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親友との和解

大変長らくお待たせしました、第二章です!

今回からは美咲と佳奈中心のお話になります!


ですが、それだけではなく、美咲の恋心についても少しずつ書いていければ良いなとも思っています。

 ーーピピピピッ。


「ん〜……」


 ーーピピピピピッ。


「うるせぇ……」


 ーーピピピピピッ、ピピピピピッ!


「うるせぇっつってんだろッ!! ……ッ!?」



 いつもの耳障りな目覚まし時計が私を起こす。その不快さにまた私の腕が勝手に動いた。だが、その瞬間に激痛が走り、腕を上げられず、目覚まし時計は壊されることなく朝を迎えた。


「いってぇな……顔はなんとか傷が治ったのにお次は腕かよ……」


 顔の腫れは治ったようだが、肩、背中、腹、腕……色々なところがズキズキと痛む。殴られたからだけではない。筋肉痛も含まれているのだろう。


「昨日久しぶりに暴れすぎたか……」


 動くたびに感じる痛みに耐えながら、学校の支度をし始めた。


 今日は、佳奈に会えるだろうか。


 昨日、佳奈に会えなかったことは私にとって少し……いいや、かなり寂しいことだったようだ。


 いつも私を見ると大きな声で挨拶をしてくれて、宿題見せてとおねだりしてくる。そして、何より学校でいつも一緒にいてくれる。そんな佳奈は、やはり何よりも大切な親友だ。


 ご飯を食べて、いつものメイクを済ませ、傷を包帯などで手当てして学校へ向かう。なるべく傷が目立たないよう、今日は半袖の制服の上からセーターを着ることにした。


 外に出ると、太陽が道路を明るく照らしていた。紫外線が強いのかもしれない。日焼け止めを塗っていないことを少し後悔する。そして、セーターを着たせいでかなり暑い。どうしてこういう日に限って気温が上がっているのか。確かに、もうすぐお祭りやプールの時期だ。だがつい最近まではそこまで暑くなかったはず。


「運が悪いな、今日は」



 そう言いながら、いつも佳奈と会う場所まで来た。





 だが、そこに彼女の姿はない。






「今日もまだ、体調が悪いのか」


 少し心配になる。佳奈は大丈夫なのだろうか。

 今すぐにでも彼女の家に行って「大丈夫か」と声を掛けたかったが、学校に遅刻してしまうので、放課後に行くことにした。



 六時間目のチャイムが鳴る。

 授業はいつも通り退屈だったが、それよりも、休み時間に元気に声をかけてくれる佳奈の存在がいない方が悲しかった。学校にいることが本当に無駄に思えてきてしまうくらい、佳奈の存在は私の中で大きいようだ。


 そう考えているうちに終礼が終わり、それと同時に私はクラスで一番早くに席を立ち、教室を出る。

 佳奈に早く会いたい思いで急いで彼女の家へ向かった。



「はぁ……はぁ……」


 息を切らしながら佳奈の家のインターホンを鳴らす。すると、しばらくしてから玄関が開いた。



「美……咲……」



 そこに立っていたのは、数日前見た時よりも明らかに痩せ細った佳奈だった。



「佳奈!? どうしたの!?」

「え、いや、美咲こそどうして……」

「私は、佳奈が心配で……! 」

「え……?」


 彼女は驚いた顔をした。どうしてだろう。私としては、友達なのだからこのくらい普通だと思っていたが……


「最近ちょっと様子がおかしい気もしてたの。何かあった? それとも、私が何か佳奈にしちゃったかな……」

「……それ、本気で言ってるの?」

「え?」

「美咲、私……」


 佳奈は、静かに、そしてゆっくり話し始めた。


「私ね、一昨日不良に絡まれたの。弥生高校の人達だったと思う」

「……そ、そうなの!? 大丈夫だった……?」


 それは知っている。私はその現場の一部始終を見ていたのだから。だが、不審に思われないよう驚いたフリをする。すると突然、佳奈の目つきが鋭いものになった。



「私知ってるんだよ。美咲がその現場を見てたこと……!」



 佳奈の言葉に私は酷く動揺する。

 まさか、見られていたのか……!?


「か、佳奈……」

「美咲がどこか行った後、ショートカットの同じ制服の人が助けてくれたから良かったけど……美咲はただ見て逃げて何もしてくれなかった……!」

「そ、それは……っ」



 佳奈は涙を浮かべながら声を捻り出す。本当は言いたい。

 私が佳奈を助けたそのショートカットの人なのだと。

 だがそれを言えば、不良や暴力嫌いの佳奈は私を嫌うかもしれない。なので、どうしたらいいものかと思考を巡らせる。


「たしかにあの場で止めてくれなんて無茶なことだよ、でも美咲は見てないふり知らないふりで、大丈夫だった?の一言もくれなかった……!」

「……!」


 最近様子がおかしかったのはそのことがあったからなのか……と納得する。どうやって誤魔化せばいいのだろうか……?


「美咲……どうしてあの時知らないふりしたの……?」


 必死に言い訳を捻り出す。私が元不良……いいや、番長であることを隠しつつ、彼女との関係を修復できる言い訳は……



「あ、あのね、実はそのショートカットの人は、私の中学校の時からの知り合いで……仲良いわけじゃないけど緊急事態って言って、あの時咄嗟に連絡して来てもらったんだ。


 でも佳奈はああいう人苦手だし、知り合いにああいう人がいるって言ったらちょっと嫌われてしまうんじゃないかな、と思っちゃって……」


「え、そ、そうなの!?」


 佳奈は驚いて声を上げる。良かった、信じてもらえたようだ。


「誤解させるようなことしてごめんね」

「だ、大丈夫! こちらこそごめんね、疑った上にあんなこと言っちゃって……」

「私も大丈夫。 だってそれくらい怖い思いしたってことだと思うし」

「美咲……ありがとう」

「学校、明日から来れそう?」


 そう言うと、佳奈は少し俯いて言った。


「実は……行けそうに、ないんだ」

「どうして?」

「私、不良さん達に絡まれてから、トラウマが蘇っちゃったみたいで……」

「ト、トラウマ……?」

「うん、中学生の時に同じようなことが、一回、あって……」


 どんどん顔色が悪くなり、言葉を詰まらせていく佳奈。それだけで、何があったのか、彼女がどれだけ怖い思いをしたかが伝わった。


「言わなくていいよ、だいたい分かった」

「ごめん、ね」

「大丈夫。 でも多分もうこの前みたいなことはないと思うよ」

「え?」

「私のその知り合いの人と、同じ学年の村雨って人が弥生高校を黙らせたんだって!」


 正確には、私と村雨なのだが。今日の帰り道に弥生高校の生徒は一人もいなかった。彼らを黙らせることは成功したのだろう。


「が、学校にそんな人たちがいるの……!?」

「大丈夫、先生達が見張ってるからあの人たちは私たちには手を出せないはずだし」


 私は一応担任の先生に見張られている。きっと村雨もそうなのだろう。

 ……裏では暴れ回ってます。すみません。


「だから安心して学校に来て大丈夫!何かあれば私に言ってくれたら、知り合いの子をすぐに呼ぶからね!」

「そっかぁ。ありがとう、美咲!」


 私がふふん、と得意げに言うと、彼女は久し振りに元気いっぱいの笑顔を見せてくれた。その笑顔は眩しくて、まるで向日葵のように可愛かった。




 ……私のしたいことが一つ分かった。

 それは、この笑顔を守ること。

 佳奈にはずっと笑っていて欲しい。彼女には笑顔が一番似合う。


 でももしこの先、彼女が私のせいで喧嘩などに巻き込まれるようなことがあったとしたら……?


それはあってはならない。

いや、そんなことになる前に必ず相手をぶっ飛ばす。

関係ない彼女に手出しはさせない。



そう心に誓った。

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