修学旅行編 /その2
修学旅行初日、空港。
俺はカズと了とマキ……いつもの幼馴染たちに連れられて、集合場所へとやって来た。
……雨音はもう、自分のクラスのとこにいるのか。修学旅行中、一緒に行動できる機会もあんまりなさそうだな。うーん……。
「そういえば七色。ちゃんと酔い止め持ったか?俺、持ってきてるけど使うか?」
「カズ……俺、別に酔うわけではないんだけど……」
「何?お前、飛行機も駄目なの?」
「高所恐怖症だっけ~?相変わらずダサい~」
「いや、高い所は平気なんだけど……ふわっとするのは、ちょっと無理……」
「こいつ今度絶叫系に乗せようぜ」
「いいね」「賛成~」
「勘弁してください……」
♢♢♢♢♢
「私、飛行機乗るの初めて。ドキドキしちゃう」
「…………」
「俺も初めて。少し緊張してきた……」
……修学旅行初日。あ、今回のモノローグは僕です。佐々木です。よろしくお願いします。
で。空港にて、各クラスごと順番に搭乗という訳なのですが。こういう何気ない場面でこそ仕掛けがいがあるというものです。
相沢くんと雨音さんを、この修学旅行でいい感じにしてやろうじゃあないですか。……え?雨音さんには彼氏がいるって?まぁまぁ、そんなの気にする必要ないですよ。むしろ、色々拗れた方が面白いんじゃないですかね。Scho●lDaysみたいに……あ、それは流石に物騒すぎますね。ナイスボートは防ぎましょう。
さて、前置きはこれくらいにして。キューピッド佐々木、行きまーす!
「雨音さん。僕、高いところ駄目なので。相沢くんの隣の……僕の窓際の座席と交換してください。せっかくだから雨音さん、窓から景色見えた方がいいでしょう?僕、景色見える位置駄目です。恐怖で吐きます。泣きます。佐々木、絶対絶命です。助けてください」
「……かわいそうに。いいよ、交換しましょう」
「ありがとうございます。恩に着ます」
「えっ、それだと……」
そうです。相沢くん、君は雨音さんとフライトランデヴー。
……そして僕は!雨音さんが座る予定だった座席……つまり!女子たちが密集した中心部、あの座席に!移動という訳です!
「では、僕は女子のひしめくエリアに行きますね!アディオス!相沢くん!ヒント!吊り橋効果!」
「佐々木さん、女子の中に一人って……それ、逆に辛くないですか!大丈夫なんですか!?」
「大丈夫です!女子からの冷たい視線は、むしろご褒美です!ひゃっほう!」
「心配して損した!」
♢♢♢♢♢
「昴くん。飛行機は思ったよりも、安全な乗り物だったね。あっという間に着いちゃったし。景色も綺麗だった」
「うん、結構楽しかった。あと、飛行機ジャックとか……そういうのが無くて良かった」
「それは心配しすぎだよ」
「あ、佐々木さん。大丈夫でした?」
「大半の女子の連絡先はゲット出来ました」
「何やってるんだあんた」
「……七色、あっちの方で具合悪そうにしてる。大丈夫かなぁ」
「あの人、高所恐怖症なんじゃないかな?」
「…………佐々木さんは平気そうだね?」
「雨音さん、鋭いですね。僕のことを隅々までよく見ていらっしゃる。いやんえっち。はい。お察しのとおり、あれは嘘です。僕、高いところは大好きですよ。バンジージャンプもすぐ飛べるタイプです」
「どうしてそんな嘘を……?」
「相沢くんにはヒント言ったんだけどなぁ。まあ、飛行機程度では刺激が足りませんよね、分かります。うーん、どうしたものか」
「…………?」 「?」
「僕、これでも凄く暗躍してると思うんですけどね。こんな風に、いつも何やっても進展がない。二人とも、天然入ってるからなぁ」
佐々木、もうキューピッド飽きそうです。
この修学旅行で、何かこう、ToL●VEるがあればいいんですけど。
……あ!ちなみに僕は、古手川さん派です!




