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東京







 バスに揺られる事、数分――。




 窓の景色を見ると、見慣れない東京の景色に高揚しつつ、寂しさもある。そんな複雑な心情。

 長野のバスから見えた景色は自然ばかりだったが、東京はビルや車ばかり。その違いを薄々知ってはいたが、やはり驚かされる。何度か入学手続きで足を運んだことはあったが、それでもだ。


 そして毎度、こんな薄汚い空気の中で暮らしいけるなと疑問に思う。なにより自分が暮らしていけるか……。

 こんな思考を巡らしている内に、見えてきた。


 呪術専門学校。


 今日から俺達が通う学校だ。 








 まあ、呪術専門学校なんて直接的で格好悪い名前では無い。そもそも呪術を隠蔽しているのだから、そんな名前で学校運営をするわけがない。


 本来の名は、『烏枢沙摩高校≪うすさまこうこう≫』


 更にいえば、表向きは就職に有利に運ぶように学習する高校で、SPIや常識などを学ぶ事になっている。だからその辺も多少は勉強するが、やはり一番は呪術についてだ。







 そんな学校に良く金を出して、尚且つ、地元の高校を辞める事に親が許してくれたな。と疑問に思われたりしたが、入学金に関しては四之宮家が賄ってくれたし、就職のための高校といったら簡単にOKを出してくれた。まあうちの親だからな。


 それと、寮があることがデカかったかもしれない。







 バスから降りると、烏枢沙摩の生徒と思わしき人達は一人もいなかった。なぜなら登校時間より早く来たためだ。


 だから自分達の格好にやはり、不安を覚えてしまう。






「これ、本当にここの制服なのか?」


 両腕を広げて見せた制服は、黒の上着に黒のスラックス。それだけ聞けば学ランとかそんなものを浮かべるかもしれないが、そうじゃない。




 更にはワイシャツにネクタイ。デザインは黒を基調として、赤と青のストライプとなっている。


 これではまるでスーツみたいだ。就職活動支援を表向きにしているとはいえ、制服までとは手が込んでいる。というかやり過ぎだ。





「あまりの似合わなさに恥ずかしくなった? 子供っぽいものね」


「うっせぇな」


 チラりと四之宮の制服を確認する。

 上着とネクタイは男子と同じものだが、やはり下はスカート。普通の高校のものより、広がりが少ない気がした。


 男子こそ指定されていないが、女子は黒のローファーで統一している。




 とはいえ鞄こそ自由なので、そこが唯一の学生らしさをアピールするポイントだ。だが、四之宮は薄いスクールバックで、傍から見ればやはりOLだ。





 理由として、呪術に多くの道具は要らないのと、取り出しやすさを最優先に考えてるらしい。なにを取り出すかは、知る由もない。




 因みに、俺は前の高校のスクバを再利用しているが。 

 正門をくぐると改めて実感する。ここが長野の田舎高校と違う事を。











 校舎は小奇麗で、正門正面の一号館から、それに隣接する二号館。隔離された場所となる三号館。

 こんな都会の真ん中にあるとは思えない大きさの校庭。やはり東京は経済力が違う。


 少し長く感じる校舎までの道を歩き、校舎の扉を開けた時だった。

 まるで来ることを察知していたかのように、一人の先生が現れた。


「やあ、入学おめでとう。いや、転入だったね」




 少し白髪が混じった気弱そうで頼りがいの無い男。それが第一印象だった。髪は無造作に伸ばされているが、髭はあまり目立っていない。目は細くなにを考えているか分からない感じがする。


 見た目だと年はまだ若そうだ。





「お出迎え、態々、有難う御座います」

 四之宮が頭を下げると、先生は戸惑っていた。堅い生徒に慣れていないのかもしれない。

 付いてきて。と言われて、黙って後ろを歩いた。





 廊下は普通の学校よりも少し大きめに作られている。そんな廊下の先の扉を先生は開けた。

 小さな部屋に通され、俺と四之宮が横並び座らされる。向かいには先生だ。


「僕の名前は日役仁≪ひやくじん≫。今日から烏枢沙摩高校の生徒である君達に事前指導をする。まあ気楽にしててよ」


 やる気の無い声に、若干の不安を覚える。




「えっと、二人の転入テストの結果は――」

 転入テスト。いわゆる受験的なあれだ。とはいえテストは呪術の事で、筆記と実習。経験の無い俺にはできるはずがなく撃沈。まあ四之宮はそつなくこなしたのだろう。


 そしてこの高校ではレベル別クラス編成となっている。授業をスムーズに進める為らしい。





 家に届いた通知では勿論、一番下の――。

「Dクラスだね。二人共」


 二人共というのは意外だった。広い目で見ると四之宮はポンコツなのかもしれない。まあ本家に力を封印されているのも、理由の一つかもしれないが。


「お前もDクラスなんだな」


 さりげなく耳打ちすると、四之宮は顔色を変えずに応えた。


「同じクラスじゃないと、私を守れないでしょ。口だけの誓いは嫌いなの」

 わざと落ちたってわけか。







「それにしても、この時期に転入なんて珍しいね。四之宮家の推薦らしいから、無理が通ったらしいけど。……君達、どういう繋がり?」


 苦手だ。大人の疑いの目線。まるで俺達が罪を犯したような。


 四之宮の事は隠している。それは先生にもだ。


「ま、なんでもいいんだけどね」

 日役先生は笑って見せる。




 天然なだけなのかもしれないが、簡単に信用はできない。






「それじゃあ、改めで学校の説明をするけど。表向きは就活指導を目的とした高校。その公言があった場合、課せられる罪は大きい。くれぐれも口を滑らせないようにね」


 細い目で睨まれた気がして、俺は口を動かす事ができなかった。


「他の校則は結界外での呪術の使用を禁ずる。まあ校舎内は結界がはられているから、学校外での呪術の使用を禁止と捉えてくれればいいよ」


 まあそうでもしないと簡単に漏洩するしな。





「呪術に付いては授業で学ぶとして。主な行事は二ヶ月に一回行われる、クラス別呪術合戦。クラス数名の代表者が多種多様な試合形式で対戦する。それと夏はやっぱり夏休み。それと泊りとか、呪術選抜試験。とかかな」


 最後にまあ楽しんで。と日役先生は付け加えた。






 正直、先は何も見えないが、少しだけワクワクしてきている。元から持っているものは大きいらしいし、地道に学べばかなりの呪術者になれるのでは。とひそかに楽しみなのだ。




 その後も学校の説明を幾つかされ、気づけば生徒達が登校し終える時間。八時になっていた。












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