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僕のおつかい  作者: 麻竹
第一章【出会い編】
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7.拾い物がバイトはじめました3

「あ、あの・・・アランさん。」


「ん、なんだ?」


「そ、その・・・僕、子供じゃないんですけど。」


「ん?」


マクレーンの言葉に、アランは食べかけの料理を持ったまま、キョトンとした目を向けてきた。

そしてマクレーンを見た後、口の中に残っていた食べ物をごくんと飲み込み。


「ああそうだな、子供にゃ見えないな。」


と、何を今更と言わんばかりの口調で答えてきた。


「へ?」


マクレーンはその言葉に思わず素っ頓狂な声を上げる。


「え?え?だ、だって子供だと思ってたんじゃ・・・・。」


「ん~?まあ俺よりは年下だと思うけどな、まあ幼い子供には見えないぞ。」


16、17歳ってところか?と、見事に年齢を当ててきたアランの言葉にマクレーンは目を瞠った。


「は、はい僕は16歳ですけ・・・ど。」


あっ、と思ったときにはつい声に出ていた。

しまった、といった顔をしながらマクレーンはアランから視線を逸らした。


16歳。


別段この世界では、16歳で一人旅をするのは珍しくもなんとも無い。

しかもこの世界では、子供は15歳で成人し職に就くのが当たり前なのだ。

故にマクレーンの狼狽振りは、年齢を言った事に対するものではなかった。


まずい、とマクレーンは思った。

これ以上この男に、素性を明かしたくは無いと思っていたからだ。

住んでいる場所も年齢も、本当は名前さえ教えたくはなかった。


しかしこの男と話をしていると、いつの間にかぽろっと出てしまう。


最善の注意を払っていたつもりなのに・・・・。


マクレーンは胸中で舌打ちした。

これ以上、自分に興味を持たれては堪ったものではない。

しかし、マクレーンの思いとは裏腹に、アランは嬉々として目を輝かせてこう言って来た。


「へえ~16歳か~俺の予想当たったな~。しかも年も近いしな。」


「え?」


「俺こう見えて18なんだぜ。」


「18歳!?」


「なんだよ、見えないってか?あ、もっと若く見えるとか?」


「いえ、もっと老けて……いえなんでもありません。」


ジト目で見つめてきたアランに、マクレーンは慌てて口を噤んだ。


見えない・・・25くらいかそれより上に見えた。


アランから視線を逸らしながら、マクレーンは胸中で呟いた。

藍色の髪に赤茶の瞳は、よくある組み合わせだ。

彼の顔は老け顔というよりは、大人っぽい顔立ちと言える。

しかも端正な顔立ち――。


切れ長の瞳。

すっと通った鼻梁。

薄い唇。

鋭角な顎。

体の作りは逞しく背もすらりと高い。


どこからどう見ても、りっぱな妙齢の大人。

そうマクレーンは勝手に認識していた。

しかし彼から聞いた年齢は、マクレーンと2つしか違わなかった。

その事にマクレーンは思わず驚いてしまった。


「なんだよ、やっぱりおっさんだと思ってたのか?」


まじまじと見つめてくるマクレーンに、アランは肩を竦めながらそう言ってきた。


「あ、いえ・・・。」


アランの言葉にマクレーンは、ぶんぶんと首を振って否定するが、アランは、ふう~んと疑いの眼差しを向けるばかり。


「う・・・すみません。」


「はは、いいさいつもの事だからな。」


アランの視線に耐えきれず、俯いて謝ってきたマクレーンにアランはくすりと苦笑を零した。

そんな遣り取りを誤魔化すべく、マクレーンは話題を変えようと顔を上げた。


「そ、そういえばアランさんは、こういう事よくするんですか?」


「ん?こういう事?」


「あ、あの食堂の仕事とか・・・・。」


「ああ、金がなくなった時とかによくな。実は俺、昔傭兵やっててさ、ほら最近平和だろ?仕事見つかんなくてさ。」


たははは、と頭に手を置いて笑うアランに、マクレーンはしめた!と瞳を輝かせた。


「そ、そうだったんですか、へえ~傭兵をね~。た、確かにこの辺りじゃ争いも殆ど無いですからね。」


「ああ、そうなんだよ。ま、平和なことは良い事なんだけどな、俺たちにとっちゃ、おまんまの食い上げなんだわこれが・・・・。」


はあ、と盛大な溜息を零すアランにマクレーンは、ぱあっと表情を明るくした。


「そ、そうですね、傭兵なんてここじゃあんまり見かけませんし、生活するのも大変ですよね。」


「ああ、そうなんだよな~最近じゃ、ろくな物食ってないんだ、もういっそのこと転職しようかなって思ってたりしてさ~。」


その言葉にマクレーンは身を乗り出した。


「そ、そうですよ、傭兵なんか辞めて転職すれば!そうだ、いっその事ここで働かせてもらえばいいんじゃないですか?」


お店の人も喜んでましたよ、そう言って瞳を輝かすマクレーンをアランは一瞬、無表情な顔で見つめた。

次いで、ふっと口元に笑みを作ると。


「そうだな~、それもいいかもなぁ~。」


マクレーンの顔を見ながら頷いた。


「そ、そうですよ、それがいいですよ!」


「ああそうだな。」


にこにこにこにこ。


アランからようやくその言葉を聞いたマクレーンは、お互いの意見が一致した!と内心喜ぶのであった。


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