表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
花は君のために  作者: 須田konbu
Season2~ラブコメ編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

72/132

補習 /その1



「今日から夏休み!の、はずなんだけど……」



 私、花園雨音はいつものように学校の教室にいる。この前のテストの結果が帰ってきて、私はまたここに呼び出されてしまった。



「私は今年の夏も補習なんだって」


「雨音、この前のテストの点もあんま良くなかったもんな……」


「自己ベストは更新したと思うんだけど……あれっ、七色は何で学校にいるの?また出席日数足りなくて補習?」


「いや、出席日数は余裕で足りてる。もう前みたいにサボってないし。俺はこれから、別の教室で夏期講習。3年は受験があるから、大体みんな夏休みでも講習受けに来てると思う」


「そっかぁ。じゃあみんな、夏休みはもうしばらくお預けなんだね」


「そういうこと。で……講習も補習も終わって、夏休みが始まったらなんだけどさ。来週とか……その……」



「海!」



 忘れてないよ。私もずっと楽しみにしていたもの。



「早く行きたいね。今年は釣りじゃなくて、海で泳ぎたいな」


「そ、そうだな!今年こそ泳ぐぞ!」


「おー!」


「じゃあ、また後で!またな!補習がんばれよ!」


「七色も講習がんばってね~早く行かないと遅刻だよ~」



 七色は、大きく手を振って補習の教室から飛び出していった。その後すぐ、チャイムが鳴るのと同時くらいに、佐々木さんがぶつぶつと何かを言いながら教室に入ってきた。



「はぁ、いいですねぇ。リア充はイチャイチャイチャイチャと……少しくらい、場を弁えたらどうなんです?まったく……海とは。羨ましいですねぇ。まさか……水着イベントがあったりするんですか!?雨音さん、僕も連れて行ってください!!!」


「佐々木さん……佐々木さんは、講習に行かなくていいの?」


「僕は補習組なのでこの教室で合ってます。赤点3科目を舐めないでください」


「わぁ。私は4科目。私の勝ちだね」


「え、多い方が勝つんですか?そんな……」


「あ、先生来ちゃった。ほら、佐々木さんも座って座って!」


「お隣、失礼しますよっと」


『さて、お馬鹿ども~。って、今年も大体同じ顔ぶれだなぁ。3年にもなって赤点とは、お前たち受験生の自覚はあるのか~?さっさと補習始めるぞ~』



♢♢♢♢♢



 赤点の補習ではいつも、先生の解説を聞きながら課題をひたすらに解いているけれど。今年の補習の先生は、少し忙しいみたいで。課題を配り終わると「後は自習!」と言って、他の教室に行ってしまった。

 自習かぁ。私、自習は苦手なんだよね……眠くなってくる。


 少しうとうとしていると、私の方をじっと見てくる視線を感じた。うーん、これ、今日何回目だろう……何か用かなぁ。



「佐々木さん、今日はすごくこっち見てくるよね。私、顔にご飯つぶでもついてる?」


「そんなことはないですよ。僕が、特に理由もなく雨音さんをジロジロ眺めているだけです。気にしないでください」


「私は気になるなぁ……」


「…………」



 課題は全然進まなくて、補習の時間はゆっくり過ぎていく。相変わらず私はうとうとしていて、佐々木さんは何度もこちらをちらちら見てくる。変なの……まあいいや、気にしない。


 そろそろちゃんと課題を進めようと、ほっぺをつねって眠気を覚ましていたら。佐々木さんが、小さな声で話しかけてきた。



「雨音さん、少しだけ。ずっと聞きたかったこと、聞いてもいいですか?」


「変な質問はだめです」


「スリーサイズは聞きませんよ!安心してください!それはもう秘密裏に入手してるんで!そういう話じゃなくてですね」


「…………」



「雨音さん。僕たち昔、どこかで会ったことがありませんか?」




「……それは、変な質問?」



「…………はい、そうです!バレてしまいましたね。これは、ナンパの常套句です。雨音さん、いいですか。海でこう言われても、ホイホイついて行ってはいけませんよ。これ、お兄さんとのお約束です。しっかり覚えておいてくださいね!」


「はーい……?」


「…………」




♢♢♢♢♢



 今日の補習の時間が終わって。七色の講習が終わるのを待っている間、私はいつもの屋上に行くことにした。

 日陰と古いベンチのある屋上の端っこに向かうと、そこには遠くを眺めてぼうっとしている佐々木さんがいた。



「あれっ、佐々木さんがここにいるのは珍しいね。どうかしたの?」


「…………雨音さんは、よくここに来るんですか?」


「うん。お気に入りの場所」


「そうなんですね。……でも、ここからは海が見えない」


「確かに……もう少し上の建物とかなら見えるかな?坂の上とか、あの山の上の病院あたり?」


「そうです。ちょうどあのあたり。あそこからなら、遠くに海が見える」


「……佐々木さん、ちょっと元気ないよね?さっきのことと、何か関係ある?」


「いいえ。雨音さんとは、関係の無いことです」


「なら、いいんだけど……」


「…………」


「………………」


「ごめんなさい、変な空気にして。少しだけ、昔のことを思い出してしまって……駄目ですね。佐々木、今日はちょっと本調子じゃないです」


「………………」




「ねぇ。佐々木さんは海が好きなの?」


「…………何故、そう思ったんですか?」


「うーん、なんとなく?そんな気がしたから」


「そうですか。……僕、ずっと前に同じ質問をされたことがあるんです。答えは、『いいえ』ですよ。好きでも、嫌いでもないです。…………雨音さんは、海が好きなんですか?」


「うん、好きだよ。海は、きれいで楽しい場所だったから」


「……それはよかった」




「佐々木さん、やっぱり私に何か隠してるよね?」


「そんなことはないですよ。ただ、言うには少し恥ずかしいってだけで……」


「………………」


「懐かしい人のことを、思い出していたんです。それだけです」




「……その人は、きっと私に似ていたんだね」




「そうでしょ?」




 佐々木さんは、少し驚いたように目を見開いた。そして私をまたじっと見ると、目をゆっくりと横に逸らした。


 しばらくの沈黙の後。佐々木さんはふわりと笑って、静かに言葉を続けた。




「…………はい。僕は、その人のことを探しています」




「君によく似た、君ではない女の子を」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
読んでくださってありがとうございます。
ブクマや感想、評価等お待ちしております!

すだこんぶの作品一覧
小説家になろう 勝手にランキング
cont_access.php?citi_cont_id=646544098&s ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ