ポートフォリオ /その1
「雨音ー、ちょっといい〜?」
「どうしたの?さーやちゃん」
「実は、雨音にお願いがあって。うちの作った衣装を着て、ポートフォリオ用のモデルをやって欲しいんだ」
「ポートフォリオってなあに?」
「ポートフォリオは、自分の作品をまとめた作品集のこと!うちは被服の学校の試験を受けるんだけど、今まで作った服の写真を撮って一冊の本にして提出しないといけないの。で、その締切が近いから急いで作業してるってわけ」
「じゃあ、大事なお願いなんだね。いいよ、私にできることなら手伝うよ」
「助かる〜、ありがと〜!マジで時間が無いから、ばばーっと一気に撮っちゃいたいんだけどっ!早速、今日の放課後とか空いてる?」
「うん、空いてるよ」
「なら、今日の放課後さっそく写真室に行こう!写真部の子が、部室を貸してくれてさ。設備が揃ってて、スタジオみたいになってるから。そこで撮影会ね!」
「わかった」
「よっしゃあ!実は雨音に着てもらいたい、新作の渾身の衣装があるんだよね!さーや様自信作でもうこれでもかってほど、どエロい!自分の才能が恐ろしい程どエロい、最高の衣装よ!楽しみにしてて!あっ、もう選択科目の時間じゃん!じゃあ、頼んだよ!また後でねー!」
「ど…………さーやちゃん???」
さーやちゃんは大きな声で話し終えると、次の授業のために教室から走って出ていってしまった。
別の選択科目でこの教室に残っていた人たちは、さっきの話が聞こえたようで、ざわざわとどよめいている。さーやちゃんはとんでもない事を言っていたような気がするけれど、ど…………どういうことだろう。
♢♢♢♢♢
「……で、何よこのギャラリーは」
「今日の放課後、写真室で雨音さんのどエロい撮影会が始まるという噂が、学校中に広まっておりまして。みんな気になって見学しに来ちゃったみたいですね。佐々木も気になって来ました」
放課後。さーやちゃんと訪れた写真室には、大勢の男子生徒が集まっていた。みんなそわそわと落ち着かない感じで、カメラを構えている人たちもいる。
「帰れ帰れ!見せもんじゃねーぞ!あー!もうこれじゃ雨音脱がせらんないじゃん!どうしよ、時間もないしせっかくカメラマンの子も捕まえられたのに……あ、紹介するね。こちらはカメラ担当、写真部の百合子ちゃん」
「はじめまして……なんだか大変な事になってしまいましたね……」
「はじめまして。うん、そうみたい……」
「こいつら帰る気なさそうだし、部屋に鍵とかないし、普通に覗かれて盗撮されそう!あ〜、どうしよ。別のスタジオ借りる?でもお金かかるし、この辺に学校以外でちゃんとしたスタジオなんてないし……」
「さーやちゃん……スタジオって、こういう感じの場所のこと?」
「そう!背景があって、照明があって……あと、今回は撮影内容がアレだから、密室でプライバシーが守られる感じの。ないかなー、そんな都合のいい場所」
「スタジオ…………」
つい最近、似たような場所を見たことがある気がする。あれは確か……
♢♢♢♢♢
「雨音お姉ちゃんが笑夢を頼ってくれて嬉しいです!」
「ごめんね、笑夢ちゃん。いきなりお邪魔してしまって……」
笑夢ちゃんに連絡を取って、私とさーやちゃん、百合子ちゃんの3人は笑夢ちゃんの家にやってきた。
笑夢ちゃんのお父さんはカメラマンさんなので、お家には写真用のスタジオがある、ということを私は覚えていた。
笑夢ちゃんは突然のお願いにも関わらず快くスタジオを貸してくれて、さらに今回の撮影のお手伝いもしてくれることになった。
「いいのですよ、構わないのですよ!どうやら今回はどエ…………げふんげふん。どえらい大事な撮影会が行われるみたいじゃないですか。そういうことなら、朝日家のスタジオを存分にお使いください!」
「お邪魔します〜、うわー!やばい広い家。なんかうちの学校金持ち多すぎじゃない?やべー!ありがとね、笑夢ちゃん。スタジオ貸してくれて。ほんと助かる!」
スタジオを見たさーやちゃんは興奮気味に笑夢ちゃんにお礼を言って、握手の手を差し出した。笑夢ちゃんはその手を固く握って、ぶんぶんと振り回した。
「お礼は撮影会の写真で充分なのですよ!さあ、お兄ちゃんが仕事から帰って来る前に、さっさと始めてしまいましょう」
「百合子ちゃん、ここの機材の使い方は大丈夫そう?」
「うん……だいたい学校のスタジオと同じ……というか、それ以上に良い設備。これなら、良い写真が撮れそうです」
「よし。じゃあ、撮影会を始めよう!雨音、まずはこれに着替えて!ワンピースにジャケット!その後は、このオフショルのと……あ、小物とか借りてもいい?」
「存分にお使いください。バッグも靴も小物も、その辺のアパレルショップより豊富なのですよ」
「助かる〜まじで助かる〜!あ、渾身の衣装は最後ね。気分盛り上げてから撮ろ〜!じゃ、撮影会スタート〜!」




