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花は君のために  作者: 須田昆武
Season2~ラブコメ編
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バレンタイン準備編(前編)



 思い返してみれば。


 雨音には何度も告白しているし、初回は振られたけれど、それ以降は両思い、みたいな、そんな感じだったのは間違いないと思う。


 けれど……!けれども…………!



 よくよく考えると、そういえば何度好きといっても、その後はやんわりと「ごめんね」「忘れてね」と断られている気もするし、状況が状況だったから、付き合うとかそういう話はしていなかったし。


 俺はてっきり、両思いならもう彼氏彼女だと思ってたんだけど。雨音的にはそうではなかったらしい。



 ……まあ、でも。愛情の基盤はできてるんだし、後は一応、「付き合って下さい」「OK!」のやりとりをすればいいだけなんじゃないかなとは思うんだけど。


 けど……けど…………!



 雨音の様子を見ていて、ある一つの不安が浮き上がってきた。



 雨音の「好き」って、もしかして、「Love」じゃなくて、「Like」の方だったりする……?



 ははは、まさかな。それはない、たぶんそれはないはずだ。

 いくら雨音が八方美人で誰にでも優しいところがあるからって、そんな風に思っちゃ失礼だ。

 雨音とあんなに色々あった俺が、雨音の中ではそれほど特別な存在ではないかもしれないとか、いやー、そんなまさか。そんなことが……



 ………………あるかもしれない、雨音なら。



 やばい、どうしよう。

 つまり俺は、まだ雨音と付き合っているという状態ではない訳で。

 そして雨音のことを虎視眈々と狙う奴らが確実にいて。

 雨音の俺に対する気持ちは、正直まだちょっと確信が持てない雰囲気で。


 つまり、つまりは…………!



 今度のバレンタインデーに、俺は雨音から本命チョコを貰えない可能性がある、ということである!




♢♢♢♢♢




「…………雨音、知ってるか」


「?」


「この世にはバレンタインというイベントがあることを」


「お前、露骨にアピールしてきたな。キモい……」



 幼稚園からの幼なじみであたしの斜め後ろの席のやつ、青葉七色。どうやらあいつ、隣の席の雨音からバレンタインのチョコを貰いたいらしい。だとしても、そんな露骨なアピールするか普通。雨音が好きなのは分かるけど、今のはだいぶキモいな……?



「うるせー、(りょう)は黙ってろ。これは真剣な話なんだ」


「生意気言ってんじゃねーぞ七色!」


「痛い!ごめんなさい許して!」



 七色の指を関節とは逆方向にひねる。

 こいつは未だに力関係が分かっていないみたいだ。まったく。



「とにかく、雨音、来週にはバレンタインという重大な行事が」


「うん。知ってるよ? マキちゃんから教えてもらった」


「よしっ!でさ、俺、雨音の作ったチョコが欲しいんだけど……」


「うわこいつ、直接要求し始めた。引く……」


「雨音にははっきり言わないと伝わらないかもしれないだろ!」


「まあ、雨音は天然だからな」


「で…………その…………」


「うん、もちろん七色にあげるよ!」


「……よっしゃあ!」


「りょーちゃんにも!」


「ありがと、雨音。あたしも持ってくるから交換ね」


「うん!」


「…………えっ」


「後はマキちゃんと、さーやちゃんと、るぅちゃんと、あかねちゃんと、昴くんと、担任の先生と、お父様と、広瀬さんと、他にはお世話になったクラスの人と……」



 雨音の口からは、チョコをあげる予定の人々の大量の名前が……まあ、そうだろうな。普段お菓子を配って歩いてるマキからバレンタインを学習したんだ。そういう風になるだろうな。

 というか、バレンタインも知らずに育つってどういう環境にいたんだ。やっぱり雨音はとんだ天然記念物だな。


 さて、露骨にショックを受けているこいつ。どうしたものか。

 とりあえず、とどめでも刺しておくか。



「残念だったな、七色。お前は雨音の、お世話になった人リストの中の一人だ」


「嘘だろ、俺、そんなはずは……」


「――そんな感じでたくさん作らなきゃいけなくて。バレンタインって本当に大変なイベントなんだねぇ。あれ、七色どうしたの?」



 七色は何かをぶつぶつ言いながら机に突っ伏している。

 雨音はその様子を見て心配してるみたいだけど、こいつのこれは治らない持病みたいなもんだから気にしない方がいい。



「今構うとめんどくさいよこいつ。ほっときな」


「わかった」



 雨音はとても物分りがいい。




♢♢♢♢♢




「…………時音」


「どうしたの、雨音。少し疲れてる?」


「んー、疲れてるんじゃなくて、なんというか……」


「学校で何かあったの?」


「……うん、学校のことなんだけど」



 雨音は毎日、病院にいる私のお見舞いに来てくれている。

 いつもの雨音は元気だけが取り柄なんだけど……最近は少し元気じゃないみたい。

 まあ、大体の原因は。あの人のことでしょうね。



「七色が、最近ちょっと…………すごく不自然というか、妙に優しいというか……様子が変で、しつこく構ってくるというか……」


「あらあら」


「……私、どうしたらいいのか分からなくて」


「ふふ、楽しそうね」


「楽しいとはまた違くて……んー……」


「明日はバレンタインデーでしょ? 今日は早く帰って準備しないと」


「うん、そうなんだけど……」


「雨音、そういうお悩みはね。実は相談するのにとてもいい人がいるの」


「?」


「うんうん、後は私から連絡しておくから。大丈夫、心配しないで!」



 かわいい双子の妹の恋だもの。

 私も少しくらいは応援しないとね!



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