deli
世界は未知に溢れていた
我々人族の祖は大いなる地に現れた。
神々が気まぐれにも我の画紙に絵具に彩られた五指を落とし、我ら人族は大きく2つの種族を増やした。
神は我ら純粋な人族をルヒと呼び、獣の一部が混じった人族をラヒと呼んだ。
二つの種族は神の名の下に共存し、数を増やしていった。
ある日、ルヒの青年がラヒの少女に怪我をさせた。
二つの種族は袂を別つことにした。己たちの「喜怒哀楽」という感情がわからなかったからだ。
ある日、神の言葉がわからなくなった。まるで音だけで構成された"モノ"になったのだ。
我らの祖は大いに混乱した。
不安から我らの祖は世界に散らばっていった。
創世神の時代の終わりである。
創世神は消える前に自らの手足の指から子供を作った。後の"神の十指"である。
彼らは大いなる地に舞い降り、世界に散らばって行った。
神々の時代である。ある女神は生命に加護を与えた。ある4つの腕を持つ神は武を加護に与えた。
ある長髪の痩せこけた神は死を加護を与えた。ある緑髪の男神は技術を加護にした。
ある神は魔を加護に与えた。
それぞれの神は己が加護を信仰の糧とした。
我らの祖達も姿を変えていた。
神父は話をやめて目の前に座り込んでいる俺の方を見た。
「デル、聞いているのですか?」
「とりあえず神はすごい奴だってわかったよ」
「はぁ、君はいつもそうですね。興味がないなら早く帰りなさい」
「いいじゃん、神父!俺と遊んでくれるんでしょ?」
「その神父と呼ぶのはやめなさい。私にはロベルトという名前があるのです」
ロベルト神父はビシッと指をさしてきた。
「だって、神父じゃん。もっと面白い話聞かせてよ神父」
「だから話を聞きたいなら教会に来なさい。あと私の名前はロベルトです」
ロベルト神父は呆れ顔で周りを見渡した。
「それにしても街道なのに話しかけてくるのが悪童のデルだけとは」
「なんだよ、俺じゃ不満なのか」
「ええ、このまま懺悔室に連れていかなければいけませんしね」
ロベルト神父はにっこりと笑いながら言った。
目が笑ってねぇじゃん!
「いたよ!つまみ食いしたデルだ!」
恰幅のいい女性が飛び出してきた。
「げ!見つかっちまった!」
「デル〜?」
神父の笑顔が引きつってきた
「ロ、ロ、ロベルト神父!また今度!」
俺は逃げ出した。