表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドラゴンに三度轢かれた俺の転生職人ライフ  作者: すみもりさい
第一章:一流の冒険者になるために
9/81

09◆再会&遭遇


 『銅の剣』に【闇】と【混沌】属性を付与したら、

 

============

名称:銅の魔剣

属性:闇、混沌

S1:◆◆◆◆◆(混沌)

S2:◆◆◆◆◆(闇)


HP:27/250

性能:A-

強度:C+

魔効:C


【特殊】

 自爆剣

 毒斬り+

============


 しょっぱい魔剣ができました。

 

 いや、しょっぱいと言っても『性能』のA-ってかなり強いぞ? たぶん、岩も簡単に斬れる。

 

 『強度』とともに最大HPも上がったから、修理すればかなり長く使えるしね。『自爆剣』を使わない限り。

 『魔効』も普通レベルに足を突っこんでくれたから、『毒斬り+』とかいうのもそこそこ使える。まあ、俺はMPが少ないから一日に一回しか使えんけど。(武器や防具の特殊効果はMPを消費するのだ)

 

 【混沌】属性を他の属性と組み合わせると、フルチャージしたときで『性能』、『強度』、『魔効』がそれぞれ4,4,4上がることはわかっている。(あくまで『銅の剣』の場合ね)

 

 で、【闇】単体では4,1,3と上がるので、全体では8,5,7ほど元の『銅の剣』から上昇していた。

 スロットが二つだけなのを考えても、やっぱりお得だよな。

 

 とりあえず、道中の魔物は弱いから、この魔剣さえあれば低スペックの俺でも楽勝だ。当てれば倒せる。当てれば、ね。

 

 ちょっと不安になってきたので、もうひとつの贈り物である、『お鍋のふた』を手に取った。

 スロット数は1。【土】で強化してるけど、チャージレベルは1だから、ほぼ強化されていないに等しい。トムおじさんェ……。

 

 とりあえずチャージレベルをマックスの5にすればいいのだろうけど、俺はここで、『それじゃあ面白くないな』と考えてしまった。

 防具に【土】属性を付与するなんて、オーソドックスもいいところ。やはりロマンを求めたい。

 

 となれば単体では使い物にならない【混沌】を除けば、レア属性の【聖】か【闇】。防御を考えれば【聖】が妥当なところだろう。

 

 それも、なんかつまらないと思ってしまう俺。

 ベースが木製の鍋ぶたなのだから、ステータス値がちょっと上がったところでどうしようもない。

 

 ちょっとトリッキーなことがしたくなった。なので【風】を付与してみよう。

 

================

名称:お鍋のふた → 疾風の鍋ぶた

属性:― → 風

S1:◆◆◆◆◆(風)


HP:42/50 → 70

性能:E- → E+

強度:E → E+

魔効:E-


【特殊】

 飛行+ ←new

================

 

 名前が微妙にカッコいいな。

 ステータスはさほど上がらんけど、『飛行+』てのが面白い。遠くに飛ばせる特殊効果だけど、狙ったところに命中させることもできるようだ。

 トムおじさんが『投げて牽制しろ』と言ったとおりの用途が現実のものとなった。嬉しくない。

 

 まあ、どのみち他属性を付与しても本来の役割(鍋のふたになる)以上には使えないわけだし、これでいこう。

 

 俺は最終決定をして『疾風の鍋ぶた』を手に入れた。

 

 んじゃ、携行食を買って旅を続けるとしますかね。

 

 俺は魔剣を腰に差し、鍋ぶたを反対の腰に引っかけて、宿を後にするのだった――。

 

 

 

 

 

 ――で、三日が経った。

 

 山を越え、川を渡り、街道をひたすら歩いて夜は野宿して、陽が大きく傾いた夕方手前。

 両サイドは木々が生い茂る山道を下っていたら。

 

 

「ウォオオオーンッ!」



 犬の遠吠えらしきが聞こえた。どこか聞き覚えがあるのはなぜなのか?

 

 そろそろ弱い魔物が出そうな辺り。野犬や狼もいて不思議はない。ややしょっぱいとはいえ魔剣を持つ俺なら、まあ問題はないとは思うが警戒しつつ前進した。

 

 何度か同じ遠吠えが聞こえ、それがだんだん近くなっている。

 

 それだけではない。

 

 どすんっ、どしんっと地響きのような……え、これ、足音ですか?

 

 この辺りに巨大な魔物は存在しないはずだが……。

 俺は恐々としながら、音が近づくのを聞いていたら。

 

 ガサガサガサガサッ!

「うおっ!」

 ぴょーん。ぴょーん。ぴょーん。

 

 でっかいウサギが一匹、二匹、三匹と飛び出した。

 真っ白な毛と赤い目をしたウサギは大型犬サイズ。その愛らしい容貌に反し、鋭い前歯で小動物を襲う『カニバラウサギ』という凶暴な魔物だ。

 

 単体能力は野犬とさほど変わらない。だからこそ、複数が相手だと俺程度なら文字どおり餌食にされてしまう。

 でもこいつら、群れなんて作らないよな?

 

 疑問を浮かべる間にも、ウサギさんたちはぴょーんぴょーんと街道を横断し……がさがさっと反対側の茂みに突っこんだよ?

 俺は眼中にないご様子。

 

 それもそのはず。

 いまだ大地は揺れている。カニバラウサギが逃げ惑うほどの、たぶん大きな魔物によって……。

 

 俺は街道を駆け抜けるか引き返すかの選択に迫られた。

 ウサギさんたちが目の前を通過したことを考えれば、進んでも戻っても大差ないに違いなかろう。

 

 というわけで、俺は一目散に前へ駆け出した――ところで。

 

 

「うわーーーんっ!」



 茂みを飛び越え、涙目の女の子が現れたではないか。

 

 澄んだ湖を思わせるような青い髪はお尻まで伸び、頭の上にぴこんと耳が立っている。髪と同色のふさふさの尻尾が恐怖からか逆立っていた。

 

 布を巻きつけたまっ平らな胸には見覚えがある。

 ショートパンツや、肘までのジャケットにも。

 というか顔を見た瞬間、彼女が何者か俺はすぐにわかった。

 

 空中を流れていく女の子と目が合う。

 ハッと驚いた表情をした彼女は、いっそう目を潤ませて、

 

 

 

「お兄ちゃぁーーーんっ!」「ぶべっ!」




 なんと空中で身をひねって俺に飛びかかってきたっ。

 

 ぷにっとしたお腹を顔面で受け止める。そのまま二人、ごろごろ転がった。

 

「うわーん! お兄ちゃんお兄ちゃんアリトお兄ちゃぁーんっ!」


 俺の頭にしがみつき、俺を『兄』と連呼するこの少女は、リィル。

 狼人族ワーウルフだが、その中でも偉大なる青大狼(グランドウルフ)の血を受け継ぐ超稀少な一族なのである。

 

 平凡な人族の俺とは、もちろん血がつながっていない。

 

 俺が3歳のころ、村外れで俺の母親が傷ついたワーウルフの男を見つけた。その男が大事そうに抱えていた、生まれたばかりの赤ん坊がこいつだ。

 男は看病のかいなく、三日後に死んでしまった。死に際に俺の母さんに託したので、リィルは養女として俺の家族に引き取られたのだ。

 

 だから義妹、ということになる。

 

 小さいころから俺に懐いていたけど、俺が旅立つときは見送りに来てくれなかったんだよな。


「ぶはっ! リィルお前、なんでこんなとこに?」


「アリトお兄ちゃんが村を出るって言ったから、リィルもついて行こうと思って……。でも『絶対ダメ』って言われると思ったから、黙って後を追いかけたの」


 俺が何も相談しなかったから、てっきり怒ってるものだと考えていたが、どうやら違ったらしい。

 

 涙目でしゅんとするリィルの頭をそっと撫でる。相変わらずふわふわで気持ちいい。

 

 そこまで想ってくれているなら、拒む理由はない。

 

 だって可愛いし。俺の通算四度の人生において、間違いなくダントツトップの美少女だ。……あれ? なんか『他にもいたような?』って気がするのは、なんでだろう?

 

 まあ、それはそれとして。

 

 

「出たあーっ!?」



 どしんどしんとした揺れがすぐそばまでやってくると、めきめきっと木がなぎ倒され、見上げるほどの巨人が姿を現した。

 

 毛むくじゃらの巨人は7メートルほどもある。ごっつい顔の額部分に、ぽっこりした盛り上がり。

 慌てて【解析】スキルを発動する。

 

==================

名称:ひとこぶオーガ

属性:土、闇

 

HP:355/560(1020)

MP: 80/ 80(150)

体力:B

筋力:B+

知力:D

魔力:D+

俊敏:D

精神:C


【スキル】 

 剛腕(鬼):C

 硬化:C

==================


 こんな辺鄙な場所にいるはずがない、危険度ランクBの魔物だった――。

 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このお話はいかがでしたか?
上にある『☆☆☆☆☆』を
押して評価を入れてください。


書籍版は好評発売中。おかげさまで1巻重版です! 小説は1巻から3巻まで発売中。
コミック1巻も発売しました!
↓の画像をクリックすると、公式ページに移動します。
ひょうし
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ