8.拾い物がついて来ようとしてるんですが?1
んで・・・・。
「結局こうなるのか・・・・。」
爽やかな出立の朝とは正反対に、どんよりと暗い表情をしたマクレーンは背後の男を振り返りながら溜息を吐いていた。
マクレーンの視線の先――。
小さな麻の袋をぽーんと何度も真上へ放り投げながら、旅人の上着を身に付けたアランが歩いていた。
「あの宿屋で働くんじゃなかったんですか?」
ぼそりと恨めしそうに言ってきたマクレーンにアランは。
「人手は足りてるって断られちゃってさ~。」
いや~参った参った、と頭に手を置いて笑った。
嘘をつけ。
マクレーンは胸中で毒吐きながら、ジト目でアランを見上げた。
実はマクレーンたちが宿屋を出る少し前に、アランは店主と話をしていた。
しかもその会話は、彼を未練たらしく引き止めようとする内容だった。
「良かったら、ここで働いてくれないかね?」
「すみません、先を急いでるので。」
「そうかい・・・・でも、気が変わったらいつでも来ておくれ。」
「はい、ありがとうございます。」
いつでも歓迎するよ、と言う宿屋の主人の言葉にアランは好青年らしく爽やかな笑顔を向けていた。
もちろん、盗み聞きするつもりは無かった。
聞こえてしまったのだ。
何故なら出発するまで宿屋の店主が、おいおいと泣きながらアランの腕に縋りつき「待ってるからね」と何度も叫んでいたからだった。
あのまま残ってくれれば良かったのに・・・・。
マクレーンは聞こえないように、小さく舌打ちした。
できれば僕の行く先には、この人を連れて行きたくない。
マクレーンは、ちらりと隣を歩く藍色の髪の青年を見上げながら胸中で溜息を吐いた。
自分の旅の目的を思い出しながら、なんとかしてこの青年と別れる方法は無いかと思案する。
そんなマクレーンに、アランが突然訊ねてきた。
「そういえば、マクレーンの旅の行き先はどこなんだ?」
その言葉にマクレーンは凍りついた。
今一番聞かれたくないその話題。
つつーと冷や汗を流しながら、マクレーンはぼそりと呟いた。
「聞いてどうするんですか?」
精一杯突き放した言い方をしたつもりだったが、アランにはさほど効かなかったらしい。
「う~ん、なんとなく」と笑顔で返されてしまった。
なんとも微妙なその言葉に、マクレーンは困った。
なんとなくってなんだ?なんとなくって!?
この場合「関係ないです」と言って突き放した方が良いのか、「秘密です」と言って誤魔化せばいいのか。
どちらも行き先を答える気は無いのだが。
どうしたもんかとマクレーンが悩んでいると。
「ま、何処でもいいけどな。」
とアランが早々に話を切り上げてしまった。
その言葉にマクレーンは再び固まった。
え、それってつまり・・・・。
「ついて来る気ですか?」
次の瞬間、絶叫ともいえるマクレーンの声が響き渡った。