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花は君のために  作者: 須田昆武
Season2~ラブコメ編
103/132

これから初恋の話をしよう /その2




「カズくんの初恋話、聞いたことないかも〜」


「あたしも初耳」



 幼馴染二人は、興味深そうに俺の初恋話に食いついた。それもそのはず、俺はこの話題を今まで積極的に避けてきたからだ。その理由は……まあ、この後すぐに分かる。




「マキにも了にも、言うつもりは無かったからな。でもこんな機会ないし、観念して話すよ。俺の初恋…………それは、俺が2歳か3歳くらいの頃のことだった。俺の家のすぐ隣には、俺と同い年くらいのかわいい女の子が住んでいて――」


「ちょっと待て、もうオチが読めたぞ」


「そう。先にオチを説明しておくと、その女の子の正体は当時のナナちゃんこと青葉七色だ!」


「なんだ、めちゃくちゃつまんない話じゃん〜」


「つまらないとは何だ!これは幼い頃の俺にとって重大な出来事だぞ!昔からずっと女の子だと思ってた初恋の相手が男だったんだから!俺が七色が男だと理解したのは小学2年生頃だから、その間ずっと――」


「逆にそれまで気づかなかったのかお前は?」


「全然気づかなかった。それにはまりちゃん……七色の母親の並々ならぬ努力が関係している。お前ら幼稚園の頃から七色と一緒だから、あいつの幼少期の姿は知っているだろう?」


「よく覚えてる」


「かわいい服着て髪も長くて、超かわいかった〜」


「そう!当時のまりちゃんは、女の子用の子供服を七色に着せていた。何故なら、男の子用よりも女の子用の方が可愛かったからだ!ノリで生きてるまりちゃんの行動に、深い意味などない。ただ、可愛かったから着せていたのだ!ついでに七色はハサミを怖がって、髪を切りたがらなかった。だから、髪も女の子みたいに伸ばしていた。それが、小学校入学前まで続いた」


「文化祭の時の女装は、やけにしっくりきてたよねぇ。スカートで座る時なんかは、足閉じて綺麗に座るし。その辺の女子より立ち振る舞いがちゃんとしてた。やっぱり、子供の頃ので慣れてるから?」


「あまりにも違和感がなくて、客にも好評だったしな」


「了ちゃんの王子様ほどじゃないけどね〜」


「話を戻すぞ。まりちゃんも、早い段階で男の子の格好に戻そうとは思っていたらしい。けれど、まりちゃんは気がついてしまった。隣に住んでいる幼い俺が、ナナちゃんに恋心を抱いていることに……!そのことに何故か罪悪感を感じたまりちゃんは、後に引けなくなり、七色に女の子の格好をさせ続けた……!そんなこんなで、俺はずっと隣のナナちゃんを女の子だと思っていたし、まりちゃんは全力で七色の性別詐称をしてたから、俺の母親も七色のことは女の子だと思っていた」


「七色、小学校の時は普通に男の子の格好だったから、入学のタイミングで一気に直したんだよね?」


「ああ、流石にまりちゃんもこのままではまずいと思ったんだろうな……」


「けど一真、お前は何で小2まで気づかなかったんだ?もっと前に……少なくとも、小学校入学で男の格好し始めた時点で分かるだろ」


「それが、分からないもんなんだよ!物心つく前から、マジで、本気で女の子だと思い込んでいるとな!ナナちゃんは弱っちくて泣き虫だから、ずっと俺が守ってやらなきゃと思ってたし。小学生になって髪を短く切って、スカートやめてズボン履いてたのも、趣味が変わったか、学校だと動きやすい服の方がいいんだろうなくらいにしか思わなかったし。ランドセルが黒いのだって、どうしてか聞いたら"カズくんとおそろいにしたかった"って言われて、かわいいとしか思わなかったし」


「うわぁ……」


「じゃあ、そんな状態でどうやって男だと気づいたんだ」


「……学校だと、何かと男女別になるだろ?俺は保育園で七色は別の幼稚園にいたから、それまで意識する機会が無かったけど。七色は普通に男の分類にいるし、普通に男子トイレ入るしち〇こついてるし。1年くらいかけて、ナナちゃんはもしかして女じゃない……あ、男なのか!って理解した」


「カズくん……ぶっちゃけ、初恋の人が男だと、どーなの?どんな気持ちなの?」


「どーもなにも、俺はあの頃のナナちゃんが好きだったんだなって、それだけだよ。ただ確実に言えるのは……もしもナナちゃんが本当に女の子で、そのまま順当に成長して存在していた場合。俺は迷わずナナちゃんと結婚するだろう」


「「うわぁ……」」


「その話、絶対彼女さんにはしない方がいいよ。殺されるよ?」


「ああ、それは理解してる……」





「……でもな、俺、いつか七色が結婚する時には、結婚式の友人代表のスピーチでこの話をしようと決めてるんだ。七色に一番最初にプロポーズをしたのは俺だ!あと、七色のファーストキスを奪ったのも幼少期の俺だ!俺の分まで七色のこと幸せにしてやってくれよ!ってな」


「「うわぁ…………」」


「なんだよ、引くような話じゃないだろ」


「引くような話だよ。前々から思ってたけど、カズくんちょっとキモいよ」


「七色に対するお前の態度は異常だよ。それを自覚した方がいい」


「全然分かってないな。幼馴染ってこういうもんだろ。これが普通だよ」


「お前ら何やってんの?」



 噂をすれば。話題の中心人物、俺の初恋の人ナナちゃんこと、現在ぱっとしない見た目の男子高校生、青葉七色が現れた。



「おっ、帰ってきたか」


「おかえり〜って、戻ってくるの早くない?まだ授業中じゃん」


「先生が急な腹痛で自習になった」


「そっちも?食中毒でも流行ってるのかなぁ?あ、暇なら七色も暴露話に参加する?今カズくんの初恋の相手聞いてたとこ〜」


「どうせ俺だろ」


「知ってるんだ……」


「まりちゃんがよくあの頃の話をするからな。俺たち本人の前で。カズくん、あの頃ナナちゃんのこと大好きだったのにね〜ごめんね、七色男の子で〜って、今でもたまに謝られるぜ!」


「それはキツいな、あたしだったら耐えられない…………あ、お前がファーストキス一真に奪われた話はもう聞いたよ」


「それカズの暴露話というか、俺の暴露話じゃん……!」



 七色は頭を抱えて青ざめた。そういうことだ。俺の暴露話のダメージは、七色にも等しくダメージが入るように出来ている。




「……あ、そういや俺、一度も聞いた事無かったけど。七色、お前の初恋の相手は誰なんだよ?」


「え、俺の?」


「まあ、どうせ強くてかっこよくて頼りになる幼少期の俺……カズくんだろうけど」


「いや、全然違う」


「は???そんな訳ないだろ。え、違うの?絶対俺だと思ってたのに!あ、照れ隠し?何だよ、今更恥ずかしがらなくてもいいだろ。初恋は俺だって素直に言っちゃえよ」


「だから違うって。どこから来るんだよその自信」


「じゃあ一体どこの馬の骨だ!!!!!」


「「「怖っ……」」」


「普通に考えて納得がいかん!!どうして俺じゃないんだ!!!」


「普通に考えて俺は男だから男を好きにはならない……」


「それは偏見だ!正直になれ七色、お前の初恋は俺だろう!?」


「絶対に違う」


「おい一真、もうその辺にしといてやんな」


「流石に七色がかわいそうだよ〜」



 了とマキが、七色に詰め寄る俺を止めに割って入った。だが、俺はそんなことで止まりはしない!真相を明らかにしない限りは、この俺が納得することはない!!!



「じゃあ、誰なんだよ!?言ってみろ、俺の他に誰がいるっていうんだ!?」


「それは…………あんま覚えてないけど………………昔…………」


「昔???」


「…………公園で1回だけ会ったことがある人?」



「「「…………………………誰?」」」




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