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花は君のために  作者: 須田昆武
Season2~ラブコメ編
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これから初恋の話をしよう /その1



「うわ、なんだよその髪!あとそのダセェ眼鏡!」



 ある朝、いつものように幼馴染の自宅を訪れると。そこには、黒髪で野暮ったい眼鏡をかけた見慣れない……いや、ずいぶんと懐かしい青葉七色の姿があった。



「カズ……そんなに騒ぐ必要ないだろ。一応、そろそろ受験用の顔写真とか撮らなきゃだし。だから、戻しただけだ」


「お前…………くそ地味ガリ勉野郎みたいな見た目に戻ったな!」


「言葉を選べよ言葉を!」



♢♢♢♢♢



「わー、七色懐かしい見た目してる〜!小学生みたい〜!」


「あの頃のお前は泣き虫だったな……ああ、今でもそんなに変わらないか」


「何で朝から悪口言われなきゃならないんだ」



 教室に着くと、七色のガキの頃を知っているマキと了も、七色の分かりやすい変化に気がついて昔を懐かしんでいた。

 ちょっと前までの金髪で一見不良のような見た目と、今の姿に大きなギャップがあるのか。七色のことをよく知らないクラスの連中は、知らない奴が登校してきた……と、少しざわついている。



「みんなは慣れないみたいだけど、わたしたちはこっちの方が見慣れてるよね〜。ていうか、七色はそもそもどーして髪染めてコンタクトになってたんだっけ?カズくんの仕業?」


「ああ、俺が七色をおだてまくって高校デビューさせた。面白そうだったから。そしたら意外と気に入ったみたいで、高校生活はほぼあの金髪って訳だ」


「なるほどね〜うちの校則がゆるいからなせる技だね〜」


「あと、まりちゃんも気に入ったみたいで怒られなかったのもあるよな」


「人の母親を名前で呼ぶな……」


「だってまりちゃん呼びした方がお母様も嬉しそうだし。あ、ナナちゃんママの方がいいか?」


「それもやめろ」


「ママ友みたいな呼び方だな?」


「了は知らないだろうが、実際俺の母親とまりちゃんはかなり仲のいいママ友だ。この前も二人で一緒に旅行行ってたし」


「それはだいぶ仲がいいな……それにしても、七色は今日元気なくないか?」


「………………さっき雨音に声かけたら、『どちら様ですか……?』って言われた……」


「ドンマイ〜」



♢♢♢♢♢



 

 そんな七色のメタモルフォーゼが起こった日の、とある授業中。俺たちの選択科目を担当していた教師が急な腹痛か何かに襲われ、授業は急遽自習となった。ちなみに七色は、別の選択科目の授業に出ているため、この場にはいない。



「カズくん〜暇〜」


「マキ、暇なら俺に絡んでないで自習しろよ。俺たち一応受験生なんだぜ?」


「そーいうカズくんだって、全然自習してないじゃん。何やってんのそれ?」


「見れば分かるだろ、トランプタワーだよ」


「全然積めてないじゃん、下手くそ〜」


「俺はこーいうの苦手なんだ」


「じゃあ何でそんな真剣にやってんの?」


「七色が選択授業から帰ってくる前に、七色の机にトランプタワーでも建てようと思ったんだよ。暇だから」


「ちょ〜暇じゃん、ウケる〜。手伝おっかなー」


「だから、お前は真面目に勉強しとけ。受験生なんだから」


「カズくんだって受験生の癖に生意気!」


「俺はもうスポーツ推薦で大学決まってるからお前とは違う。勉強する理由がないんだよ。残りの高校生活は全力で遊ぶ。でも、マキは普通に一般受験だろ?」


「えー、カズくんもう決まってんの?裏切り者〜!確かにわたしは入試あるけどさぁ〜……別に落ちてもいいもん。落ちたら、適当に入れる他の学校行くし」


「お前なぁ……それ、お前のとこの親が許さないだろ」


「もういいよ、この話は。ねえ、りょーちゃん!何か面白い話しようよ〜!恋バナとか!りょーちゃん最近何かあった?」


「ない」


「ほら、了を見習えマキ。了はちゃーんと真面目に勉強してるぞ。うわ、お前何で数学なんかやってんだよ。文系に数学は必要ねーだろ」


「文系を舐めるなよ。あたしは一応経済学部受けるから、ちゃんと数学も勉強しないといけない」


「へぇ、経済学部か。確か経営の科もあったし……やっぱ了は実家継ぐのか。ほら、了は真面目に家のこと考えてるのにな。どっかのお馬鹿さんはなーんも考えてない」


「か、考えてるもん!考えたうえで…………あ〜もう!ムカつく!了ちゃんわたしにも勉強教えて!」


「いいけど……一真、お前も提出物くらいやれよ」


「へいへい、トランプタワー飽きたし別のことでもするか」


「ちょっと!何でカズくん机くっつけてくんの!」


「いいじゃん、暇なんだから」



 トランプタワーの建設を諦めた俺は、机を並べて大人しく了とマキと勉強をすることにした。


 ……が、10分もすると飽きて、俺はまたトランプでの建設を再開した。今度は小さい家にしよう。これくらいなら俺にも……あー、無理だ!

 マキと了も集中力が切れたのか、余ったトランプのカードで遊び始めている。……こうなったら仕方がない。受験生にも息抜きは必要だ。結局、俺たちは休憩と称してジジ抜きで遊ぶことになった。



「なんかあたし、今日の七色を見たのも相まって…………こうしてると昔を思い出すよ」


「あー、確かに。俺たち、小学生の時はよくこうやって机くっつけて勉強会したよなぁ。七色も交えてさ。疲れたら今みたいに息抜きにトランプして」


「あの時は、七色が中学受験するって聞いて慌ててみんなでお勉強したんだよねぇ。懐かしいな〜」


「あたしたち、勉強が得意なタイプじゃなかったけど。あの時の努力があって全員受かったから、こうして今もつるんでいられるんだもんな」


「わたしもう、あの頃みたいにがんばれないよ〜勉強したくない〜」


「まー、ほんとあの時はよく頑張ったよな。特にお前ら。勉強の原動力が、完全に七色だったもんな」


「「…………」」



 俺がこの一言を放った途端、少し空気が張り詰めた。

 あー。こういうのも懐かしい。あの頃は了とマキもちょっとギスギスしてて……

 そーいや、懐かしいついでに。気になってたことがあったんだ。



「なぁ…………お前らって今も七色のこと好きなの?」


「はあ?いつの話だよ。それはない」


「ありえないありえない、わたし今彼氏いるし」


「なーんだ、つまんねーの。泥沼の愛憎劇でも始まんないかなと思ってたのに」


「趣味悪っ!そういうとこだよカズくんの悪いところは。はい、わたし上がりね」


「くそっ、マキに罰ゲームやらせようと思ってたのに!じゃあ、了が負けたら渾身の暴露話の刑な!」


「そんな面白いネタないけど……残念ながら負けるのはそっちだよ。はい、上がり」


「はぁ!?何で俺が負けんだよ」


「カードの小細工くらい気づいてたもんね〜。だから、りょーちゃんとわたしにしか分からない別の小細工しといた!何年幼なじみやってると思ってんの?」


「…………じゃあ、俺が罰ゲームか。仕方ねーな……」


「聞きたいな〜カズくんの渾身の暴露話」


「今更暴露することなんてあるか?」


「あるにはある、これは来るべき時まで大事にとっておいた俺の渾身のネタだが……」


「お前、そんなに楽しそうにして…………まさかわざと負けたな?」


「違う、これを話すのは普通に恥ずかしい。でも、お前らとこうしてつるむのも今年で最後な訳だし。だから、ぶっちゃけた話も遠慮なくするよ」



「…………ということで」



「これから初恋の話をしよう」



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