23.北の大地は危険です!2
辺りは土煙がもうもうと上がりマクレーンの姿を隠してしまった。
ようやく地面に放り出されたアランは脱兎の如くマクレーンの元へと走る。
「う・・・。」
目の前に現れた光景に呻き声を上げた。
おびただしい数の矢が地面に突き刺さりアランの行く手を阻んでいた。
あまりの矢の多さにその中心にいるであろうマクレーンの姿が見えなかった。
「おやおやまあ・・・・。」
呆然と立ち竦むアランの背後から呆れたような声が聞こえてきた。
アランは鋭い目つきで振り返る。
と、目の前に現れた人物に一瞬呆けた。
目の前に現れたのは。
女だった。
栗毛色の長い巻き髪を頭の高い位置で一本に束ね。
ゆったりとした袖の白いシャツにレザーベストとレザーズボンといった狩人の衣装を纏った長身の女性がそこにいた。
女はつまらなさそうに腰に手を当てマクレーンのいた方を見ていた。
「拍子抜けだよまったく・・・・。」
女の呟きにアランはかっと目を見開くと鋭い眼光で女を睨んだ。
「貴様・・・・。」
「おや・・・・怒らせちゃったかな。」
女は恐がる様子も無く肩を竦めてみせるとそう言ってきた。
アランは無表情のまま手に持っていた剣を構える。
それを見た女は「おいおい止めてくれ」と大袈裟に手を肩の位置まで挙げて頭を振ってきた。
その悪びれる様子の無い女にアランの怒りは益々強くなる。
アランが女に向かって斬りつけようとしたその時――。
「はぁ・・・・相変わらず無茶するんだから・・・・。」
マクレーンの声が矢の中心から聞こえてきた。
驚いて振り返るアラン。
そこには、むくりと起き上がる無傷のマクレーンの姿があった。
驚愕に目を瞠っていると、マクレーンが矢を避けながらこちらに歩いてきた。
「もう無茶しないでください。アランさんはそんなに強く無いそうなんですからね。」
マクレーンは驚くアランの横まで来ると目の前の狩人の格好をした女に向かってそう言ってきた。
「おやそうかい?私の見たところじゃかなりの使い手だと思ったんだけどねぇ。」
女はアランを見ながら面白そうに言う。
「え?マ・・・マクレーンどうして?」
状況を把握しきれないアランが呆然と呟く。
マクレーンは「はぁ」と盛大な溜息を零すとアランにこう言ってきた。
「紹介します、僕の姉です。」
マクレーンはそう言って目の前の女を紹介してきたのだった。
たっぷり数十秒固まっていたアランは次の瞬間。
「えええええええええええええぇぇぇぇ!!!???」
盛大に叫んでいた。