言った。
「ダイジョウブ・・・ダ・・・
「オカニアゲテシマエバ、ハイドロジェットハ撃テモ3ハツ。」
爾前は立ち上がると、水竜を中心に円を描き始める。
水竜も、今度は迂闊に撃ってこない。
なんとか湖に戻りたいのだろうが、その動きはサイクロプスに巧みに牽制されてしまう。
爾前は水竜目掛けて、再び突撃を試みる。
水竜は爾前を充分に引き付けるつもりか、中々、ハイドロジェットを撃たない。
至近距離だ!!!
もう絶対に外しようがない!!!
渾身のハイドロジェットが放たれた!!!
爾前は跳び上がった。絶対に撃ってくるのは分かっていた。とは言え、爾前の技量が凄いのだ。
それに経験も。
この程度の相手なら、何十匹も仕留めてきていた。
もし爾前が馬で、オリンピックの馬術競技に出ていたら、金メダルでオセロが出来ていただろう。
紙一重の際どさで、水流を跳び越した。
上からの武器を打ち下ろす。
爾前のモーニングスターの6個の鉄球が水竜に襲いかかる。黒い6連星の直撃弾。
水竜は文字通り、ペシャンコにされた。
それでも、1〜2度、頭を上げようとしたが、すぐにグッタリした。
口からは大量の血が流れ出していた。
竜族は、そう簡単には死んでくれない。
それを一撃とは。
「ヒューッ。」
リンリンが感嘆の口笛を吹いた。
「派手だなあ。」
それを聴いたのか、爾前が向かって来た。
「耳いいな(笑)」
「お疲れさん。こっちも終わったよ。」
爾前は言った。
「リンリン。コウテイシングンノヘイシ・・・殺シテダイジョウブカ?」
「リンリン、魔族二ナルナラ、爾前、カンゲイスル。
仕事がたて混んで来ました。
更新のペースは遅れます。
頑張って更新して行きます。
いつも応援、ありがとうございます。