嘘つきの下手な嘘
今回は少し短めです。今回もごゆるりと。
一個前の話の最後を今日編集したので、ご覧になってくだされば、今回の話と繋がります。
いつも編集をたくさんして申し訳ございません。
学校が……学校の生徒が……狙われている!?
「それは、本当か!?」
「ああ、本当だよ。」
まさか、どうして……!?上級生にもそんな狙われるようなことをする人などいないはずだ。
しかも、「見つけ次第シメる」ということは、かなりのことをしたのだろう。だが、それほど派手なことをする人が学校にいるだろうか。
そんな人はいないはず……
いや、そういえば今日誰かに会ったような。
「そ、そんな、どうして?」
どうしても気になったようで、佳奈が男達に聞いた。
「お前らの学校の一年、村雨 裕翔とかいうヤツが、俺の仲間をボコったんだよ。つまり関係ないお前らはとばっちりを受けているということだな」
村雨……裕翔……?
一年……!?
そいつ一人のせいで私の普通の女子高生としての暮らしや佳奈の暮らしが邪魔されるというのか!?
「ふざけるな……!」
イライラして、そこらへんにあった電柱に拳を叩きつけた。男達と佳奈は震え上がって、情けない声を出していた。
「ひ、ひょえっ」
「クソッ……! いいか、私がその馬鹿の脳筋をボコっておく! だから学校の奴らには手を出すな! こいつや学校の奴らは関係ない!」
「決めるのは俺らじゃねぇ。上に言ってくれよ」
「チッ……」
一人のやんちゃ喧嘩馬鹿のせいでみんなが危険に晒されている。私はその喧嘩馬鹿に湧き上がるような腹ただしさを感じた。
「上の奴に会うことはできねぇか?」
「できるわけねぇだろ、馬鹿かお前」
「お前一回骨折られてみてぇか?」
「ごめんなさい」
「取り敢えずさっき私が言ったことを上の奴に言ってこい。要らないこと言ったら、その時は……骨の一本や二本、折られてもいい覚悟でな。」
「ひ、ひぃぃぃぃ……!」
「で、いつまでそこにいるつもりだよ。もう用はねぇ、さっさと帰れ」
「理不尽!!」
根性なしの男達を逃した後、佳奈の方向へ振り返った。
「……帰り、気をつけろよ。これからは遅くなり過ぎないようにな」
なんだか、もどかしい。知っているのに知らないふりをしないといけないのは。
そう思っていると、佳奈は少しだけ笑顔で、私にこう言った。
「あ、えと……ありがとうございました」
「えっ、あ、ああ……」
佳奈は素直過ぎる。ひねくれている私は、あまりこういうことを言われたこともなく、言われたとしてもろくな返事を返してこなかった。だから、返事が曖昧になってしまう。
「どうして、助けてくれたんですか?」
佳奈はまた返事に困る質問をした。一番の理由は大切な友達だからだ。
でもそれを話してはいけないので、それらしい答えをひねり出した。
「人助けの振りをして喧嘩するのが好きだからだ」
佳奈は、微妙な顔をしていた。
……そりゃあそうだよな。自分でもドン引きだ。何言ってんだ私。もしこれが本当なら最低じゃないか。
それから話すことも無くなり、沈黙が訪れる。なんだか急に気恥ずかしくなったのと、これ以上一緒にいても気まずいだけなので、彼女に背を向けて歩き始めた。
「じゃあな、せいぜい怪我なく頑張れよ」
そう言い残した。佳奈はさようなら、と言った。きっと、彼女はいつものように大きく手を振りながら、笑顔で言っているのだろう。
そうだ、佳奈。
お前はその姿が一番よく似合う。そして、その姿が私の一番好きなお前の姿だ。
だから、どうか。
「これからも無事でいろよ」
佳奈には聞こえないような小さな声で呟いて、私は家に帰った。
明日、学校で、必ず元凶である「村雨 裕翔」について調べなくてはいけない。元凶を潰せば、このようなトラブルなど最初からなかったかのように、平穏な暮らしが戻るだろう。
「まだ、番長としての自分とは完全にお別れできないな」
少しの自虐と呆れの混ざった苦笑いをしながら、独り言をこぼした。