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ドラゴンに三度轢かれた俺の転生職人ライフ  作者: すみもりさい
第一章:一流の冒険者になるために

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12◆酔っ払いへの対処法


 森を抜け、しばらく街道を進むと、陽が完全に落ちるころには町に着いた。

 規模は俺の村近くの町よりけっこう大きい。

 

 ここから二日ほど進めば目的の街に到着するので、宿屋に泊まって鋭気を養おうと考えた。

 『オーガ水』を売ればけっこうなお金が入ってくるはずだしね。まだこの町では売らないけど。どうせなら強化して、もっと大きな街で高値で売り捌いてやる。

 

 木の柵が張り巡らされた町に入ったところで、妙な感覚に囚われた。

 

「なんか、ピリピリしてない?」


 目抜き通り(といっても馬車がぎりぎりすれ違える程度の幅)を歩く人々が、なんか警戒しているというか、不安そうというか。

 

 気にはなるが、お腹が空いた。

 せっかく町に来たのだから、ちゃんとした食事を取ろう。

 

 

 

 俺たちは通り沿いにある酒場に入った。

 

 テーブル席が15ほどある、中規模の店だ。その半分ほどが埋まっている。

 

 店の奥側、カウンターに近いところに、やたらバカ騒ぎしている四人組がいる。すでにけっこうな量の酒をあおり、ずいぶんできあがっているようだ。

 他の客は彼らを避けるように入り口付近に集まっていた。嫌そうな顔を隠しもしない。


「お、お兄ちゃん……」


 リィルが俺の背に隠れ、おどおどしている。うるさい四人組にもそうだが、店の客全員に対して警戒しているようだ。こいつ、知り合いには人懐っこいんだが、けっこうな人見知りなんだよね。

 

 俺たちもうるさい四人組からなるべく離れたテーブルに着いた。

 

 中年のおばさんがやってくる。

 

「いらっしゃい。見ない顔だねえ。ご注文は?」


 おばさんは愛想笑いを貼りつけているが、後ろのやかましい連中が気になっているご様子。

 

 リィルがぴしっと背筋を伸ばした。俺を見据え、おばさんを見ようともしない。緊張しすぎだろ。

 

 俺は苦笑しつつ、小袋から銅貨を数枚取り出し、テーブルに置いた。

 

「これで二人分の食事を適当にお願いします。飲み物はミルクと水で」


 おばさん、笑みを消した。金額がそれほどでもなかったので落胆したらしい。わかりやすいなあ。

 

 ま、これくらいの反応は冒険者時代に何度も見ているので、俺は気にしない。

 

 おばさんが銅貨をエプロンのポケットに突っこんだところで、俺は銅貨をもう一枚つまんで差し出した。

 

「それから、あとですこしお話を聞かせてもらえませんか?」


 酒場は情報の宝庫だ。俺たちが目指す街のことをいろいろ聞いておきたい。

 俺は四度目の人生だが、生まれた国はそれぞれ違う。だからこの国の情報は田舎暮らしで知り得たものしかなかった。今現在の街の様子が知りたい。

 

 おばさんは「へえ」と感心したように目をすがめた。

 

「若いのに作法を知ってるじゃないか」


 チップを渡し、情報を得るのは万国共通。話を聞いて有益だったら、さらにチップを弾むのが冒険者のマナーだ。


「いいよ。料理持ってきたついでに話してあげるよ。ま、ちょいとうるさいけどね」


 おばさんはウィンクして去っていった。

 

 リィルもようやく肩の力を抜く。

 村のみんなとは楽しく会話できるのに、たまーに旅人が村を訪れると、俺や母親の後ろに隠れて出てこなかったもんなあ。

 都会でちゃんと生活できるだろうかと、ちょっと不安になる。


 さて、料理を待つ間、入手した『オーガ水』の強化方法でも検討しようかと考えていたのだが。

 

「ぎゃっはっは!」

「おら、酒がねーぞ」

「早く持ってこーい!」

「うひゃひゃひゃひゃ」


 マジでうるさいなっ。

 

 俺はバカ騒ぎしている四人組に目をやった。

 

 身形から冒険者のようだが、ステータスはリィルに及ばない。Dランクの弱小パーティーみたいだ。でも、やたら豪気で、テーブルの上には空になったジョッキがいくつも転がっていた。

 いい稼ぎでもあったんだろうか? むちゃくちゃ上機嫌で、とても迷惑だ。

 

 もしかして、町がピリピリしてたのは連中のせい? いや、でもそんなに危険な連中にも見えないんだけど……。


 リィルはそわそわと落ち着かない。ちらちら四人組に視線を送っていた。『しーってしなきゃダメだよ』とか注意したいけどできない、って感じだ。


「あんまり気にするなよ。そのうち酔いつぶれて大人しくなるさ」


「そうそう。バカどもは放っておくのが一番だよ」


 割りこんできたのは店のおばさんだ。飲み物を先に持ってきてくれた。

 テーブルにミルク入りの大きなコップが置かれると、リィルは目を輝かせた。おばさんを映した瞳には、『この人いい人だありがとうっ!』と書いてあるようだった。チョロイな。

 

「あの人たち、この町の住人じゃないですよね?」


「ん? ああ、流れの冒険者さ。ゼクスハイムから来たって話だね」


 ゼクスハイムは俺たちが目指す街の名だ。近場にダンジョンや魔物の棲み処が多く、冒険者の街として有名なところだった。

 

「何かいい稼ぎにありついたんですか?」


 素朴な疑問をぶつけると、おばさんは肩をすくめてみせた。

 

「あんな連中に大した依頼が受けられるもんか。回復薬ポーションが法外な値で売れたんだよ」


回復薬ポーション?」


 たしかに回復薬は値が張るものだ。

 回復役のいないパーティーでは、これがないと冒険になんて出られない。

 でも、値崩れや暴騰が起きないよう、各国はその管理に熱心だから、法外な値で取引される場合は少なかった。

 

「この町って、魔物に襲われたり、疫病が流行ったりしたんですか?」


 そういう突発的な災害が起きたとしても、近くの街から支援がくるはずなんだけどね。

 

 おばさんは首を横に振った。

 

「実はさ、町長の娘さんが、奇妙な呪いを受けちまってね」


 みるみるHPが減り、町にあった回復薬は底を突いたのだとか。

 そこへ今日の昼、たまたまやってきたあの冒険者たちが、町長の足元を見て法外な値段をふっかけた、とのこと。

 

 町が不穏な空気に包まれていたのは、どうやら得体のしれない『呪い』が発生したことが原因らしい。

 

「でも、呪いなら専用アイテムなりを大きな街に買いに行けばいいのでは?」


「もちろんやってるさ。三日前、ゼクスハイムに解呪用アイテムとか、解呪できる人を探しにね。けど、まだ戻ってきてないんだよ」


 街へは歩いて片道二日ほど。馬を走らせれば、用事を済ませても二日で戻ってこられるはずだ。

 

 呪いの種類にもよるけど、アイテムや高ランクの呪術師がなかなか見つからないか、帰り道で何かあったか……。

 

 俺がよくない想像をしたとき、おばさんが「ちょいと待ってな」と店の奥へ引っこんだ。料理を運んでくる。

 

「はいよ、お待ちどうさま」


 俺とリィルの前には、別々の料理が置かれた。

 リィルは厚焼きベーコンに野菜炒め、肉団子スープだ。なかなかボリューミー。

 俺はソーセージ入りの野菜たっぷりポトフ。こちらも食べごたえがありそう。

 二人の間にはパンが置かれ、お代わり自由とのこと。なんてサービスっ!

 

「いいんですか? こんなに」


 俺が払った金額じゃ足りないような……。


「ま、迷惑料込ってことでね。で? あんた、何が訊きたいんだい? あのうるさい連中のことじゃないよね?」


 おばさんはお盆を隣のテーブルに置くと、椅子を引いて座った。文字どおり腰を据えて話してくれるのか。このおばさん、案外いい人なんだな。

 

「俺たち、ゼクスハイムへ行く途中なんです。そこでアイテム強化職人になりたくて」


「へえ、冒険者じゃなく、職人にねえ。ま、あそこは冒険者が集まる街だから、武器や防具の工房も多いよ。大きな総合店もあるしね。知ってる中じゃあ――」


 おばさんは饒舌に説明してくれる。

 長ったらしいものではなく、規模や特徴を簡潔に、強みや弱みは詳しめに。俺が欲しい情報を深掘りし、実にわかりやすい解説だった。

 ただ、どうやら『アイテム強化』を専門にしている店はないようだ。


「ま、このくらいは街に行きゃ誰もが知ってる内容だよ」と謙遜もする。


「いえ、とても有益なお話でした。ありがとうございます。他に何か、街の噂なんかがあれば教えてもらえませんか?」

 

「噂っつってもねえ……。あ、そういや、新しいダンジョンが見つかったとかなんとか」


「新しいダンジョン、ですか?」


 めちゃくちゃ大きな話題じゃないか。

 

「つい最近の話なのさ。だから規模もどの程度かあんまりわかんなくてねえ。ま、町長の娘さんのこともあって、みんな気にする余裕がないのさ」


 なるほど。不確定な別の街の最新情報より、身近な問題というわけか。

 

 ひとまずおばさんが知り得る限りの情報を得たところ。

 

 街からそこそこ近い山間に突如洞窟が出現した。

 命知らずが突撃したところ、戻ってこない。

 冒険者ギルドが調査隊を募っている。

 

 真偽が確かでないのはあるが、さすがに酒場の従業員、ポイントを押さえていた。

 

 と、またも四人組が大声を張り上げた。

 

「おい、酒がねーぞ!」

「じゃんじゃん持ってこいよっ!」


 おばさんは舌打ちして立ち上がる。俺も席を立った。銅貨を五枚、おばさんに手渡す。

 

「いいのかい? 大した情報じゃなかったけど」


「いえ、かなり有益な情報でした。美味しい料理もサービスしてもらいましたし」


「なんか、逆に悪いことしちまったねえ」


「いえいえ。あ、それと、俺もお酒を運ぶの手伝いますよ」


 おばさんは難色を示したものの、俺の押しに最後は根負けした。

 

 カウンターでお酒の入ったジョッキを受け取り、四人組のところへ運ぶ。

 

「お待たせしました」


 俺は鳴かず飛ばずの冒険者時代、酒場でアルバイトもしたことがあるから慣れたものだ。

 四人組は若い兄ちゃん(俺)には目もくれず、ジョッキを乱暴に受け取ると、

 

「「「「かんぱーいっ!」」」」


 みなが一斉にジョッキを傾けた。ごくごく飲み、ぷはっと息をついてから驚きに目を見開く。

 

「うめえっ!」

「なんだこりゃ!」

「さっきと全然違うじゃねえかっ」

「うひょひょーっ!」


 それもそのはず。俺は運ぶ最中、お酒にちょっとした細工――強化を施していた。

 【火】の属性を3チャージ分、付与したのだ。

 『性能』が上がって、味がよくなったのだろう。

 

 俺は一礼してから、席を離れ、リィルのところに戻ってくる。

 

「さ、これで静かになるぞ」


「? どうして?」


「最初に言ったろ?」


 俺がにんまりする間にも、変化は訪れていた。

 

「あ、れ……?」

「なんか……」

「ひょろろぉ~……」

「眠……、く……」


 ぱたりと、四人はテーブルに突っ伏し、ぐーすか寝息を立てる。

 

 俺は決め台詞っぽく言ってみた。

 

「そのうち酔いつぶれて大人しくなるって」

 

 お酒の性能がアップし、速攻で酔いつぶれるほどになったのだ。フルチャージしたら飲んだ瞬間燃え上がる特殊効果が付くので、そこまではしなかったけど。

 

 たくさん飲んで、最後は美味しいお酒でいい気分。

 でも明日の朝は、強くなったお酒の効果で二日酔いがひどいだろうな。ま、周りに迷惑をかけるほど騒いだ罰だと反省したまえ。

 

 俺とリィル、他のお客さんたちも、以降はそれぞれの会話を楽しみながら飲み食いできた。

 

 

 夕食を終え、まっすぐ宿に向かう――ことはなく。

 

 俺はちょっと気になったので、帰りがけに酒場のおばさんに聞いた、町長のお宅へと足を向けるのだった――。

  

 

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ひょうし
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