1-8 地下へ潜入
地下の監禁所までの難所は2つ。
1つ目はは地下へつながる階段。その階段は1箇所しかなくそこに兵を待機させているそうだ。勿論、階段までは、容易に行ける。例の魔法つかいに会わなければ……
その階段だけど、幅は少しあると言う。と言っても少しある程度だ。王城の廊下と比べれば狭い。時折、下から兵が上がってくることがあり、出くわすと厄介だ。
無力化させて倒れたら、音が響く。
そして、王に忠誠を捧げている者を叩くとまずい。
ある程度は許されると思うが……
と言う訳で、できるだけ攻撃したくない。
隠れながら進む、か。
2つ目は地下に着いてからの通路。
そこも狭く、兵が巡回しており、鉢合わせて騒がれても厄介。
隠れてやり過ごすか、騒がれる前に無力化。
とにかく、姫の救出。それさえ出来れば、問題ない。
思考を止め、王の部屋の扉を開く。
勿論、外に人がいないことは気配で分かっている。
地下の階段までは入り組んでないらしい。
気配を察知しながら行く。
*************
しばらく、歩きあと少しで地下へ通ず階段に着きそうだった。
「………………!!」
前方に3名の気配を察知した。
重いのが2つ。軽いのが1つ。
つまり、戦士と魔法つかい。
することは1つ。隠れる。
この今着ているローブは軽く探知を阻害できる。魔法はわからないけど。
そして、僕の潜伏術があれば、バレることはほぼないはずだった。
既に潜伏しやり過ごそうとしていると……
3つの気配が歩みを止めた。
これは、バレたと考えたほうが良いだろう。
こうなったのであれば仕方がない。
僕は潜伏を解き敵へ加速する。
それに反応するように2つの気配が前に出る。
「ギリメス様、私が動きを止めますのでその隙に魔法を」
「ん?」
小さな呟きではあるが十分聞こえる。
例の魔法つかいか………戦士二人を無力化。
そして、ギリメスとの交渉をする。
応援を呼ぶようならその前に無力化する。
と言う方向性でいく。
その勢いのままに正面から突っ込む。
――――――魔法つかいに
「王の命令で来た」
彼だけに聞こえるように言う。
剣が2つ振ってきたが遅く、魔法つかいの前で足を踏み込み、後ろに飛び退く。
未知である魔法を使わせない狙いがあるのと………
後ろに下がると―――――
『どう言うことだ?』
頭に直接語り語りかけてきた。
『あとで話します。それで、そちらの戦士は陛下側の人間ですか?』
『違う』
それを聞くと僕は瞬時に床を踏み、
右の戦士の足を払い、床に倒す。
それと同時に左の戦士の頭を狙い無力化。
そして、右の方を軽く叩く。
その二人は床に倒れた。
鎧のガシャンと言う、金属の音が聞こえる――――はずだった。
しかし、何の音もせず、ただ、倒れる。
――――――破壊の力は音すらも破壊する。
あまりの速さになす術なく敗北した戦士を見ながら、
魔法つかい――――ギリメスは頭の中に語りかける。
『私は何もすることができない』
『したら陛下を裏切ることになる………』
側近を裏切ることが国王陛下を裏切る?
『どういうことですか』
『ヤツと敵対するような行動を取ると姫が魔法の影響で殺される………』
魔法でこの国最強の戦力を縛っている。
陛下側の戦力がこれで格段に落ちたと言うことか……
『僕はその魔法を破壊できるかもしれません』
恐らくだが、魔法は、破壊可能だと思う。
『と、言うわけで、倒れたフリお願いします』
『ついでに、あなたを監視しているヤツを破壊しますよ』
『ああ、頼む。魔法で作られた小型の魔物だ』
『起きたら陛下の部屋へ、護衛よろしくお願いします』
『と言う事でいきますね』
勢いをつけて突っ込む。
渾身の一撃のように見せかけた弱い攻撃。
軽く腹部に当たりギリメスは倒れる。
気絶させていない、はずだ……。
そして、破壊の力で監視しているヤツを破壊。
先に進む
*************
いろいろあったけど着いた!
と心の中で安堵する。
地下への階段についたこと。
それと、一番警戒していたギリメスとの対面。
そして、交渉がうまくいったことによるものだった。
でも、急がないといけなくなった。
いや、ギリメスは、優秀だ、と陛下は言っていた。
戦士ぐらい隠すはず。
やはり、ゆっくり行こう。
階段の入り口には兵が2人。
直立不動。神経を張り詰めている。
正直、正面から隠れながら入るのはできない。
無力化させると気絶した兵士を見られると困るし、後に響く。
やむを得ない。気を反らすか。
近くの壁を破壊した。
「な、なんだ。今のは……」
「少し行ってるか?」
「ああ、状況を把握しよう」
予想通り兵は行った。
音が無いため他の兵はよってこない。
我ながら良いアイディアだった。
階段を自分の足音を消し、流れるような速度で降りていく。
下にも兵士がいる。しかし、油断しきっている。
叩く―――――――後が厄介
魔法―――――――記憶が残るため使えない。効果が短い。
気絶させてからでも国王陛下側だったらまずい。
となると、最後の破壊の力を使う。
一時的に視力と声帯を破壊する。
勿論、痛みもなく、効果が短い。
こういうときに有効だ。
それを発動する。
「……………………」
声にならない叫びが上がる。
これだから、積極的に使いたくない。
まぁ、気にしないで進む。
極限まで加速し、奥へ、そのまた奥へと進む。
一番奥にいたのは、可憐な女の子だった。
破壊の聞こえが悪すぎる。