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異界の風  作者: 獣王丸
11/23

魔界

R15

残酷な描写があります。

苦手な方は、飛ばしてください。

なんてこった。

まったく…

こっちへ来てから、もう何匹の魔物を斬り倒したんだぁ?


『魔界と言っても、私の庭みたいなものだ。』だと!

これまで、俺が人界で倒した怪物の(たぐ)いなど、ここへ来ればリトルリーグだ。

奴に貰ったこの長剣がなければ、魔界のエントランス・ロビーに着いた途端に、慌ただしく、あの世行きの便に登場手続きをしていたところだ。


神界、魔界、人界は、それぞれ独立した宇宙だ。

なんせ俺は『星の船(宇宙船)』に乗って『星の海(宇宙)』を旅した事がある。


勿論、こっちの人間の技術じゃ、恒星間航行なんて無理だ。

星空の神ビリーブの神殿が、スペースポートになっている。

神ビリーブが連れて行ってくれるのは、人界の光帝神の支配領域に限るが。

こんなサービスが受けられるのも、光帝神にとっても、魔王邪夢にとっても、人界は価値があるらしい。

その価値が何だって?

知らん。


人界から、神界と魔界には、幾つかゲートがあり、行き来が可能だ。

神界と魔界を繋ぐゲートは無い。

サンドウィッチを思い浮かべてくれ。

上のパンが神界。

中のハムが人界。

下のパンが魔界。

神魔大戦のあと、人界の9割は神々の縄張りになった。


しかし…

王虎とか言ったな…


『時間軸も調整しておいたから、たっぷり修行してくるがいい。丁度いい具合の時間と空間に戻って来れるだろう。』


ふざけやがって…

こう見えても、俺は地球じゃ理系の大学を出ている。

さらに言えば、J・P・モーガンの愛読者でもある!


だから奴の言った意味も分かるが…

ようは、こっちで過ごした時間軸と、あっちの時間軸じゃ、流れを変えてあるってことだろ?


まったくご親切なこった。


俺はフラッシュバックに悩まされながら、やっと倒した魔物(見た時ねえよ!こんなヤツ)を検分しながら、心の中で悪態をついた。


長剣の意思(人間の意思、意識とはだいぶ違う)と俺の人格が、統合されて来てるらしい。

剣の記憶が俺の中にダウンロードされるって訳だ。

ま、最初のダウンロード先は、潜在意識の方なんだろうね。

だから剣の記憶が、突然、俺の記憶になってフラッシュバックして来る。


魔物との戦闘中、いきなり習った覚えもない長剣の扱い方、その魔物の名前や特徴が、顕在意識(けんざいいしき)の中に跳び込んで来たりする。


デジャビューの様に、「何で俺はこんなこと知ってるんだ?」って感じの時もある。

まあ、お陰で随分と助かっているんだけど。


俺の学んでいた流派は、少々変わったところがあった。

年に何回か、山籠(やまごも)りの修行があるんだ。


内容は、

『武術の特別訓練』

   +

『特殊部隊のサバイバルキャンプ』

   +

『山岳密教の修行』

ってとこかな。


なんか楽しそうだって?

冗談じゃない。

半分、気が狂いそうになる、地獄の数週間だ。

蜥蜴(とかげ)や蛇や昆虫なんて、初めて食べたぜ。


その経験と、剣からダウンロードされた知識のお陰で、なんとか生きていられる。


さっき倒した魔物は毒を持った奴だったが、筋肉部分には毒成分が無い事を思い出した。

もちろん、これは剣の記憶だな。

魔物の肉のうち、持ち運べる分を解体して、やはり魔物の皮を()いで作った袋に入れて、俺は歩き出した。

先ほど捉えた妖虫を(かじ)る。

甘い体液だ。

見た目は悪い。

こいつを思い切りマンガチックに可愛くデフォルメすれば、タランチュラに似てなくもない。

ま、人間、慣れだよ。慣れ。


ここの様子は、だいたい分かってきた。

密林でサバイバルしてるってとこだな。


加えるなら、敵陣の真っ只中(まっただなか)


小物はこの長剣を見ただけで近づいても来ないが、強いやつは逆に狙って来る。

連中が命を賭けるだけの値打ちがあるらしい。

中には、物凄い憎悪とともに襲ってくるやつもいたりする。

王虎に怨みを持つ奴だと、潜在意識が言ってくる。


しっかし美味いな。この妖虫。

もし、アヤかサライが救援に来てくれたら、この貴重な妖虫を半分わけてやってもいいのに。

そんなことを思いながら、もう一匹妖虫を取り出して(かぶ)り付いた。


しっかし〜・・・・

今の俺は長剣をまったく使えてないな。

ただ、1メーター60の斬れ味の良い剣を持ってるだけ。


王虎がくれた鎧も、俺に力を与えてくれているらしい。

未だ未だ使い方が良く分からんが、怪我をした時には、鎧の何ヶ所かに付いている水色の宝玉が光を発し、たちまち傷を治してくれる。

うーん。便利だ。

それに運動能力が飛躍的に増大している。

これは白い宝玉が発光した時だな。

この鎧には、他にも色々な宝玉があるし、鎧じたいにも、何かの力を感じる。

俺の内部にある何かと呼応して、何か魔力の様なものが発動すると思うのだが。

鎧のあちこちに装備されてる宝玉だが、今の俺にはアクセサリー。


王虎が用意した出口とかの手掛かりでもさがすか。



俺は老人と出会った。

どこか知性を感じさせる老人だった。

『灰色のガ◯ダルフ』がイメージとして近いかなぁ…


老人の瞳は、昼間の猫のように、あるいは爬虫類のように縦長だ。

しかし、凶暴さは感じない。

むしろ深い知性を感じる。


もし、森で一番の老木に目があったら(まあ、この世界ではたまにあるんだけど)、きっとこんな深みを(たた)えているんだろうな。

そんな眼だ。


老人の眼は語っていた。

『なんだ、騒がしいと思っていたら…

『お前が無様な戦いをして、喧騒を振り撒いておったのか…


好きで来たんじゃねぇよ!!


しかし老人の眼が、俺の背負っている長剣に移った瞬間!!

爺さんは爆発的な速度で、俺に襲いかかって来やがった。

俺に突撃をかましながら爺さんの肉体は膨れ上がり、纏っていた衣は肉体の膨張に耐え切れず散り散りになる。


肉体はハリウッドのSFXを観るようにゾアントロピーを起こし、持っていた杖は、斧と呼びたいところだがギリギリ剣だなと言う豪剣に変わった。


『斧と呼びたいが、ギリギリ剣だな。』

いや、マジで。


俺も長剣を引き抜き突進する。

停止した状態で受け切れる斬撃じゃない。

こちらも速度のエネルギーをつけるしか受けようがない。

まして(かわ)すなど。

うちの流派にも、相手の初撃を斬り返す技法は山ほどある。

しかし、俺の本能が無理だと言っていた。



どういう事情かは知らない。

こちらの事情も説明しようがない。


もしこの戦いが終わって俺が生き残っていたら、爺さんの死体にすがって泣いてやるさ。

埋葬してやるのは無理だな。スコップが無い。


爺さんの肉体は、硬そうな鱗が見る見る皮膚を覆って行く。


竜人(ドラゴニュート)だ!

本物を見るのは初めてだが、リザードマンなどとは格が違う。

俺が今まで戦った中で、間違いなく最強の敵だ。


長剣と豪剣が激突した。

爆発的な衝撃が走る。

巡り合ってはならない二振りの剣が、邂逅してしまったのだ。


俺と竜人は、数合、激しく斬り結んだ。

竜人は突然、後ろに15メーターほどジャンプした。


片手を俺に向ける。

その手から、電撃というか?怪光線というか?

とにかく、それに当たったらロクなことにならないのは、出来の悪い俺の頭でも理解できる魔力を発してきた。


俺は無意識のうちに左手を出した。

鎧の各所の宝玉が煌く。

それが当然のごとく、俺の左手は、虹色の半透明の盾を造りだした。

多少の衝撃はあったが、竜人の魔力を受け切ってしまった。


俺は一気に距離を詰める。

竜人も突進して来やがった。


実際には、1分も戦ってはいなかったと思う。


竜人は突然距離を取ると、俺の手前の地面に、先程の怪光線を連射し煙幕を張ると、身をひるがえし退却した。


見事な逃げっぷり。

奴が何を考えたか、俺には理解できた。


このまま戦闘を続けても、勝てる確率は五分と五分。

ここは奴にとってのホームグラウンド。

準備を整え、確実に俺を殺す!


俺は無意識に煙草を探った…

無かった…





その日の夜、俺は夢を見ていた。

夢の中で、俺は長剣だった。

(あるじ)とともに一団を率いて荒野を疾走する。

目指すは竜人のキャンプだ。


これから襲撃する竜人のキャンプは、放浪の旅を続けている一族だ。


もちろん、全ての竜人がボヘミアンって訳じゃない。

これから襲う一族は、流浪の旅を宿命にした一族だ。

先祖代々、ある物を護るために、特定の地に定住せず、代々の預言に従い旅を続けているそうだ。

竜人族の中の、ある特殊な神官の地位を、一族全体で継承している。


俺の主の目的は、その継承されている物の強奪だ。


主の顔は分からない。

剣である俺には、主の顔や性格には興味が持てなかった。


やがて斥候と合流し、闇に紛れて奇襲をかけた。

勝てると踏んだから襲撃に出たのだ。


しかし、竜人たちの守りは偵察情報より遥かに固く、また戦士一人一人の力量も戦意も高かった。


主は、戦況を好転させるべく、俺を引き抜くと上段に構えた。

主の闘気が俺の中に満ち溢れて来る。

主が俺を、敵陣に向けて一振りした途端、真空の刃は敵陣地の一角を襲う。

それは竜人たちを引き裂き、その剣を持った腕を巻き上げ、真空は傷口から血液を吸い出し、巻き上がる旋風が、連中の血を顔料に、抽象画を描き出す。


『破導剣・真空刃』


大気を利用した真空刃は、俺にとっては、ごくごく基本的な能力にすぎない。


つまらん。


勝てると踏んで仕掛けた戦いだったが、キャンプを制圧した時、味方の損失は計算値の三倍を超えていた。


残っていた女子供や老人を捕虜とし、キャンプ中を家捜しした。


村の長老は、自害をして果てていた。

蘇生呪文も効かぬ様、完全に自身の肉体を破壊していた。


探し物は見つからなかった。

こうなっては、生き残った村人に聞いて見るしかないな。


上手くコミュニケーションが取れるといいんだが。


連中との交渉には、『拷問』と言う言語を使う。

分かり合えるまで、少々時間がかかるのが難点だが、どうやら他に方法は無い。


泣き叫ぶ母親の前で、幼子を生きたまま解体して、その肉を喰った。


爪の間に火薬を仕込み、1本づつ爆破した。


眼球に一本づつ針を刺していった。

15本から20本も刺すと、流石に次の針を刺す所が無くなってくる。


子宮を裏返しに引きずりだし、その女の口に突っ込み喰わせた。


俺も多少は協力したが、殺傷力があり過ぎ拷問には不向きなのだ。


主は俺の刀身に、闘気とイメージを送り込み加熱した。

やれやれ、俺が鋼の剣だったら、焼き鈍しになって、切れなくなっちまうだろうが?

主は馬鹿なのか?それとも俺がどう言う由来(ゆらい)の剣なのか、分かってやっているのか?

この主は好きになれんな。俺の力を引き出せないし。


主は俺の刀身で、若い女性の乳房を切り取っていった。

充分に時間をかけて。

傷口は加熱した刀身が焼き潰しているので、失血死の心配は少ない。

ショック死しようにも、回復呪文と蘇生呪文がそれを許さない。


生きたまま5つに解体された者もいた。

それぞれの部分を生かし続けてだ。


襲撃の時点でメーデーが発せられていただろう。

救援部隊が来る前に、あれを探し出さねばならない。


斥候から報告が来た。

救援部隊はすぐそこまで来ていた。


残念ながら今回のミッションは失敗だったようだ。


(あるじ)はまだ息のある肉片を晒し者にした。

村中に、(はりつけ)にしたり、串刺しにしたりした。


救援部隊の到着時に、ギリギリ生きている様に、最新の注意を払って作業を続けた。


ある幼女(眼は潰され、鼻も耳も削ぎ落とされ、皮膚の大部分は剥ぎ取られていたので、幼女とは分からなかったかも知れないが)は、火刑の杭に串刺しにされ、救援者が助けようと近づいた時火炎呪文が発動するブービートラップにされた。


主は、仕事の出来に満足しているようだ。


結局、3日3晩の拷問では、時間が無さすぎた。

せめて1週間は無いと。


襲撃部隊はキャンプ地を去った。







俺は目が覚めた。

まだ生々しく虐殺の感触が残っている。


感想は・・・・


聞かないでくれないか(泣

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