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花は君のために  作者: 須田昆武
Season2~ラブコメ編
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ハロウィーンより愛を込めて /その1



「雨音、トリックオアトリート!」


「?」


 さーやちゃんが私に向かって元気に何かの挨拶をしている。トリックオアトリート……という言葉が、たぶん英語なのはわかる。


 制服の上にローブを羽織ったさーやちゃんの今日の姿は、まるで魔法使いみたいだ。

 


「お菓子持ってないの?じゃあ、イタズラだな〜!それっ!今日1日、さーや様特製のそれをつけて過ごすのじゃ!」



 さーやちゃんはそう言うと、突然私の頭にふわふわの何かをつけた。触って確認すると、頭の上に三角形の耳が二つある。



「これは猫耳のカチューシャ?」


「正解っ!しかも雨音のは特別製〜!なんとその猫耳は、脳波を読み取って感情に合わせて動くのだ!科学部と被服部の奇跡のコラボだよ!」


「すごいねぇ、これ。ぴょこぴょこ動いてる。でも授業中につけてたら先生に怒られないかな」


「大丈夫大丈夫!お菓子をくれなかった大勢の生徒と、一部の先生たちにも普通の猫耳を既につけてあるから。みんなでつければ怖くない、だよ〜」



 さーやちゃんがそう言って視線を向けた先には、佐々木さんと昴くんがいた。二人とも黒のシンプルな猫耳が頭についている。



「僕と相沢くんもさっきやられました」


「凄く恥ずかしい……」


「わあ、みんなおそろいだね」


「お菓子なんて普段から持ち歩いてる訳ないじゃないですか。腹ペコの女子高生じゃないんだから」



 佐々木さんは少し不満そうな顔で、さーやちゃんに文句を言った。



「でも朝日圭は回避したよ〜?」


「……こういう日は先回りしてお菓子でも渡しておかないと、どんなイタズラをされるか分かったもんじゃないからな。雨音さんも危険なので、護身用に飴玉くらいは持っておいた方がいいですよ。僕のを分けてあげます」



 圭くんはそう言うと、私の手の上にカラフルな包み紙のキャンディを沢山乗せた。



「こんなにいいの?ありがとう」


「それ、雨音さんが沙亜耶さんのターゲットにされる前に渡してあげれば良かったのに……」


「僕は賢いからな。最善の選択をしたまでだ」


「雨音、おはよう。Trick or Treat」



 今度はるぅちゃんが本場の発音であいさつをしながら、教室に入ってきた。



「あ、るぅちゃんおはよう。えっと、お菓子を渡せばいいのかな?はいどうぞ」


「飴か……ありがとう…………チッ、誰だ雨音に入れ知恵した奴は。せっかく驚かせようと、静電気でバチッとなるタイプのガム型の玩具を持ってきたのに。おい佐々木、Trick or Treatだ」


「嫌ですよバチッとなるの分かってて触るのはっ!あっ、問答無用で押し付けてくる!痛っ!思ったより痛いっ!」


「次はお前だ相沢。静電気がチャージされるまでしばらく待て」


「嫌だな……バチッとされるのを分かってて待つのは……」


「ふふっ、今日は何か楽しいお祭りの日なんだね?」



 私がさーやちゃんにそう聞くと、さーやちゃんは色々な人から貰ったらしいお菓子をもぐもぐと食べながら答えた。



「雨音はハロウィンよく分かってない感じか〜。そういや雨音は去年のこの時期、学校休みがちだったもんね。うちの学校は校則も緩いしこんな感じで、校内でも好きに仮装してバカ騒ぎしてるよ〜」


「放課後には体育館でハロウィンパーティーもやりますよ。もちろん佐々木が実況担当です。今年は浪人中にクラブ通いしてDJに目覚めた司くんが、OB兼DJとしてイベントを盛り上げに来てくれます」


「大丈夫なんですかその人?」


「二浪するでしょうね。……相沢くんも雨音さんも、宜しければ今日の放課後イベントに参加してはいかがですか?お菓子食べ放題で」


「駄目だよ、あまねっち」



 そう言って佐々木さんの言葉を遮ったのは、大きなお菓子のカゴを持ったマキちゃんだった。



「マキちゃん……?マキちゃんがこっちの教室に来るのは珍しいね?」


「ちょっと用があってね。今日の放課後はわたしがあまねっちのこと借りるから、みんな余計なお誘いは控えてね。お詫びにお菓子も配っておくね〜、ほら、受け取って。てわけであまねっち、今日の放課後はわたしとあそぼ〜」


「? いいよー」


「……僕たち、マキさんに牽制されてるみたいですね。何か悪いことしたっけ?」


「そんなんじゃないよぉ。ただ、みんながハロウィンで馬鹿みたいに浮かれてる間に、彼氏持ち同士恋バナでもしようと思っただけ〜。非リアどもはパーティーを楽しむといいよぉ〜」


「言葉の節々に刺がある!本物の陽キャに愛のない罵倒をされるのは佐々木も辛いです!」


「愛がないと言われるのは心外だなぁ。わたしは誰よりも、愛に溢れる女の子だよ〜?」


「……マキ、じゃあ今年は街のハロウィンも行かないのか?」



 教室のドアから覗き込むように、りょーちゃんがマキちゃんに声をかける。りょーちゃんも今日はこっちの教室に遊びに来たみたい。



「うん、ごめんね〜りょーちゃん。りょーちゃんも、気をつけて楽しんできてね」


「街のハロウィンかぁ、いいなー。うちはそっちの方行きたいかも。本格的な衣装作ったし、大勢に見せびらかしたいもん!ついでに出会いもあるかも?」


「やはり男漁りか……いつ出発する?アタシも同行する」


「おっ、いい食いつき!じゃあ、りょーちゃんとうちとるぅちゃんで街のハロウィンに行こうよ!うちが放課後までに、二人に合いそうな衣装のストック探しておくから!」


「一人なら、行くのやめようと思ってたんだ。さーやとるぅが居るなら心強いよ」



 こうして、りょーちゃん・さーやちゃん・るぅちゃんは街のはろうぃんへ。私とマキちゃんは初めて二人だけで一緒に遊ぶことになりました。



「えー?御三方は繁華街のハロウィンなんて、パリピしか集まらないような場所に行くんですか?物騒ですよ?大人しく校内のイベントで我慢しとけばいいのに。ねえ相沢くん」


「みんな受験勉強はしなくていいの……?」



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