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いつも通りの朝

はじめまして。華色夢樹と申します。

部活動などで小説を書いてきましたが、ネットでこうして書くのは初めてです。

拙い文章の小説ではございますが、応援よろしくお願いします。

 ピピピピッ、ピピピピッと、不快な音が聞こえる。


「ん……」


 ピピピピッ、ピピピピッ!

 時間が経つにつれて、どんどん大きくなるその音は、朝が苦手な私を怒らせるには十分なくらいうるさかった。


「うるせぇえええ!」


 私の腕は勝手に動いた。音のする方へ一直線に。

 バキッ、という音を聞いて我に帰ると、新品だったはずの目覚まし時計が目の前で粉々になっていた。音は鳴り止んだが、もうこの時計は二度と目覚ましとしての機能も時計としての機能も果たせなくなってしまっただろう。


「またやっちまった……」


 入学式の日からほぼ毎日これだ。もう見慣れた光景に、呆れを混じらせた溜息をこぼす。


「あーあ……最悪な朝だ」


 重い体を起こし、ブレザーの制服に着替える。そして最後に、深紅に近い色の可愛いリボンを付けた。


「こんなことで落ち込んでられねぇ。今日も頑張らなくちゃな」


 気合いを入れるために、そう呟いた。


 リビングに行くと、おにぎり三つがテーブルの上に置かれていた。朝早くから仕事に行っている母が作ってくれたのだろう。母に感謝をしつつ椅子に座り、おにぎりを食べながら、テレビをつける。すると、朝のニュースが流れ始めた。


「〇〇市の学校内で暴力事件が発生しました。加害者は、男子中学生で、被害者はその同級生だったとのことです。ナイフを持ち、『金を出せ』と脅した挙句、それに応じなかったからと集団で暴行をした疑いが持たれています」


 ……暴力事件。それは、昔の私から見れば結構身近にあったものだった。

 毎日のように人と殴り合い、金を取り……今思えば最低な行為だ。


 中学生の頃私には、生意気だとつっかかってきて返り討ちに遭わせた部下や舎弟などはいたものの、何かと怖がられて気楽に話せる友達がいなかった。

 そんな私の元へ、喧嘩強さを利用しようと近寄ってきた女がいた。その女は、私に媚を売り、形だけの友達になった。


 だが目つきが悪いだとか、ガラの悪い番長だからという理由でよく人が離れて行く私にとっては、形だけでもとても嬉しかった。

 そんな友達に期待の眼差しで見られ、喧嘩をせがまれ、私はそんなことしたくないという自分の意思に反して、何度も人を殴った。

 彼女に嫌われたくないという思いから、必死に彼女の言いなりになった。


 だが、自分の気持ちに正直になろうと、高校で彼女から逃げることを決意した。

 そして、真面目で真っ当な道を進む姉を見て、普通の女子高生として幸せに過ごしたいと思った。

 だから、高校では元番長だった自分を捨てて、普通の女子高生を振舞うことにしたのだ。



 暴力とは無縁の、普通の女子高生に。



 ご飯を食べ終え、歯磨きをしてから顔を洗う。

 さて、ここからだ。 私の通っている、富岡高校までの登校ルートは、中学生の時の私を知っている人がたくさんいる。その人たちを騙すために、私は変装する。もう誰にも怖がられたくない。


  インターネットを用いて調べたナチュラルなデカ目メイク、小顔メイクを完璧にこなし、私の顔は、いかつい顔から可愛い顔になってる……はずだ。

 そして最後にセミロングのファッションウィッグ。自然な髪に近い物を購入したので、バレたことはない。


 これで、私……普通の女子高生、「篠原 美咲」は完成した。


「今日もバッチリだな。 お、もうこんな時間か」


 大きく伸びをする。そして、行ってきます、と誰もいない家の中にそう呟いて、学校に向かった。




「おはよー!」


 家を出て、学校までの通り道を歩いていると、可愛らしい雰囲気の少女が、耳の高さくらいの少し低めのツインテールを揺らしながら、手を振ってこっちへやってきた。

 彼女は、同じクラスで親友の佐藤佳奈。高校に入ってから初めて作った友達だった。

 いつも元気いっぱいで、予想外の行動でよく人を振り回す。最初は疲れるし迷惑だと思っていたが、今となってはもう慣れた。

 それどころか、今ではその元気さが愛おしいくらいだ。学校では「普通」を演じるあまり、大人しく過ごすことしかできなくてもどかしい思いをしている私に、はっちゃける理由をくれる彼女が大好きだ。

 ちなみに、よく物を家に忘れるし、大切な時にすごく呑気。


「おはよう、佳奈。今日は宿題、しっかりした?」

「え、ええと、うん! やったよ、現代文は!」

「現代文はって……数学は?」

「やってない」


 全く、佳奈はいつもこうだ。宿題を全部終わらせてくることなどほぼない。そして、挨拶の後にはいつものお決まりのセリフ。


「宿題写させてぇぇぇ!」

「知ってた……じゃあ今日帰りにコンビニの肉まん奢って! もー、これでもう今月10回目なんだから」

「おっけー!」


 彼女はありがとう〜、と言いながら私に抱きつく。

 あ〜、幸せだ。

 本当の友達とは良いものだとつくづく思う。


 彼女と他愛のない会話をしていると、あっという間に学校についた。一緒にクラスに入ると、色んな人が挨拶してくれる。


「美咲、おはよう。」

「おはよ!」


 一人一人に挨拶を返しながら自分の席に行こうとすると、自分の近くの席の女子二人組の会話が耳に入った。


「暴力とかあり得ないんですけど」

「不良って怖いね〜」


 それを聞いた時、私は少しドキッとしてしまい、その話をしていた女子二人の後ろで足を止めてしまった。


「あれ?美咲ちゃんじゃん!おはよ〜」

「お、おはよう。」

「おはよ〜!今話していたのって、今朝のニュースでやってた中学生暴力事件の話?」


 佳奈は彼女達にそう聞いた。すると彼女達はそうだよ、と頷いた。


「本当嫌だよね。そういう人とは絶対に友達になりたくないなぁ……」


 佳奈の、一般人から見れば普通の発言が、重りのように私の心にミシッ、とのしかかる。

 私は、何とか話を合わせようと、声を必死にひねり出す。そして、なんでもないように、佳奈達と同じような発言をした。


「うん。暴力とか、不良とか……本当にあり得ない。怖いし嫌だ。みんな気をつけようね。」


 自虐的な発言をしたせいで自分の言った言葉がグサグサと自分の胸に突き刺さる。


「いや、今の私はごく普通の女子高生。番長だった過去なんて無かったことにするの、落ち着いて」


 そう小さな声で自問自答して、胸の鋭い痛みを必死に押し殺しつつ、私は自分の席に着いた。佳奈も、私の右隣の席に座る。


 自分が元不良だなんて、口が裂けても言えない。もし私が元番長で暴力に頼りきりの生活をしていたと知れば、きっと佳奈やクラスメイトのみんなが私を遠ざけるようになるだろう。


 せっかくの努力して作った友達。絶対に失いたくない。だからこそ、私はこれからごく普通の女子高生でいるんだ。過去の自分を捨てて、消し去って。

 絶対に隠し通す。改めてそう決意した。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

この作品は筆者が厨二病丸出しで楽しく書いております。

これからも応援していただけると、とても嬉しいです!!

二話からもどうぞお楽しみください!

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