修学旅行編(夜)/その3
――――本当に七色のことが好きなの?
一真くん、それは一体どういう……
「あっ、いやごめん。今のは忘れてくれ。次は大富豪だっけ。あ、UNOもあるのか!先にこっちしようぜ!」
「一真、お前……」
「なんだか不穏な空気だねぇ……」
「…………」
……どう答えればいいのか、分からなくて。
しばらく気まずい空気が続いてしまった。
すると……また、部屋の扉をノックする音が聞こえてきた。
「……るぅちゃん、戻ってきたのかな?」
「るぅなら鍵持ってるだろ。先生の見回りかも」
「あまねっち様子見お願い~、わたしたち先生にバレたら怒られちゃう~」
「俺は停学食らうぜ」
「……じゃあ、見てくるね」
扉を開けると、そこには。るぅちゃんじゃなくて――
「?」
♢♢♢♢♢
「雨音、誰だった?」
「りょーちゃん。紹介します、こちらは……昴くんと佐々木さん」
部屋に入ってきたのは、謎の男2人組。こいつらは確か、雨音と同じクラスだったような。
「いやー、どうもどうも。こんばんは、佐々木です。お邪魔しますよっと」
「何者だお前」
一真は警戒しているみたいだな。うーん、あたしも嫌な予感がする。
「放送部所属、解説の佐々木です。以後お見知りおきを。いや~、それにしても助かった。他に男子もいますし、ここなら安全ですね。僕にはもう面倒見きれない。無理!」
「…………?昴くん、どうしたの?いつもと少し様子が……とりあえず、昴くんもトランプやる?UNOがいい?」
「雨音さん…………………好き」
「!?」
男の片方が雨音にもたれかかったと思ったら……突然、雨音をベッドに押し倒した……!
「ちょっ、なんだこいつ!雨音、大丈夫か!?」
「はわわわわわわわわ」
雨音は……なんだこれ面白いな。とにかく取り乱して、はわわわ言ってる。
「あまねっちバグってる~変なの~おもしろ~い」
「えっ……いや何これ。どういうことなんだよ。俺、よく分かんないんだけど」
「解説しましょう!酔った相沢くんは大好きな雨音さんのもとへ夜這いに来たのでした!以上!ちなみに彼は、あくまでも酒の匂いで酔っただけですよ!僕のせいじゃない!相沢くんが間違えて僕の酒飲んだとか、決してそういうのじゃないんで!僕に責任はない!合法合法!」
「なるほど、お前のせいか」
「雨音さん、どうして俺のこと見てくれないの……?俺、こんなに雨音さんのこと好きなのに……」
「はわわわわわわわわわわわわわ」
「あっははっはっ、無理、状況がわけわかんなすぎる」
「何ツボってるんだよマキ!てかこれ、普通に笑い事じゃないだろ。お前な、いくら酔ってるからって好きな子襲うのは……」
「!?」
雨音と男を引き剥がそうとして今度は……一真がベッドに押し倒された……!
「何で俺!?!?!!」
「解説しましょう!酔った相沢くんは見境なく人を襲う狂人と化すのでした!以上!」
「(爆笑)」
「ぎゃー!!!!!やめろ!!!!!なんだこいつ!!!!!!笑ってないで助けてくれマキ!!!!!!助けて!!!!!了でもいいから!!!!!!」
「一真、ナイス囮。はい、雨音救出。大丈夫か?」
「はわ……!わ…………!?はわわっ!」
「まだバグってるな」
「ぎゃーーーーーー!!!!!マジ無理マジ無理、無理無理無理無理無理!!!!!俺そういう趣味ないからーーー!!!!!ほんとやめて!!!!!!助けて!!!!!!!!!!!ぎゃん!!!!!!」
「(爆笑)」
「解説しましょう!突然男に襲われる恐怖、そして絶望を!」
「はわわわわわわわ」
「………………」
混沌。と、表現すればいいのだろうか。
さっきまで平和にトランプで遊んでいただけなのに。どうしてこんなことに。
「どう収集つければいいんだ、これ?」
あたしには対処しきれない……。




