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より効率的に

 

「よし、馬を捕まえに行こう」


「はぁ?」


 俺の言葉にアホみたいな声で反応するのはトロイの奴だ。


「マルクよぉ、馬なら国お抱えの高級馬が居るじゃないか」


「トロイ、お前は全く持ってなにもわかってない……」


 はぁ? とでも言いたげな顔でトロイは俺を見てくる。

 今この顔にグーパンをぶち込んだらどれほど気持ちいいのだろうか。

 だがそこをグッと抑えて続ける。


「あんな気取った馬のどこがいいんだよ。

 誰が手綱持ったって『仰せのままに』みたいなスタイル。俺は気に食わん」


 そう。あのように躾がなされた馬なぞ、俺の琴線に一ミリも触れん。

 いい子ちゃんはいい子ちゃんとよろしくやればいいのだ。


「つまり、だ。俺が乗りたい馬は! 荒々しく! 野生を体現したかのような馬だ!

 俺以外は乗せないと言わんばかりの強固な主従関係こそ!男のロマン!」


 駄目だコイツ……と言って頭を抱えるトロイ。

 チッ、こいつなら俺の美学が分かると思ったが……


「まぁいい、さっさと行くぞ」


「は!? いやいやお前一人で行けよ。

 俺は今日はゆっくりゥェ、っておいおいおい!!」


 トロイの襟首を掴んで引きずっていく。

 コイツの索敵能力は使えるから連れて行くとしよう。それに……

 コイツが羨むような馬を捕まえて見せる。絶対にだ!


「休暇じゃねぇのかよぉぉぉぉぉ!」



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 よし! この辺りなら素晴らしくロマンに溢れた馬がいるだろう!!!


「お前さぁ、もう馬捕まえる気無いよな……」


「なんでだ?」


「なんでって……

 ここはフワッティの森、EXランク指定の場所だぞ!?」


「なんだ、怖いのか?」


「普通の、馬は、居ねぇって、言ってんの!」


「いやぁ居るだろ。森だし」


 また駄目だコイツと言って頭を抱えている。

 先程より悲壮感に溢れてるな。かわいそうに。


「さぁ、探すぞ」


「もういいよ……」


 諦めがついたのか立ち上がって()()の準備をするトロイ。

 そう、こいつが得意としているのは主に盗賊や斥候の能力、つまり索敵・偵察などの技術だ。

 それもかなり高レベルの、である。


 ぶつぶつと小さく呟くと、足元に魔法陣が広がる。

 その意味を知っている俺は息を潜め、その作業が終わるのを待つ。

 やがて魔法陣が消えると、


「南南東に大きな足音、これは六つ足か?

 それと北にこれまた大きい足音だが、こっちは四つ足で蹄もありそうな足音が聞こえた。

 馬っぽいってんなら北がお薦めだな。」


「よし、じゃあ北に行くか」


 そう、トロイは音を聞いていたのだ。

 先程の魔法には集音するための様々な術式が練られていたため、このような芸当が出来た。だがここまで正確な集音は、世界中探しても10人出来るか出来ないかって所だろう。

 コイツにとっては比較的簡単に行える部類だが、伊達に勇者の仲間をやってないって所だな。


 という訳で、北へと進んで行く。

 道中様々な魔物が襲ってくるが、まぁ雑魚だ。問題無い。


 そうやってしばらく進んで行くと突然――


『何者だ……先程からこの森を騒がしくしているお前は』


「ついにお出ましか」


「さっさと捕まえて帰ろうぜ~」


 声のする方向へ歩いていく。

 すると少し開けた場所に出た。そしてそこには、


『人間風情が……我が静かに眠らせてやろう』


「ふんっ、いいねぇ。

 その気概がいいってもんだ」


「なぁなぁマルク、ほんとにソイツでいいの?」


「こんなに活きがいい奴、馴らしがいがあるってもんじゃないか」


「だってよ、だってよ……そいつ……」


 トロイがそいつに向かって指を指しながら言う。

 おい、俺の未来の相棒に失礼だぞ。


「そいつ……









 アルパカじゃん」




 そう、そこに居たのは馬と呼ぶにはいささかモフモフで、体長こそ通常の馬より二回り程度大きいが、そのせいで余計気味悪さが増している。

 顔はあのかわいらしい顔だが、やけにキリッとしている。

 言うなれば強者の顔って奴だ。


 だがマルクは、


「馬だ」


「いやアルパ「馬だ」……じゃあいいんじゃないの、もう……」


『話は終わったか人間』


「ああ」


 トロイがなんか言っていたが、気にする程度の事ではない。

 乗れれば馬だ。そしてこいつは乗れる。アルp、馬だ。


「さぁ、俺の従順な馬となりな!!」


『人間風情が私を従えようなど未来永劫ありえぬ!

 それに私はアルp「馬だっつってんだろ!」ンバァ!?』


「グ、グーパン!? それは動物愛〇団体が黙っちゃいないぞ!」


 男は拳で語るもの、ってね。

 顔面に良い一発が入ったぜ。さて、どうだ?


『お前……私はお前らの話を待ったのに! 恥を知れい!』


「ふふ、いいねぇ、良いタフネスだ。

 俺の愛馬はこうでなくっちゃ」


『だから私はアルpぶべらぁ!!!!』


 殴る殴る殴る。

 コイツとはいい相棒になれそうだぜ。


「やべぇよ……アルパカの顔面グーパンしてる絵面ってあんなヤベェのかよ……」




 ~そして15分後~




「中々タフネスな奴だったよ。

 これからは、俺の相棒として頑張ってくれよな」


『はい、我が主』


「うわぁ……もうパンッパンに腫れてんじゃん……」


 馬は無事俺についてきてくれるようになった。

 拳で語った分、俺らの絆も存分に深まった事だろう。


「なっ!馬っ!」


 と気さくに体を叩けば、


『ハ!ハヒィ!』


 と気さくに返してくれる。

 いやぁ、いい関係が築けた。


「クソビビり倒してるやんけ」


 良い休暇だったなぁ!

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