弔い合戦
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衛兵→用心棒に変更
しばらくひらひらと舞っていた蝙蝠が、1匹ヴァンの手に止まった。蝙蝠を使って敵の偵察をさせていたのだ。
「敵はここを守る用心棒が12人。というわけで・・・」
「1人6人だね、兄ちゃん!」
言うや否や、少年は敵の群れに飛び込んだ。とりあえず攻撃できそうなのは3人。
「お手並み拝見、だな」
3人がほぼ同時に少年に切りかかる。それを見た少年は飛びかかった勢いを完全に殺してバックステップをした。
「んのわっ!?」
人としてありえない動きに3人は剣を振り切り、体制を崩す。が、そのうちの1人が崩した体制のまま腰のナイフを抜いて少年に投げた。
少年は未だ空中に居る。
ーーーどうする。
「何見物してんだよ!」
瞬間、ヴァンの背後に用心棒が一人。上段に振りかぶった剣をそのまま振り下ろした。
その攻撃をヴァンはーーー
「うるせー、今いいとこなんだよ」
ーーー何もせずに喰らい、頭から胸までが真っ二つになった。
「うわああぁぁぁっ!化け物だあああっ!」
そんな叫びを上げる用心棒を無視して少年の戦闘に集中する。少年は、空中で体制を変えて、着地を待たずに跳んだ。
避けられないという想定のもと投げられたナイフはあえなく少年の下を抜け、ちょうどヴァンの頭の間を通り抜けた。
そして少年は1人の頭に着地、その首を折りつつ隣の1人の頭をナイフで刺した。そして残った一人ーーーナイフを投げた男ーーーは状況を察し、逃げようとするが、逃げた先に一瞬で回り込む少年。
「助け・・・」
「ごめんね」
いつの間にか持っていた衛兵の剣で綺麗に首を斬る。鮮血が飛び散り、少年の顔を濡らした。
「さて、あと9人・・・」
少年が振り向くと。
「あ、悪いこいつで最後だ」
ちょうど太刀を振り抜き、用心棒を両断するヴァン。その目には焦りや恐怖などはまったく浮かんでいない。ただ『襲われたから殺した』。そんな雰囲気が見て取れる。
ーーーっていうか強っ!この兄ちゃんが助けて欲しいってどんだけ強い敵と戦わされるのさ!
少年はあまりの強さに仲間になることを早くも後悔していた。
「いやあ、縦横無尽だな。本気になったら俺でも捉えられなさそうだ。よく分からなかったんだが、あの空中で跳んだやつどうやったんだ?」
「あ、うーん・・・じゃあ先に兄ちゃんが教えてよ。兄ちゃんどうやって戦うのさ。
ーーーちょうど一人残ってるし」
ガタン、とロッカーが揺れた。どうやら一人蝙蝠から隠れていたらしい。ヴァンが近付いて扉を開けてみると、中に居たごつい受付が殴りかかってきた。俺は難なく避け、余裕で少年と会話を続ける。
「いいのか?こいつも集落を滅ぼした1人だろ?」
「別にこんな下っ端に興味無いよ。・・・たぶん、もっと上に組織があるんだと思う。流石にオレ達もこんなのに全滅させられたりしない」
「ま、そりゃそーか。じゃあよく見とけよ。俺はな」
受付はヴァンをおしのけてロッカーから飛び出し、腰から剣を抜いて飛びかかった。そしてそのまま不慣れに剣を振り下ろし、ヴァンの左腕を切り裂いた。
「は、ははははっ!やったぞ!このままーーー」
「このまま、なんだ?」
大きく殴り飛ばされる受付。受付はヴァンから見て右側に吹き 飛んだ。
つまり。
「に、兄ちゃん、それ・・・」
「と、こういうわけだ。俺は吸血鬼なんだ」
ヴァンが受付に近づく。スラリと太刀を抜いた。美しく光る刃は、その切れ味を如実に表している。あまりの恐ろしさに受付は座り込んだまま後ずさる。しかし当然、立って歩くヴァンからは逃げられない。
しかし、その後退りは受付に一筋の希望を与えた。
戦いの中で机が壊れていたらしい。硬質な木でできているであろう、立派な机だ。受付はそれを目の前に立てる。ヴァンはそれを冷めた目で見ていた。
「は、ははっ!これは流石に斬れないだろう!」
「残念」
ヴァンは手のひらに太刀の刃を這わせた。幾筋の血が流れ、太刀の先まで進みーーー
太刀の周りを覆った。
「血盟ーーー『|血塗られし装備(ブラッディ・アームズ』」
斬。
男は机ごと両断され、呆然とした顔のまま、目の光を手放した。
「お前は死ねて、幸せかもな」
ヴァンは死体を見ることも無く、檻の中の子どもたちの解放を始めた。
誰もが目に恐怖の色を浮かべる中、狼の耳の少年だけはヴァンの目の優しさに気づいていた。