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花は君のために  作者: 須田昆武
Season2~ラブコメ編
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ポートフォリオ /その2



 さーやちゃんが今までに作った衣装は何枚もあって、急いで着替えや撮影をしたけれど、1時間以上はかかってしまった。

 一通り撮影が終わると、さーやちゃんはカメラのデータを眺めながら満足そうに呟いた。



「いやー、いい写真が撮れたわ〜。もうこれでいいんじゃないかな」


「ちょっと!それで満足されては困るのよ!……アレは!?例のアレはまだなのではなくて!?」


「笑夢氏、お主も物好きよのう…………では、待ちに待った例のアレ……どエロい下着のお披露目といきましょうか…………!!雨音ー!次はこれ着てー!」



 さーやちゃんから渡された衣装は……下着、らしいけれど。普段私が着ているものとは何もかも違って、どう着たらいいのかもよく分からない。



「さーやちゃん。本当にこれ着るの……?」


「いいからいいから。それが大トリなんだって。頼むよ雨音〜」



 さーやちゃんに着方を教えてもらって、スタジオの隅の物陰で下着らしきものに着替える。あれ、思ったよりも着心地がいい。さーやちゃん、すごいなぁ。きっと生地とかにもこだわってるんだろうなぁ。




「言っておきますけど。笑夢は、下着のモデルをやっていたこともありますから。そんじょそこらの生ぬるいデザインじゃちっともエロスなど感じま………………な、なんじゃこりゃあ!!ど、どエロいっ!!!!」



 着替えて物陰から出ると、私の姿を目にした笑夢ちゃんが大声で叫んで倒れた。だ、大丈夫かな。




「決して、布面積が狭い訳ではないのに。どうしてこんなにエロいのかしら!?体に沿ったライン?それともこの繊細なレースの効果?ああ、よく分からないけど欲情を掻き立てられる素晴らしいデザインなのだわ!!!」


「いやぁ、やっぱあたし天才だなぁ。じゃ百合子ちゃん、撮影よろしく」


「なんだか、変な気持ちになりそうです……」



 百合子ちゃんが何回かシャッターを押して、これで撮影は全部おしまい。…………の、はずだったけれど。

 


「……みなさま、ちょっと提案があるのですけれど」



 笑夢ちゃんが真剣な表情で手を挙げて、撮影後の片付けを中断した。



「この上に、制服を着てみてはいかがでしょう」


「なになに?どうしたの笑夢ちゃん」



 さーやちゃんは笑夢ちゃんの話を興味深そうに聞いている。

 ? どういうことだろう。私は、着替えていいのかな……?



「いや、ふと思ったのですよ。確かにこの下着はどエロい。けれど、ただどエロいだけじゃなく、もっと可能性があるのではないかと。想像してみて下さい。何の変哲もないこの制服の下に、ちらりと。ちらりとこの下着が見えたら、どうでしょうか。清楚で可憐なあの子が、実は隠れてこんな破廉恥な下着を着ている、その事実こそが、エロスの極みなのではなくて!?」


「お……おお〜!確かにそれは、ヤバいかもしれない。そうか、全て見せるだけが表現じゃないってことね。目の付け所がいいじゃない!おし、それでいってみよー!」


「と、とりあえず私は服を着ていいんだね?よかった……」



 笑夢ちゃん曰く、先程着た下着のまま、制服に着替えて普通に写真を撮ればいいみたい。この写真、撮る必要あるのかな……?なんて思いながらも、素直にカメラの前に立つ。


 ……あれ、なんだろう。いつもと同じ制服なのに、ちょっと違和感。




「雨音お姉ちゃん、とても良い表情です。今、どんな気分ですか?」


「ど、どうしてだろう。さっきよりも、ちょっと恥ずかしいかもしれない」


「……想像してみてください。雨音お姉ちゃんがこんなにえっちな下着をつけてるなんて。みんなに知られたら、どうですか……?とぉーっても、恥ずかしいですよね?だから、このことは私たちだけの秘密ですよ。雨音お姉ちゃんのこんなに可愛いらしい姿は、笑夢だけのものです」


「はう……」


 

 笑夢ちゃんの言葉を聞いて、急に恥ずかしさが増してきた。そうだ、私、なんてものを着ているんだろう……!



「すごい、今までよりも写真の雰囲気が圧倒的に良い!でも、もうちょっと何か欲しいような……」


「沙亜耶さん…………場所を、変えましょう」


「百合子ちゃん?」


「場所を変えましょう。このスタジオで撮った写真には、日常感が足りないです。リビングなどの生活感のある場所で、ちらりと刺激的な下着が見える瞬間こそが至高なのでは」


「「それだッ!!!!!」」



 さーやちゃんと笑夢ちゃんは大きな声で叫んだ。

 わ、私は一体どうなってしまうの……!?




♢♢♢♢♢




「では、雨音お姉ちゃん。自分のお家だと思って、いつものようにくつろいでくださいね」


「くつろぐって言われても……」



 前にお泊まりさせてもらった時には、このお家のリビングで映画を見たり、ご飯を食べたり。くつろぐことはできていたと思う。

 ……けれど、今はそんな気分になれない。落ち着かなくて、早くここから逃げ出したい気持ちになっている。




「…………駄目です、先程よりも緊張して表情がこわばっています。沙亜耶さん、話しかけてリラックスさせてください」


「え〜?そんなこと言われても、百合子ちゃんよう、何て声かければいいの?雨音ー、肩の力抜いてー!リラックスリラックスー!」


「そういうのじゃなくて、日常会話的なものがいいと思います。簡単な質問とか、世間話でお願いします」


「簡単な…………えーと。じゃあ、お名前と年齢は?」


「花園雨音、17歳です」


「若いねぇ〜。こういう撮影は初めて?緊張してる?」


「はい……でも、一生懸命がんばります」


「いいねいいね〜。胸、けっこう大きいけど何カップ?」


「沙亜耶さん」


「やべっ。悪ふざけしんのバレた?百合子ちゃんごめんて〜、真面目にやるから」


「この一眼、動画も撮れますよ。動画にしましょうか」


「相手役はこの笑夢にお任せ下さい」


「まじ?じゃあうちは監督ね!」


「……? みんなどうしたの……?これから何が始まるの……?」




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