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初めての異世界召喚  作者: 鍋ノ縁冗句
32/41

目覚めを願って

――ギシッギシッギシッ


ふぅ、明日の午前5時にギルド集合か。

休まらんなぁ。

あ、今日の内に明日の準備しなくちゃ。

はぁ、そういえば意外と待たせちまったよな……リオナ大丈夫かな。

いや何であいつの心配してんだ俺は。

まぁでも早く戻ろう。


――ザワザワ


ん?なんか人だかりが出来てる。

むさ苦しい男達が寄ってたかって何してんだ?

今は……午前9時半頃ってとこだよな。

依頼の受付かなぁ。

いや……待てよ……あそこは。



「っ!……わたくしのフィアンセが来ましたので、これにて失礼いたしますわ」

そう言ってリオナは、ハレイの元に優雅な姿勢で歩み寄る。

そして、腕を絡めるとニッコリと微笑んだ。


――おい、あんな奴がフィアンセかよ

――調子に乗んじゃねえぞ若造が

――俺の方がよっぽどマシだぜ

――ちんちんかいかい


「はぁ、フィアンセってなんだよ……なんか俺すっごい悪口言われてるし……まぁ一人だけ悪口じゃないけどさ」

小声で話しかける。


「だって仕方ないじゃないですかぁ。私だって頑張ったんですよぉ?気づいたら男の人に囲まれてて怖かったんですからぁ」

「怖いってどの口が言ってんだ?どの口が。まったく……ほら行くぞ」

腕を絡ませたまま歩き出す。


「あっ……キザキ様ぁ……」

「変な声出すなっ!」

「うふふっ」


――チッあの野郎

――覚えてやがれクソ小僧

――あんな奴が相手じゃ別れるのも時間の問題だ

――みみくそほじほじ




そうして二人は無事ギルドを出る事が出来た。


「ふぅ、なんとか脱出できたな」

「そうですねぇ、キザキ様ぁ」

「よし、離れろ」

「聞こえませぇん」

「離れやがれってんだ!この!」

「んもぅ!……うふふっ、私を剥がすの上手になりましたねぇ。キザキ様のテクニックゥ……素敵ですぅ……今度は私の服も剥が――」

「ほら行くぞ!」

ハレイは足早に歩き始めた。

「待ってくださいよぉ、キザキ様ぁ!」


次は病院だ。

ここから10分くらいで着くだろうか。

明日の準備もあるが、まずは二人の様子を確かめに行きたい。

シグラの容態はもちろん気になる。

しかし、大した外傷のないサラさんの意識が何故戻らないのか、とても心配だ。



――14分後


二人は病院に到着した。

やっぱり大きい病院だなぁ。

どれくらいの人数を収容出来るんだろう。

1000人くらいかな。

んー、分からん!


「中入ろっか」

「はいぃ、私とキザキ様が初めて愛を育んだ場所……んっ!中に……入りましょう」

「そーですねー」

ハレイは一人で中に入っていく。


「キザキ様ぁ!」

ハレイの後に続いてリオナも中に入っていく。




サラさんとシグラ、先にどちらに向かおう。

んー、どうしようか。

うーん、近い方から行こう。

二人共どこにいるんだー?

受付のお姉さんに聞こうと、受付に向かい歩き始めるハレイだったが、リオナが呼び止める。


「キザキ様ぁ!シグラは1階、サラさんは4階に居ますよぉ?」

「分かった、ありがとうリオナ」

5階建ての病院だと、一緒に搬送されてもこうまで離れるもんなんだなぁ。

まぁ地下を合わせると7階か……忌々しい地下。

いやそんな事はどうでもいい。

一階のシグラから様子を見ていこう。


「よし、行くぞー」

「あのぅ、私もいいんですか?」

「いきなりどうしたよ。んー、まぁいいんじゃねえか?お前は俺について来たいんだろ?だったらついて来ればいい。シグラが起きたら俺は何もしてやれないけどな。その時は二人で話し合ってくれや」

「キザキ様……はい、ついていきます!…………一生」

「ん?おーいなんかしみったれた顔してんぞー」

そんな顔も出来んのな。

一瞬ドキッとした俺がいて笑えてくる。


「しみったれていませんよぉ?垂れて来ているのは私の――」

「行くぞ!」

「最後まで言わせてくださぁい!」

「知らん!」



――ガラガラガラ


病室の引き戸を開けるとそこは個室になっていて、正面に鎮座する質素なベッドにはシグラが横たわっていた。

窓からは陽の光が射していて、シグラの銀色の髪の毛がキラキラと輝いていた。

そんな姿に魅入られてしまったのか、神々しく光る純粋な銀にハレイは目を離せずに、ゆっくりと近づいて行った。

シグラは、最初に見た時の怪しい服を着ておらず、病院服を着ていた。

質素な布地が彼女の贅沢な顔と体で上手くバランスが取れていて、とても官能的な見た目に仕上がっている。

布一枚、その下には白く柔らかい肌や、2つの柔和な膨らみ、沢山の誘惑が存在している。

そう、たった一枚の布で隠された宝物庫、セキュリティもなにもない、触れてしまえば止まれない。

ハレイは生唾を飲み込む。

イケナイ考えに頭を支配されそうで、ハレイは激しく頭を振った。

不思議とそれだけで、モヤモヤとした、いやムズムズとした感情が吹き飛んでいく。

はぁ、俺は何を考えてんだ。

冷静になったハレイはリオナと一緒にベッドの横で屈み込む。


「シグラ、俺は何度もシグラに助けられた。会ってそう日も経ってないはずなのに、どうしてか凄く……心が苦しい。シグラが大怪我をしている姿を見ると凄く辛い。それはきっと俺の中でシグラが、大切な仲間として存在しているからだと思う。早く目を覚ましてくれよな。じゃ、また来るからな」

ハレイはゆっくりと話した。

そして別れの挨拶をして病室を後にする。

リオナは終始一言も発する事なく、シグラの寝顔をただじっと見つめるだけで、ハレイが病室を去るとそれに続いていった。


「起きなかったな、シグラ」

「はい、起きませんでした。……私、シグラが起きたらちゃんと謝ります」

「そうか」

何か感じるものがあったのだろう。

リオナが珍しく真面目な表情をしている。


「よし、次は4階だ」

「はい、行きましょう」




――ガラガラガラ


病室の引き戸を開けると、ここもまた個室になっていた。

シグラの病室とほぼ同じ構造で、正面にベッドが置いてある。

当たり前だが、サラさんはそこに寝ている。

温かみのある薄茶の髪に衝動的に触れたくなるハレイであったが、先程の戒めが残っていたのか、今回の邪な感情はスッと引っ込んでくれた。


サラの元に歩み寄るハレイとリオナ。

そしてベッドの横に屈み込む。


「サラさん、一体どうしちゃったんですか。して欲しい事があるのなら教えて欲しいです。それで起きてくれるのなら何でもします。俺は……サラさんが居ないとダメなんです!サラさんの居ない世界は知りたくない。絶対に起きてくれるって信じてますから!」

「キザキ様……」

「サラさん、また来ますっ」

涙ぐむハレイは、それを隠すようにそそくさと病室を出ていった。


「サラさん、私はあなたに嫉妬してしまいます。キザキ様にこれだけ愛されているのですから。……ですが諦めません。私だってキザキ様に愛されたいんです。……早く目を覚ましてくださいね」

そう言ってリオナは、ハレイの後を追うように病室を出ていった。


「あらぁ?キザキ様はどこにぃ」

病室を出たリオナだが、ハレイの姿が見当たらずキョロキョロと周りを見渡す。


「んんー、キザキ様ぁ」

リオナはキザキセンサーに神経を集中させた。

その結果、病院の出入り口を出たすぐ外に居るとセンサーが反応した。


「キザキ様ぁ!」

リオナは目的地までの最短ルートを高速で計算し、すぐさま走り出す。




「――あれ?そういえば……」

リオナはどこに行ったんだ?

サラさんの病室に入った時は居たよな。

出る時は……うーん、居たような居なかったような。

戻って捜してみるか。

ハレイは振り返り、病院の入口へと戻る。


「――様ぁ!!」


ん?何やら入口の方から声が……あれは。

とてつもない猛スピードで迫り来る物体A。

とても生身の人間が出せる速度ではない……と思う。

いやしかしあれは人間だよなぁ。

穏やかな笑みを浮かべ怪物じみた速度で走っているその姿は、アンバランスという言葉のお手本と言える。

ていうか……あれリオナだよな。

なんてことを思っている内に一瞬で目の前に現れる。


「キザキ様ぁ!先にイっちゃうなんてヒドいですよぉ!」

「ごめん」

流石に申し訳ない事をしたよな。

少し取り乱しちゃって……恥ずかしい所を見せちまった。


「キュン!ぜ、全然気にしてません!つ、次行きましょう?」

キザキ様が素直に謝りましたぁ!んっ!たまりませぇん!

感謝の言葉はもちろん凄くイイですけどぉ、素直に謝るキザキ様も悪くないですぅ!


「なんか変な音したけど大丈夫か?キュン!みたいな音」

「はいぃ、なんでもありませぇん!さぁ次行きましょう?キザキ様ぁ」

「あぁ、今何時だ。えーっと――」

「10時05分ですぅ」

「ありがとう、んーどうしよっかなぁ。よし、道具屋さんと薬屋さんに行こう」

ここからだと30分くらいで着くはず。


「はいぃ、行きましょうキザキ様ぁ。……えぇい!」

ハレイの腕に抱きつくリオナ。


「おい!なんでいちいちくっつくんだよ!タコかお前は!」

「はいぃ、タコ女ですぅ。離れませんよぉ?」

「うっとーしーやつだなぁ!グッ!……なんだこれ、全然離れない」

「私も進化してるんですよぉ?うふふっ」

「うぅ……」


道具屋と薬屋に行く事に決めた二人は目的地に向かい歩き始めた。

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