修学旅行編 /その3
引き続き、佐々木がお送りいたします。
午後。台湾の国際空港に到着した我々は、バスで移動して、そのまま観光というスケジュールになっています。
「まあ、定番って感じですね。初日は各クラスごとの行動で、取り立ててすごいことがある訳ではないのですが――」
クラスごとにこの観光コースは分かれておりまして。僕達は現在、博物院方面におります。そして……
「あの人は別のクラス、別のコースですから、この辺りにはいない。つまり、雨音さんを独り占めできるってことです。これは地味にアドですよ、相沢くん。こういう隙に攻めないと。単純接触効果って知ってます?」
「……佐々木さん、少しだけ相談に乗ってもらってもいいですか?」
「おっと、親密度イベントかな?いいですよ。何でしょう」
「…………あの人と雨音さん、最近本当に付き合っちゃったじゃないですか」
あー、なるほど。そういう話ですか。真面目な恋愛相談という……雨音さんは、離れた所でお友達とはしゃいでいますね。聞かれる心配はないと。はいはい、では佐々木も年上として。今回は真面目にお答え致しましょう。
「そうですね。まあ正直、時間の問題でしたからね」
「……それで、その。元々付き合ってるところから奪う前提ではいたんですけど。やっぱり、辛いというか。……俺、雨音さんにとって邪魔な存在なんじゃないかな、とか。雨音さんの幸せを考えるなら、潔く諦めるべきなんじゃないかな、とか。色々考えちゃって」
「でも、好きなんでしょう?」
「…………はい、それが一番厄介で。……俺、自分の恋愛感情に気が付かなければ、楽だったのに。そしたらずっと友達のままでも、苦しくなかったのになぁ」
……いかにも相沢くんらしい悩みですね。誰かを好きになることに、そんな罪悪感を感じる必要はないのに。自己評価が低いのが原因でしょうか。これは……ゆゆしき、問題ですね。なんっつって。えっ!なんつってっつっちゃった!?
~♪
おっと!危なく日常系アニメの空気に流されるとこでした。真面目に真面目に。
「男女間の友情は成立しない。これは、僕の個人的な考えです。例外はあるとは思いますけど……まあ。君と雨音さんの場合、遅かれ早かれですよ」
だからです。だから僕は、日常系萌えアニメに男はいらないと、この場を借りて主張させていただきます!推しキャラと男との間にフラグが立とうものなら、もう、佐々木、怒りのデスロードですよ!厄介なオタクですみませんね!
……はぁ、この世が美少女しか存在しない世界だったらいいのに。佐々木だって、美少女になって女の子とゆりゆりしたいです。雨音さんみたいな美少女と……ゆりゆららららゆるゆり……あっ、これは大事件になってしまいます。真面目に、真面目に。
「というか、雨音さんとてもかわいいですからね。しばらく友情の方でいけてたのが逆にびっくりですよ。……正直、僕もちょっとあの子のことは好きです」
「えっ……やめてください」
「えー、そこで引くー?ただのよくある恋バナじゃないですかー、やだー」
「…………とにかく、安心してください。健全な男子なら、基本的にみんなうっすら雨音さんのことが好きです。だって、美少女ですから。これはもう本能です。抗えません」
「そういうものなんですかね……」
「そうです。……そんな有象無象の男共が雨音さんに好意を向ける中、君が雨音さんと仲良くできているのは何故だと思いますか?」
「…………それは、友達だから」
「いえ、違います。雨音さんが多かれ少なかれ、君のことを気に入っているからです。雨音さん、ああ見えて結構極端ですよ?興味のない人には、話しかけすらしない。無理矢理絡んだ時の対応も、はっきり言って塩です。愛想笑いの塩対応。僕、よくやられます。あれ、かなり辛いです。……そうやって選別してるの、彼女も無自覚なんでしょうね!恐ろしい人だ!」
「それは、佐々木さんが普段、雨音さんに気持ち悪い絡み方をしてるせいなんじゃ……」
「とにかく!君は結構、惜しいとこまで来てると思うんです。何が足りないんだろう。優しすぎる?やっぱり、刺激が足りない?絶対こういう地味な人の方が浮気しないのに。女って、わがままですよね」
「はぁ……」
「昴くーん!ちょっといいー?」
「あ、ほら。雨音さんがお呼びですよ。とりあえず、行ってきたらどうなんです?」
「…………行ってきます」
「はい、行ってらっしゃーい」
「昴くん、これおいしいよ。はい、お裾分け」
「ありがとう、雨音さん」
「昴くん少し元気ない?大丈夫?」
「……大丈夫だよ。ごめんね、心配かけて。雨音さん、こんな俺にいつも優しくしてくれてありがとう。大好き」
「? どういたしまして。昴くんもいつも優しいよね?ありがとう」
さて、佐々木は影からお二人の様子を見守っていますよっと。
「それにしても、相沢くんの時折雨音さんを口説いてるあれ。意図的な作戦だと思ってたんですけど、まあよくもあんなに照れもせず……もしかして、無意識なんですかね?恐ろしい……そして、それに全く動じていない雨音さん……ひええ、恐ろしい……」
「彼女には、何が効くんでしょうね?もう寝取るくらいしかないんじゃないですか?エロ同人みたいに……エロ同人みたいに!!」




