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プロローグ
駆け抜ける。
ただひたすらに、目の前の光に向かって。
駆け抜ける。
なぜだろう、理由は何もなくて。
ここから逃げたいわけでもなくて。
そばには誰もいないのに、まるで何かに追われるように。今しかない、今しかないと、体が勝手に鼓動をはやめる。
そしてただひたすらに、まっすぐに。
目の前の出口へと駆けていく。
そうしてたどり着いて見えたのは……
眩い色彩。色とりどりの、何か。
私はこの景色を知っている。ずっと昔、誰かから聞いたことがある。
ああ、そうだ。きっとここは、楽園だ。
それほどまでに美しいこの光景を、初めて見た外の世界を
私は決して忘れることはないだろう。