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お人好しの親友

 私は急いでメイクを落とし、ウィッグを外した後、中学時代によく着ていた黒いパーカーとダメージジーンズに着替えた。


 今の私は、完全にあの荒れくれていた中学生の時の私。「普通の女子高生、篠原美咲」の影は無い。

 走って佳奈の元へと向かう。一秒でも早く着くよう、全速力で。



「カネ、ありがとよ」

「明日も持ってこいよ?三万だぞ、分かったな」

「……っ」


 男達は、まだ佳奈を囲んでいた。そして、一人の男が彼女から取ったお金を自分の財布に入れながらそう言った。

 佳奈は、普段の元気な様子からは想像もできないくらい、真っ青で泣きそうな顔になっていた。

 手が怒りで震える。



 もういい、もういいんだ。もう我慢しない。

 絶対に、あいつらを膝まづかしてやる……!



「おい、テメェら」


 怒りを混じらせた声に、男達がこちらを振り向く。それと同時に、佳奈も恐る恐るこちらを見た。


「汚ねぇ手でそいつに触んじゃねぇよ、クズ。」


 私は男達を見下す口調でそう言った。すると、男のうちの一人が私を睨めつけて私に怒鳴った。


「急に出てきて何言ってやがんだ!殴られてぇのか、あぁん!?」


 そいつは私を怖がらせるつもりなのだろうが、圧も一切無いので全然通用しない。その通用しない威嚇を必死にする姿に呆れてため息が出た。


「はぁ……取り敢えず、そこに跪け」

「ーあ?」


 その刹那、男の下腹部に、蹴りを当てる。


「ぐふっ……!」


 そいつは、自分のお腹を抑えて、地面に倒れた。


「お、お前……!」


 後ろにいた男二人が驚愕と怒りを混じえた顔をして、私に向かって殴りかかってくる。

 さて、どちらの男の拳が先に届くか。一瞬でそれを見抜く。


 先に来た片方を避け、もう片方の拳を手で受け止めた。拳を避けられた男はよろめく。

 私はそのタイミングを見計らい、鳩尾に膝蹴りを当てた。彼はそのまま、バランスを崩して倒れた。

 そして、受け止めた方の拳の男は、もう片方の手で私に殴りかかってきた。

 利き手でないせいか、それは、今まで見てきた物の中で一番と言っていいくらい遅かった。


 ポス、という音と共に私のお腹にその拳が当たる。当たった場所には、ほんの少しも痛みは無かった。


「残念だったな、雑魚。お前には力も足りねぇ」


 そのまま掴んだ手を引いて、バランスを取れなくさせる。これなら、絶対に避けられないはずだ。先ほどの奴と同じく鳩尾に拳を一発。


「おえぇっ……」


 そいつも地面に倒れ、今立っているのは私と佳奈だけになった。


「大丈夫か?」

「は、はい……」


 佳奈はただぽかん、としている。私はそんな彼女をほっといて、男三人に近寄った。


「おい、金を出せ。あの子から奪った分だけで済まされると思うなよ。これから奪おうとした三万もだ。早くしろ」

「ひ、ひぃっ……」

「ご、ごめんなさいッ!!」


 そいつらは怯えながら、私に必死に謝った。いい光景だ。だが私は、態度が気に入らなかった。


「謝るのは私じゃねぇ、あの子だ。早くあっちを向け!」

「ご、ごめんなさいぃぃ!」


 三人揃って膝ついて佳奈に謝る。その姿に、心がスカッとした。だが、それは佳奈の次の言葉で帳消しにされる。

 佳奈は戸惑いつつ、そっと口を開いた。





「そ、その、あんまり気にしてないし、大丈夫……」




「……は?」

「……え?」



 耳を疑った。きっと、男三人組も同じだろう。あんなに脅されたのに、怖がっていたのに、気にしてないだと!?


「そ、そんな曖昧な返事でどうするんだ!またこいつらお前に手を出すかもしれないぞ!?」

「え、ええと……それは困るかも……?」


 頭をポリポリと掻いている。呑気にも程があるだろ! ああもうめんどくさい……!


「はっきり言えよ!チッ、仕方ねぇな……!」


 佳奈には何を言っても無駄と判断して、男達に言うことにした。


「おいお前ら、次こいつに手を出したらタダじゃ済まさねぇからな! 今日の三倍は痛い目に遭わせてやる! 分かったらさっさと立ち去れ!」

「そ、そんなに怒らなくても……こんなに謝ってるんだし……」

「バカか! お前はバカなのかー!」


 いや知っていたが! そういう性格だったよな! 忘れていた自分がバカなのかもしれない!


「あーあ……」


 助けて損をしたというかなんというか……複雑な気分だ。私のメンタルが潰れたというか、気疲れしたというか……


「……」


 男達は何をどうすればいいか戸惑い、そのやり取りを黙って聞いていた。

 そりゃあそうだ。佳奈の言うことが予想外過ぎたのだから、思考が止まっても仕方ないだろう。

 少し冷静になった私は、ここで男達に大事なことを聞くことにした。



「そういえば、どうしてこの子を狙った?」



 それは、私が一番疑問に思っていたことだった。佳奈は偶然ぶつかったなどで狙われたのか、それとも……


「意図的に狙われた」のか。


 男達のうちの一人が口を開いた。


「知りたいなら教えてやる。こいつの通っている学校……富岡の連中は、俺らの通ってる弥生高校のトップに見つけ次第シメろっていう命令をされてるんだ」

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