体育祭(スマ〇ラ) /その2
「えっと、どれを選べばいいんだろう」
「好きなのでいいと思うよ。私はぽよちゃん」
「じゃあ俺はこれで」
『雨音さんはピンクの悪魔、相沢くんは電気ネズミですね。で、青葉くんがキツネ隊長で朝日くんは双子クライマーと。なるほどですね……！さて、一体どんな戦いが繰り広げられるのか！試合開始です！』
……俺が予想するに。雨音は、自分ではけっこう強いなんて言ってはいたものの。正直そんなに強いとは思えない。選んだキャラクターから判断しても、キツネの俺の方が有利な筈だ。そして、相沢って奴は初心者みたいだし。こいつも俺の敵ではない。
それらを踏まえて。この戦いを確実に制するために、俺が最初に倒すべき相手は――
「朝日圭、お前だ！」
「そう来ると思っていたさ！！」
『さあ！青葉選手、朝日選手に攻撃を仕掛ける！しかし、朝日選手はこれを読んでいました！華麗にかわしてカウンターを仕掛けます！』
「ちょ……ハメ技やめろ！やめて！！！」
「死ね、青葉七色！！！！」
「昴くん、攻撃はこう。そしてこれは上スマ」
「上スマ」
『試合は早くも混乱を極めております。雨音選手は相沢選手に操作のレクチャー中ですね。その横では、朝日選手がクライマーによるハメ技、通称ぱしぱしを青葉選手に仕掛ける！青葉選手、為す術もなくダメージが蓄積されていきます！……おおーっと！早くも一機失いました！』
「ぱしぱしは卑怯だろ！」
「はっ、引っかかる方が悪い！次はお前だ、相沢！」
「昴くん、それでは実践です。まずは圭くんのクライマー、掴まれると無限にぱしぱしされて怖いのですが……」
「うわっ、吸われた！」
「双子のうち、片方がいなくなるとぱしぱしできなくなるのです。さあ、どうぞ」
「Aボタン連打」
「地味に殴ってくるんじゃねー！くそ、隙がない！」
『雨音選手は朝日選手の双子クライマーの片方を吸い込んで分断させ、ぱしぱしを封印！弱体化しているうちに、すかさず相沢選手が攻撃を加えます！見事な連携だ！』
「さっきの恨み！！！」
「くそっ……！」
『おおっと！地味にダメージが蓄積されていたクライマーの片方を！画面に復帰した青葉選手が吹き飛ばしました！けれど、クライマーはあともう一体いますからね。まだ、残機は減らず！』
「また吸い込まれた！雨音さん、僕も反撃するので！それ、早く吐き出してください！」
「ごめんね、圭くん。……道連れです」
「ちょっ、雨音さん！？」
『なんと！雨音選手、さっき吸い込んだクライマーを吐き出さないまま！画面外に落ちていきました！雨音選手、朝日選手、同時に一機消失！』
「そんな火サスみたいな殺し方、やめてください！」
「えへへ……そう、崖の上から犯人と飛び降りるみたいな……ちょっとやってみたくて……」
「初心者には負けない！」
「あー……ごめんなさい雨音さん。やられちゃった」
「昴くん、なかなか上手だったよ。次は必殺技も使っていきましょう」
『青葉選手が相沢選手のネズミを撃墜！これでみなさんの残機があと3つに並びましたね！ここから先は、ダイジェストでお送りいたします！』
「七色、キツネさんの銃借りるね」
「うわっ、吸われた！」
「死ね、相沢昴！！！！」
「シールド、回避、掴み、投げ、上スマ」
「こいつ地味に強くてムカつく！！！」
「雨音、ハンマーはやめて、ハンマーはやめて」
「みんな倒します」
「七色、がんばれよ～」
『――さあ、大乱闘の末。最後に残ったのは……雨音選手と、青葉選手です！どちらも残りの残機は一つ！まさに一騎打ちです！』
「雨音さん、がんばって」
「ありがとう昴くん、私が勝つよ」
「雨音さん、ごめんなさい！僕、どっちも応援したくないんですけど！」
「ここで負けるわけにはいかない……！」
「いやー、それにしても雨音さんの、このキャラ性能の差を感じさせないプレイ。もしかして、相当強いんじゃ……七色、たぶんお前では勝てないぞ」
「ちょ、話しかけんなカズ！そんなはずは……！」
「ひっさーつ！」
「雨音、待ってちょっと！今殴られるとまずいって！うわっ、やられ」
「？」
「あれっ？」
『あー、これは………画面が固まりましたね』
「えぇー」
『これももう年代ものですから。現代では既にレトロゲーム！バグもご愛嬌です。さて、決着は……次回ということで！』
