体育祭(スマ〇ラ) /その3
『ここからは決勝戦ということで。先程勝ち残った雨音選手と青葉選手の、1対1のデスマッチとなります!キャラクターの変更も認めますよ!さあ、どうします!』
「私はぽよちゃんで」
「雨音さん、そっちのピンクのぽよちゃんはうたってねむる方……まーいいか。七色はどうする?」
「俺はさっきと同じキツネ」
「それが妥当だな」
『はい、それでは!キャラクターも決まったところで、決勝戦スタートです!』
「……と、思いきや!しゅぴん!鈴木一真、参戦!!!!」
コントローラーを持ったカズが、急に試合に加わってきた。
「おい、何勝手に乱入してんだよカズ」
「すまんな、雨音さん。しかし、七色と一騎打ちじゃ、戦力差がありすぎるだろう。ここはハンデということで。俺も加わるぜ」
「……いいでしょう。誰が相手でも、私は負けません」
「俺を無視して進めるなよ!」
『……ということで!2対1で女子に立ち向かう、なんとも言えない構図ができてしまいました!鈴木選手のキャラクターは、緑の恐竜ですね!でっていう!はい、いいでしょう!それでは試合開始です!』
♢♢♢♢♢
「で、俺は二人から集中攻撃をくらって早々にやられて……カズと雨音の一騎打ちになっちゃったじゃん……何でだよカズ、俺の味方じゃないのかよ……」
カズと雨音は、俺を無視してハイレベルな戦いを繰り広げていた。そして相沢と朝日は、その試合を真剣に観戦している。
「鈴木って奴、強いな……」
「雨音さんも負けてないよ。これ、どっちが勝つんだろう。素人から見てもハイレベルな戦いだ」
『さて、雨音選手も鈴木選手も!残りの残機はわずか一つ!蓄積ダメージは雨音選手の方が上ですが……!』
「いや、油断はできない。このダメージだと、俺も『ねむる』を食らったら即死だ」
「一真くん、このゲームやり込んでるね。さっきのブロッキング、びっくりしたよ。あのタイミングで防がれるなんて思わなかった。すごい」
「ふっ、皮肉か?絶を使いこなしてる人に言われたくないね……!」
「素人には何のことかさっぱり分からない。朝日、これはどれくらい凄い戦いなの?」
「世界大会レベルだよ……!」
「そんなに……?」
「カズお前、強かったのか……いつも俺と対戦するときはこの恐竜、こんなに気持ち悪い動きしないのに……」
「気持ち悪いとか言うな!」
「隙あり!」
「うおっ、やべ!」
カズが油断した一瞬の隙をついて、雨音がとどめの一撃を仕掛けた。これはもう、雨音の勝ち――
「………………なんてな!」
「あっ!」
『雨音選手、ねむるを発動するも、鈴木選手はすかさず回避!雨音選手に大きな隙が生まれたところで……ふっとばし!お見事!優勝は鈴木一真選手です!!!!』
「負けました……」
「いい試合だった。ありがとう、雨音さん」
「こちらこそ、楽しかったよ。ありがとう一真くん」
二人は熱い握手を交わして、お互いを讃えている。
「よく分からないけど、とても熱い戦いだった……」
「いいものを見せてもらった」
相沢と朝日も、二人に拍手を送っている。何だろうこれ。俺、この空気についていけない。
『さて、優勝賞品の授与ですが……どうしましょう、青葉くん。この遊園地のペアチケット、普通に鈴木くんにあげちゃっていいですか?』
「なんかもう、チーム戦とかじゃなかったし……いいよ、カズが単独優勝ってことで……」
「じゃあ、俺が貰うぜ。んで、このチケットは俺から雨音さんにプレゼントだ」
「えっ?いいの?」
「ああ。その代わり、お願いがあって。……無理にとは言わないが、これは彼氏さんと……七色と一緒に行ってやってくれ。あいつ、雨音さんと一緒に楽しい思い出を沢山つくるんだって、いつもうるさいからさ。たまにはめいっぱい、構ってやってくれよな。……それと、俺。雨音さんには今までかなり迷惑をかけたから。ちゃんと謝らせて欲しい。すまなかった。反省してる」
「一真くん……そんな、私何も迷惑なんてかけられてないよ?」
「雨音さんが気付いてないだけで、色々とあったんだけど……まーいいか。そういう訳でさ。七色のこと、よろしく頼むぜ」
「うん!……あ、ごめんね昴くん、これ」
「まあ今回は、そういう流れだから気にしないで。青葉くんと行ってきなよ」
「僕も悔しいけど……あの試合を見せられた後だからな。今なら何でも許せる」
「では、七色。今度は、遊園地デートということで!」
「…………!おう!…………カズ、ありがとな!」
「いいってことよ」
やっぱりカズは俺の大親友だ。俺と雨音のことを思って、こうして調整してくれたんだな。よかった、これで俺は雨音と遊園地デートに――
「んー?でもこれって、どこの遊園地のチケット?」
「そりゃ近場のに決まって……えっ?」
渡されたチケットには、聞いたことのない遊園地の名前が書いてあった。ググって調べると……え、ここどこだよ。他県?
「……そこそこ遠いんだけど!」
「車が必要な距離だねぇ」
「主催者、まさか最初から分かってて……」
『いやー、うっかりうっかり。まさかね。まさか。そんな、遊園地デートとか。そうやって都合良くカップルをイチャイチャさせるような展開に、僕がすると思います?そんな都合のいいこと……する訳ないでしょ!くそが!!!リア充爆発しろ!!!!』
「最悪だ……」
「これ、どうしようねぇ」
「転売禁止って書いてあるし……うーん……」
「……まー、そういうことだ。ドンマイ七色(笑) じゃ、解散解散~」
こうして特に何かを得られる訳でもなく。俺たちの体育祭(?)は静かに幕を閉じた。




