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花は君のために  作者: 須田昆武
Season2~ラブコメ編
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文化祭 /その1



「おはようございます、相沢くん。どうやらお疲れですね?」


「まあ……」



 学校の廊下ですれ違った佐々木さんが、通りすがりに俺に声をかけてきた。俺は今、忙しいんだけど……佐々木さんは世間話がしたいらしい。



「そういえば、例の盗撮事件は解決したんですか?」


「しないまま文化祭に突入です……」


「まあ、そんなもんだろうと思いましたよ。君たち結構ポンコツですからね。もしかしたら、推理は根本から間違っていて……犯人は意外と、近くにいるのかもしれませんよ?」


「例えば?」


「そう、実はこの僕佐々木……あー!違います違います!例えですって!そんなゴミを見るような目で見ないで!そういう先入観がいけないと思うんですよ!!!僕は怪しくない!!!!……って、あれ?今日は朝日くんはいないんですね。せっかくの文化祭なのに」


「朝日は今日、仕事だって」


「へぇ、可哀想ですね。せっかく彼にぴったりな良いイベントがあったのに。……じゃーん、今年の目玉はコレ!『ミス&ミス(♂)コンテスト』!昨年のミスコンからパワーアップしました。女装すれば、男子も参加可能です。顔の良い朝日くんなら、優勝も狙えたと思うんですけどねぇ、残念です。飛び入り参加も可能ですよ。相沢くん、出ますか?」


「結構です」


「つれないなぁ。あ、じゃあ本命はこっちですか?『未成年の叫び』! 屋上の上から、日頃言えないことを大声で叫ぶんです。昨年の君たちの蛮行から生まれた企画なんですよ、コレ。この機会に、また愛の告白しときます?」


「しません」


「ノリ悪いですよー、相沢くん。せっかくの文化祭なんだから、楽しまないと」


「俺、今年も実行委員で……あと、クラスの方と委員会の方の雑用もあるし……佐々木さんに構ってる暇はないんだけど……」


「佐々木だって、暇じゃないです。今日は佐々木が1年で1番忙しい日ですからね。あちこちで司会しないといけないんです。あー、忙しっ!」


「やっと行ったか……」


「あっ!そういえば雨音さん見てません?彼女に急ぎの出演依頼があるんですけどっ!」


「……さっき校門のあたりで見ましたよ。2人、いました」


「相沢くん、疲れてるんですか?」


「俺は正常です……」



♢♢♢♢♢



「おー。これが噂の、雨音のお姉様か」


「本当に双子なんだねぇ。なんか似てる~」



 りょーちゃんとマキちゃんが、楽しそうに私たちを眺めている。隣の時音は、少し緊張した様子で丁寧に挨拶をした。



「初めまして。雨音の双子の姉の、花園時音です。雨音がいつもお世話になってます」


「そんなにかしこまらなくてもいいよ。あたしは了、でこっちがマキ」


「よろしくね~」


「よ、よろしくね」


「時音ちゃんって、もしかして人見知り?あはは、そんなに怖がらなくてもいいよぉ。はい、飴ちゃんあげる」


「ありがとう……あら?これはお店の広告?」



 時音がマキちゃんから受け取った飴には、小さな紙のチラシが付いてきた。りょーちゃんとマキちゃんのクラスの模擬店について書いてある。



「わあ!そうやってお菓子と一緒にチラシ配ってるんだね!かしこい!」


「こっちの方がただのチラシよりも受け取って貰えるからな。はい、雨音と、それからそっちの保護者の分」


「りょーちゃんありがとう。あっ、紹介忘れてたね。これは保護者というか、うちの執事の」


「雨音様、本日は私も休暇をいただいてプライベートで来ておりますので」


「そっかぁ……では、こちらは時音のただの付き添いの広瀬さんです」



 広瀬さんは、にこやかに挨拶した。今日は時音と二人で文化祭を回る予定だったのに。時音のことが心配な広瀬さんは、無理やり付いてきた。お休みなんだから、ちゃんと休めばいいのに。



「ただの付き添い、ねぇ」


「そっかそっかぁ~いいなぁ、イケメンの付き添いがいて。でも、こっちも負けてないもんね。今日のりょーちゃんは、超イケメンの王子様なんだから。羨ましくないもんね〜」



 たしかに、今日のりょーちゃんはいつもと違う格好をしていた。髪は短くて、きらきらした衣装を着て、絵本に出てくる王子様みたいだった。



「今日のりょーちゃん、本当にかっこいいね!すごく似合ってる!」


「男装したあたし、兄貴に似てるから褒められても複雑なんだけど……まあ、楽しんでもらえてるならそれでいいか。ありがとな」


「うちのクラスのカフェ来たら、他にも色々見れるよ〜。あ、七色の完成度もばっちりあげといたから。楽しみにしてて〜」


「うん、七色が何やるのか私も知らないから楽しみ!後で遊びに行くからね!」


「おー。じゃあ、また後でな」


「文化祭、楽しんでってね~」



 こうして二人と別れると、私たちは校舎の入口から次の目的地へ向かうことにした!あ、次どこへ行くかは決めてないんだった。



「よーし、これからどうしよう。時音、どこか行きたいところはある?」


「そうね……とりあえず、雨音のクラスに行ってみたい。雨音が何をやるのか、私聞かされてないんだもの。広瀬に色々相談してたのは知ってたけど……詳しいことは広瀬も教えてくれなくて」


「雨音様との秘密ですから」


「そうそう、内緒!」


「でも、広瀬が雨音の相談に乗るということは……きっと、執事喫茶とか。そういうコンセプトのものなのでしょうね」


「う…………そ、それはどうかな。ちょっと違うかもしれないよ!とりあえず行ってみよー!」



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