修学旅行編(修羅場)/その1
「ルーシィさん、大丈夫ですか?二人とも服、ちゃんと着てますか?ガチな朝チュンだったら僕、流石に空気読みますよ!」
相沢くんと雨音さんが就寝中の部屋へと訪れた僕こと佐々木Dと、ADのルーシィさんが目にしたものは……大変、衝撃的な光景でございました。
相沢くんと雨音さんが、向かい合って抱き枕って感じで……どうみてもこれ、ベッドインしてるじゃあないですか!とんでもなく朝チュン!佐々木はビビって今、物陰に隠れてます!現場からは以上です!
「佐々木、そんなに心配しなくても大丈夫だ。服はちゃんと着てる。二人とも、普通に寝ているだけだ」
「なーんだ。まあ、相沢くんと雨音さんですからね。そんなもんですよね。でも何でこの人たち同じベッドで寝てるんだろう。紛らわしい」
「七色が見たら発狂するだろうな」
そう言うと、ルーシィさんはベッドですやすや寝ている二人をカメラで撮影し始めました。現場の証拠写真という訳ですね。これはこれは、後で面白いことに使えそうな……おや?
「ルーシィさん、修学旅行にチェキ持ってきたんですか?それ……めちゃくちゃイケてますね!」
「だろう。その場で現像できて便利だ」
「このデジタルのご時世では、逆に不便な気もしますが……まあいいや。では、準備が整いました。寝起きドッキリ、いきますか。ルーシィさん、ドッキリ看板の方お願いします」
「任せろ」
「はい、カメラ回しまーす。では……『ドキドキ☆修学旅行でまさかの朝チュン!?寝起きドッキリカメラ!~相沢&雨音編~』よーい、アクション!」
♢♢♢♢♢
「おはようございます。相沢くん、起きて下さい!おはようございます……」
「んー……」
「ほら、よく見てください……隣…………隣…………」
「うん……?」
ターゲットの相沢くんは寝ぼけた顔で目をこすりながら言われるがまま素直に隣を見ました。
「…………」
状況が理解できてないみたいですね、寝起きが悪いのかな?
「……!? なんっであまねさんがここにうわいってぇなにこれうぁぁ」
相沢くんはようやく隣に雨音さんがいるのを把握して飛び起きると、その勢いで背後の壁に頭を打ち付けたのち、ベッドの外へと転がり落ちていきました。
「見事なコンボだな」
「相沢くん、おはようございます~」
「えっ、なにこれ。えっ、何?どういうこと?」
「「ドッキリ大成功~」」
僕とルーシィさんが笑顔でドッキリ看板を掲げると、相沢くんは安心したのかようやく落ち着きを取り戻したようです。
「……ドッキリ?あ、よかったぁ、なんだドッキリかぁ」
「はい、ドッキリです」
「こんなことのために雨音さんに迷惑かけないでくださいよ、心臓に悪い。ごめんなさい、雨音さん。佐々木さんの悪ふざけのせいでこんな……あれ?」
「…………」
雨音さんは横で僕たちがこんなに騒がしくしているのに全く起きる気配がありません。
「雨音は熟睡だな」
「まだおねむなんですね。雨音さんは別撮りにしましょう。一旦カメラ止めまーす。はいカット」
僕が機材チェックをしている間に、相沢くんはルーシィさんに詰め寄って色々と疑問を投げかけました。
「……?ドッキリって何?どの部分?」
「このカメラと看板」
「えっ、雨音さんは?」
「知らん」
「……?どういうこと?」
「相沢くん、君のために分かりやすく解説してあげたいのですが、それは不可能です。雨音さんのことは昨日の自分に聞いてください。詳しいことは僕たちにも分からない」
「えっ…………」
相沢くんは昨夜のことを思い出そうと真剣に頭を捻りながら、みるみると青ざめていきます。
「………………俺、何も覚えてないんですけど!」
「あー、そーいうパターンですか、なるほど。あ、雨音さん起きそうですね。カメラ回しまーす!はい、回りました!ではいきますか。……雨音さん、おはようございます。起きて下さい!おはようございます……」
「んー……おはようございます……?」
雨音さんは寝起きでも美少女な姿をキープしながら、ゆっくりと体を起こしました。そこへすかさずルーシィさんが、両手を前に構えハイタッチのポーズで雨音さんに声をかけます。
「雨音、ぐっもにいえ~い」
「るぅちゃん、ぐっもにいえ~い……んー?なにこれ?」
「「ドッキリ大成功~」」
「なんだぁ、ドッキリかぁ。あ、おはよう昴くん」
「……おはようございます」
「昴くん、ぐっもにいえ~い」
「いえ~い……」
ほのぼのとした良い画が撮れたところで、カチンコを鳴らすのが僕の役目です。カンカンッ!
「カット~。OKで~す。お疲れ様でした~」
「したー」
「はい!では解散!僕は部屋に戻ります。相沢くんも早く戻って準備しないと。朝食に遅れますよ?」
「……ここ俺たちの部屋じゃないの?」
「何寝ぼけてるんですか。雨音さんとルーシィさんの部屋に決まってるでしょ」
「どういうことなの……」




