おでかけ part3
――カランコロン
「ふぅー美味しかったー」
「美味しかったねー」
店を出たハレイとサラは青空の下、満足げな顔でポンポンとお腹を叩いた。
「それじゃ行きましょうか」
「うん、いこー!」
これから行く市場は中央市場と言われていて、中央広場から西に向かって約1km真っ直ぐ伸びる大通りの両側にお店が連なっている。
いつも活気に満ちていて、人が居ない時間はない。
朝と昼間は市場、夜は屋台に変わり食事が摂れる。
「相変わらず混んでますねー」
「だねー、あ!これ見て!この髪飾りかわいいー!」
エステルス王国首都メンデル付近でしか採れないメンデルストーンで装飾された髪飾りを手に取って見せてきた。
「本当だ!これはかなり上等な髪飾りですね」
メンデルストーンは何の加工もせずに見ればただの石であるが、割ってみると中は虹色に光っている。
虹色の部分は石一つにつき僅かしか採れないが、その虹色の部分だけ集めて、再結合させ、形を整えれば立派な装飾品になる。
「でもやっぱり高いなー。」
「ですね、でもほら!こっちの髪飾りはどうですか?これなら俺にも払える額です」
そう言って手に取った髪飾りは金色に輝く宝石が装飾されていて、眩しいくらいだった。
「あぁ、ごめん!ハレイに買ってもらおうとか思ってた訳じゃないよ!似合うかなーって思っただけで、別に欲しいとかじゃないから!」
「そうでしたか、ははは」
めっちゃ欲しがってんじゃん!でもそんなお金無いしなー。
値札を見てみると、50000コールと書いてある。
50000コールがどれくらい高いのか。
参考として俺の給料は月150000コール。
変動もあるけど大体そのくらい。
自宅の家賃は50000コール。
食費30000コール。
残りは雑費と税金用の貯金と普通の貯金で、自由に使えるお金は少ししかない。
「ハレイ!あっち行こ!」
考え耽っている中、サラの声で現実に戻ってきた。
気を使ってくれたのだろうか。
手を引かれ、歩いていく。
…いつかあの髪飾りをプレゼントしよう。
そう心に決めたハレイであった。
しばらく市場を散策したハレイとサラであったが、メンデルキノコは見つからなかった。
今日も今日とて売り切れである。
「メンデルキノコ、ありませんでしたね」
「うん、まぁまた根気よく探してみるよ。わたしの料理を楽しみにしてくれてる人が一人ここに居る訳だから、やりがいがあるってものよ!うふふっ」
フフンッと言った具合で胸を張るサラ。
「サラさん…」
ハレイはサラの温かい笑顔に見惚れていた。
「おーい…あんまりジロジロみないでよ…ほら、行くよー」
そう言い、サラはハレイの腕を引っ張って歩き出した。