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1.「多様性」と「多様度指数」

 このエッセイでは『小説家になろう』を『なろう』と表記します。


 『なろう』の多様性は……という話題、時々挙がると聞きました。エッセイや感想欄で目にする……らしいのですが、「エッセイ」ジャンルでキーワードを「多様性」として検索すると8作品でした。

 もちろん8作品もあれば「時々挙がる」と表現できます。それに感想欄が中心かもしれません。


 したがってエッセイの作品数は良いのですが、どうも


・『なろう』では○○が多いから多様性がない、という主張

・『なろう』では○○以外も多いから多様性がある、という主張

・これらの推論(および推論方法)に対する疑問


があるようです。

 それを知り、私は「多様性」の誤用があるのではと思いました。


 以下では「多様性」の一般的な定義と「種多様性」における「多様度指数」の定義を確認します。また、多様度指数の測定方法の一つとして「Simpsonの多様度指数」を紹介します。

 それらをご理解されている方は次話にお進みください。



挿絵(By みてみん)


 以下は「多様性」の定義に関するWikipediaの記述です。


『多様性(たようせい)とは、幅広く性質の異なる群が存在すること。性質に類似性のある群が形成される点が特徴で、単純に「いろいろある」こととは異なる。』(Wikipedia「多様性」より)


 多様性という概念を学術的に用いた例としては、自然科学系に生物多様性、種多様性、遺伝的多様性など、社会人文系に文化、地域、価値観などがあるとされています。

 『なろう』の多様性を論ずる場合、文化多様性の一種と解釈できます。しかしジャンルや傾向を種のようなものと考えると、自然科学における種多様性の測定方法が適用できそうです。


 そこで同じくWikipediaの「種多様性」を見ると、以下のような説明があります。


『種多様性を説明する要素として、種の豊富さ(Species richness)と均等度(evenness、または、equability)の2つがある。種の豊富さとは群集に存在する種の数のことを指す。  (中略)  このような群集内に存在する各種間の個体数の等しさを、均等度と呼ぶ。種多様性を表現するために、「種の豊富さ」と「均等度」を共に考慮した多様度指数(diversity index)が考案されている。』(Wikipedia「種多様性」より)


 要するに、

挿絵(By みてみん)

となるわけです。


 上記から、一つのジャンル(または傾向)が「多い/少ない」では多様性は測れない、と考えるべきでしょう。

 たとえば、ある地域の昆虫の多様性を測るとして「カブトムシが10%を占めたから多様性が高い、あるいは低い」と答えたら、生物学的な定義では不適切です。

 では正しい例はというと、「カブトムシが10%、チョウが20%、ハチが30%、アリが40%」と採集した全ての種の割合を求め、数値化します。

 しかし算出した数値は、単体だと意味を持ちません。A地域の多様度(算出した数値)とB地域の多様度は、あるいはA地域の去年と今年の差は、といったように何かと比較してこそ役立ちます。



挿絵(By みてみん)


 具体的に多様度指数を計算する方法ですが、使用例が多く簡易に計算できる「Simpsonの多様度指数」を以下に紹介します。


式1: Simpsonの多様度指数 D

挿絵(By みてみん)


 『Σ』は高校の数学Bで習いますが、年少の方がお読みになる可能性を考え、簡単に説明します。


 Σは「繰り返し合計する」ことを意味しています。

 たとえば先ほどの昆虫の例をΣの入った式、せっかくですからSimpsonの多様度指数の式に当てはめると、以下のようになります。


昆虫採集の結果:

 種類1=10%、種類2=20%、種類3=30%、種類4=40%


D=1-(0.1×0.1+0.2×0.2+0.3×0.3+0.4×0.4)

 =0.7


となります。したがって上記のSimpsonの多様度指数は0.7です。


 Simpsonの多様度指数の良いところは、四則演算のみで算出できるところです。

 他の多様度指数だと対数を用いるなど手計算では厳しいのですが、Simpsonの多様度指数なら種類が多くても紙と鉛筆さえあれば充分です。


 実際に計算してみれば分かるのですが、一種類だけ突出していたり種類数が少なかったりすると数値が小さくなります(数値の範囲は最低で0、最高で1未満です)。


例1: 一種類だけ突出した場合

 ① 5種類で70%、10%、10%、5%、5% → 0.485

 ② 5種類で50%、20%、10%、10%、10% → 0.68


例2: 種類が少ない場合

 ① 1種類のみの場合 → 0

 ② 2種類で双方が50% → 0.5

 ③ 5種類で全て20% → 0.8

 ④ 10種類で全て10% → 0.9



挿絵(By みてみん)


 種類は均等な階層であるのが重要で、恣意的な区分けでは意味がありません。


 上で「カブトムシが10%、チョウが20%、ハチが30%、アリが40%」としましたが、チョウにはアゲハチョウやモンシロチョウなど、様々な種類があります。ハチやアリも同様です。


 たとえばモンシロチョウですが、(もく)はチョウ目(鱗翅目)、科はシロチョウ科、種がモンシロチョウです(説明を簡単にするため目・科・種のみを抜粋)。

 ちなみにハチはハチ目がありますが、アリはハチ目の中のアリ科です。そしてカブトムシはコウチュウ目(鞘翅目)、コガネムシ科、種がカブトムシです。


 『なろう』なら、『ファンタジー』大ジャンル、『文芸』の『純文学』小ジャンル、『恋愛』の『異世界』小ジャンルの『悪役令嬢モノ』系統、この三つで比率が「多い/少ない」と論じるようなものです。

 やはり階層を「大ジャンルで揃える」「小ジャンルで揃える」などしないと、意味のある結果にならないでしょう。


 次話では、実際にSimpsonの多様度指数を用いて『なろう』と他のサイト(カクヨム・アルファポリス・エブリスタ)を比較した例を示します。


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