雪ちゃんと俺 /その2
ランニングをして、鈴木家にお邪魔してシャワーをお借りして。そのまま制服に着替えて学校に向かうのが、私、渡瀬雪の近頃の日課です。
私もつい最近知ったのですが。実は一真くんには、弟が沢山いるんですよ!
「ウワーーーーッ!兄ちゃんがまた朝から女を連れ込んでシャワー浴びさせてるーーーーーッ!」
「おはようございます、勇二くん」
次男の勇二くんは、高校1年生。サッカーが得意で、元気な男の子です。
「雪ちゃんさん……一応思春期の男がたくさんいるんだから、脱衣所には鍵をかけた方がいいと思う」
「和三くんも、おはようございます。今から制服に着替えるので。少々お待ちください」
三男の和三くんは、中学3年生。受験生なので、今年は勉強が忙しいみたいです。
「あ、雪ちゃんだ。おはよ~。筋肉触らせて~」
「おはようございます、幸四郎くん。いいですよ、お好きにどうぞ」
四男の幸四郎くんは、小学5年生。人懐っこくて、とても可愛らしいです。
「うおお~~~~かたい~~~~見た目に反する硬さ」
「鍛えてますから」
「弟どもー、それから雪ちゃん。朝ごはんできたってさー」
「「「はーい」」」
「ふふ、かわいいなぁ」
さて、いつまでもバスタオル1枚ではいけませんね。早く着替えないと!
♢♢♢♢♢
食卓の上には、6人分の朝食。私と一真くんと、弟くんたちと、そして一真くんのお母様と一緒にご飯を食べます。
「お母様、いつも私の分まですみません」
「いいのよ。一人増えたところで、あんまり変わらないし」
「もうすぐさらに増えるしなー!」
「五人目の…………鈴木健五がね」
お母様は現在妊娠中のようで、お腹が大きく膨れています。あと数週間もすると、5人目の兄弟が生まれるみたいです!
「うおお~~~~蹴ってる~~~~こいつめっちゃ元気じゃん」
「いいですねぇ、大家族。賑やかです」
「単身赴任中の親父が帰ってきたら、もっと賑やかだぜ」
「今度お父様にも挨拶させてください」
「雪ちゃん……確実に外堀を埋めてくるわね。私、そういうの嫌いじゃないわ」
「…………?それでは、みなさん。朝ごはんにしましょう。いただきます!」
「「「「いただきまーす」」」」
「はい召し上がれー」
「ふふ、かわいいなぁ。あ、雪特製デザートのプロテインもありますよ~どうぞ~」
「デザート扱いなんだこれ……」
♢♢♢♢♢
「で、俺はこれから日課だ」
朝食を食べ、身支度を済ませた後。
一真くんはそう言って、自分の部屋へと行ってしまいました。
「…………? 和三くん、そういえば一真くんの日課って何なんでしょう」
「雪ちゃんさんは知らないのか……では、俺と一緒に覗いてみましょう」
「はい」
和三くんに誘われて一真くんのお部屋をこっそり覗くと。一真くんがお部屋のベランダを伝って、隣のお家へと入って行くのが見えました。
「不法侵入?いいんですかあれ?」
「いいんです。何故なら、あれは幼馴染で大親友だから」
「?」
一真くんのお部屋にこっそり入って、さらに隣のお家のお部屋を覗くと。……そこには、見覚えのあるあの人の姿が見えました。
「起きろ~七色~、朝だぞ~」
「うー……いやだ、まだ起きない……」
「お前、いい加減目覚まし時計で起きれるようになれよ。そんなんじゃ、雨音さんに捨てられるぞ?」
「はい……起きます…………」
「何ですかあれは……?」
「日課です。兄ちゃんは毎朝、隣の家の七色くんをああやって起こしにいきます。漫画とかでもよくあるシチュエーションでしょ?」
「確かに男女ではよくありますが……」
「兄ちゃんは七色くんを甘やかしすぎだ。あいつに構ってばっかり。俺たち弟はあれをなんとかしようと、日々あの手この手で裏工作を行っているのです。……雪ちゃんさんも加わりますか?」
「わ、私もですか?」
「雪ちゃんさん、兄ちゃんの彼女なんでしょ?あのままじゃ、兄ちゃんは彼女よりもあいつを優先してばかりですよ。それでもいいんですか?あいつに負けたみたいで、嫌でしょ?……それに、雪ちゃんさんがいれば、心強いです。こちらの戦力が増します。物理的な戦力が」
「お役に立てるかは分かりませんが……そうですね。あの人に負けるのは嫌です。本当に嫌。絶対に負けられない戦いがここにある」
「では、雪ちゃんさんも正式加入ということで。……勇兄!幸四郎!集合!!」
「「「我ら七色くんバスターズ!!!!!!!」」」
「今日も七色くんをやっつけるぞ!!!!」
「「「おー!!!!!」」」
「おー……?」
こうして私は、七色くんバスターズ(?)に加わることになったのでした。




