修学旅行編(恋愛裁判)/その2
「心の……浮気…………?」
「そうだ七色。浮気には種類がある。体の浮気と、心の浮気。概要は……まあ、読んで字の如く、だな」
カズが何を言い出すかと思えば。心の浮気だって?そんな……どうしてそうなるんだよ。意味が分からない。
「雨音さんのことは、前々から怪しいと思っていたが……これはもう、擁護できない。アウトだよ。他の男にあんなに構って。それだけに留まらず、特別に意識する段階まで来てしまった。後は時間の問題だ。お前と雨音さんの関係は、いずれ破錠する。もう終わりだよ」
「違う、雨音は誰にでも優しいだけだ!それに、俺と雨音は付き合ってるんだ。こんなことでは簡単に……」
「壊れる時は一瞬だ。……どんな人間関係でも、さ」
「………………」
「うーん、どうします?相沢くん。君、急に有利になったみたいですよ?とりあえずまた、大衆の前で告白しときます?マイク貸しましょうか?」
「結構です……」
「つれないなぁ。あ、そうだ雨音さん。さっき買ってた水、僕に譲ってください。普通に喉が痛い」
「はわ…………佐々木さん駄目です。これは、昴くんのです」
「僕にはあんまり優しくないんですよねぇ……」
「……ほらな。お前は盲目になってただけだ。もう少し、冷静になった方がいい」
「そんなはずは……」
「今から正直に思ったことを言いますけど……青葉くん。君は、大人しく身を引いた方がいいんじゃないですかね?僕、同じクラスで二人を見ていて感じるんですけど。相沢くんと雨音さんはどこか似ているというか……性格の相性が、いいんだと思います。なんとなく、お似合いな気がするんですよ。なんとなくね」
「……俺も正直。お前と雨音さんはうまくいかないと思う。別れるんなら、とっとと別れた方がいい。そうやって雨音さんのことで、いちいち右往左往してさ。大変だろ?苦しいことも沢山あるだろ?…………俺、お前がそんな風に辛い思いをしなきゃいけない恋愛って、何か違うと思うよ」
「それでも、俺は…………」
「七色、お前どうしちゃったんだよ!全然、らしくないよ!そうやってしがみついて、楽しいか?」
カズ、どうしてそんなこと言うんだよ。俺、どうもしてないし、しがみついてなんかない!だって、雨音には俺が必要で、俺にも、雨音が必要で……
「相沢くんも何か一言、言っておきます?」
「…………いや、俺はいいよ。言いたいことは、あの時もう言ったから」
「ああ、修羅場った時の……なるほどね。それにしても……はぁ。嫌ですね。また重い空気ってやつですよ。雨音さん、全てあなたの責任ですからね?そうやって、はっきりしないから…………人の気持ちをちゃんと考えてないから、周りの人を苦しませてる。それに、気付いてますか?理解してるんですか?」
「ごめんなさい……私……よく、わからなくて…………」
「やめろよ!雨音は、何も悪くないだろ!」
何で雨音が責められないといけないんだ!それはおかしいだろ!雨音は、本当に何も分かってなくて……!
「お前な、いつまでそうやって」
「いい加減にしなよ、一真!」
了が、珍しく声を荒げた。辺りの空気が、しんと静まる。
「それに、みんなも。ちょっと落ち着けよ。……お前たちさ、勝手に騒ぎすぎじゃないか?要するに大事なのは、雨音の気持ちが本当はどこにあるのか、ってことと。これから二人が、お互いのことにどう向き合っていくのか……ってことだろ?それを外野たちがとやかく言ったところで、何になるっていうんだ?」
「……ああ。もっともな意見だ、了。じゃあ、もう一度聞くぜ、雨音さん」
「雨音さんは、本当に七色のことが好きなの?」
「私は………………」




