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S3

どうせ嘘なんでしょう?

作者: 六藤椰子〃

男性編


 ふと彼女が言った。「どうせ嘘なんでしょう?」


僕が何事かと思い、後ろを振り向き返った。彼女は居間にいた。テレビを観ているようだった。僕はテレビの事に対してそう言ったのか、それとも僕の事に対して言ったのだろうか。妙にドキドキした。興奮ではない。恐怖心に近いかもしれない。

 何で急にそんな事を言ったのか、もしかしたら昨日の事がバレたのかもしれない。いや、昨日は嘘を吐いていないハズだ、と、僕はペンを机の上に置いて、今日までの出来事を、記憶の隅々まで、なるべく鮮明に思い出す事にした。

そうだ、昨夜ご飯が不味かったのに美味しいと言ってしまっていた。しかも今日の帰宅前に友人達とお酒を飲んで帰ったのだが、彼女には内緒で仕事先の関係で飲んできたと嘘を吐いてしまっていた。それが今バレてしまったのだろうか、と思った。

 彼女に謝るべきなのか、それともスルーしておくべきなのか。僕は暫く彼女の方を見て悩んだ。悩みに悩んだ結果、言う事にした。言わないと後悔する、直観的にそう思ったからだ。

僕は不甲斐ない気持ちいっぱいにしてドアを開けて、彼女に「ごめん」と伝えた。

 彼女は僕の事を見た。暫く沈黙が続く。

テレビから音が流れ続けたのは唯一の救いだった。彼女は「ごめん。何?」と言ってきたので、咄嗟に僕はテレビの事なのかなと思い、慌てて「あ、この芸人が来月結婚するんだっけ?」とごまかしてしまった。

彼女は眠たそうな目をしていて「どうせ嘘なんでしょう?」と返事して「そろそろ眠るね。」などと続けて言い放つと、テレビを消して寝室の方へと入って行ったので、気にしてないのか…と僕は、些か心が晴れないまま理解し、自室へと戻る事にした。



女性編


 私はその日、こたつでテレビを見ていた。

洗濯も家事も何もかも、する事がなかった。彼氏は自室に引き籠ってずっと仕事をしている。ついさっきコーヒー出したばかりでこれといって何もする事がない。退屈、々々…などと思っている内にいつの間にか眠ってしまっていた。

ハッとして目が覚めると彼氏が私の後ろに立っていた。思い立ったような、困ったような顔をして立ち続けていた。

暫く沈黙が続いた。テレビからは依然として音が流されて続けている。

何だろうと疑問に思い、「ごめん。何?」私は言い放つと彼氏が慌てたように直ぐ反応して、

「あ、この芸人が来月結婚するんだっけ?確か発表するって」と返事をした。どうも怪しい。さては昨日何かがあったのだろうかと考えようとしたが、咄嗟に私がここに眠ってしまっていた事が一つの原因ではないのだろうかと言う考えが思い浮かんだ。

「どうせ嘘なんでしょう?」と私は答えた。おそらく、彼氏は私の事を起こそうとしたら急に私が起きてビックリして、ついつい驚いて変な事を言ってしまったのであろう。昔からこの人は少し不器用だなと思える事が所々あるのだ。

 私はテレビを消して、「おやすみなさい」と言って、寝室へ戻る事にした。

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