雪ちゃんと俺 /その3
「まずはいつも通り、七色くんの弱点を利用しようと思うのですが……七色くんの弱点は、このように沢山あります。今回はどのプランでいきましょう」
和三くんは『七色くんの弱点一覧』と書かれたノートを広げると、私に見せてくれました。中には、青葉くんの弱点がびっしりと書かれていて……それにしても、多いですね。私の方が絶対に強いです。勝てる気しかしない。
「カエルは昨日やったから~、今日はアレにしようぜ!ナメクジを服に入れるやつ」
「幸四郎くん……ナメクジは、かわいそうです。ナメクジがかわいそう」
「今日は晴れてるし、それは用意できねーな。……雪ちゃんもいるし、今回は単純に、殴り込みにいこーぜ!!!!!」
「脳筋の勇兄はいつもそればかり。もうちょっと戦略ってもんを考えて下さい。そうだな……こんなのはどうだろう」
「「賛成~」」
「では、雪ちゃんさんもついてきてください」
「はい。わ、私は何をすればいいのでしょう……?」
♢♢♢♢♢
家を出て徒歩10秒。隣のお家の目の前に着くと、ちょうど青葉くんが玄関から出てきたところでした。
「「「七色くーん、あーそぼーーー」」」
「うわっ、またお前らか。毎朝毎朝、ほんともうやめてくれよ」
「「「まあまあ。俺たちがいないとさみしいくせに」」」
「今日はよくハモるな……あれ?君は……」
「覚えてないとは言わせませんよ、青葉くん。渡瀬雪です。今日から私も、七色くんバスターズの一員です。よろしくお願いします」
「えっ、何それ。どういうこと? よ、よろしく…………」
「さて、挨拶も済んだところで。今日の嫌がらせは~~~~これだっ!!!!!いけ、幸四郎!!!!!」
「そいやっ!」
「ふえっ!?」
「!?」
突然……ふ、不意打ちで……!幸四郎くんに、スカートを捲られました!!!
「七色くんが雪ちゃんさんのパンチラに気を取られている隙に!!!勇兄、今だ!!!!!ナメクジ投入です!!!!!!」
「よっしゃ、今のうちにーーーー!あっ、だからナメクジはないんだってば!!!!アホ和三!!!!!!」
「そんな、それじゃこれはただのごほうびに!」
「…………」
「……………………み、見ましたね」
「なんか、すみません……」
「最悪……は、恥ずかしい…………」
「いやでも、渡瀬さん……下にスパッツ履いてたし。色気も何もないし……俺、何も気にしてないから。渡瀬さんも気にせず……」
「は?」
「えっ」
「乙女に向かって、色気も何もないとは。それ、侮辱してますよね」
「えっ、待って。そんなつもりは……!」
「ほんっと、何なの。最悪……青葉くんは、いつもそう。女子に対して、デリカシーの欠片もない……信じられない。あなたのことは、許せません!」
「「「いけー!雪ちゃん、かましてやれー!!!!」」」
「歯ぁ食いしばりなさい!!」
「待ってそれは痛いやつ!!!!一真、助け」
♢♢♢♢♢
玄関先が何やら騒がしいと思ったら。ちょうど雪ちゃんが七色に腹パンしている場面に遭遇した。七色は膝から崩れ落ちて倒れていく。うわー、痛そ。
「大丈夫かー、七色」
「大丈夫じゃない…………」
「「「任務完了」」」
弟たちは満足気な表情をしている。こいつらの仕業だな、まったく……ここは兄の俺から、ちゃんと注意してやらないとな。
「お前ら……遅刻すんなよー」
「「「はーい、行ってきまーす」」」
弟たちが元気に学校へ行ったところで。倒れている七色を起こそうと手を差し伸べると、その手を雪ちゃんに払われた。
「一真くん。そんな人のこと、構う必要ないので。さあ、行きましょう」
雪ちゃんは大層ご立腹のようだ。おそらく七色に余計なことを言われたんだろう。機嫌直るまで時間かかりそうだし……七色は放っておくか。
「ま、そういうことで。じゃーな、七色。遅刻すんなよー」
「痛くて動けない……………………」
強く生きろ、七色。




