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姉妹




 確かに、美人な年上のお姉さんと親しくなるのは嬉しい。けどそれが四之宮っていう難しい家系の人となれば、話は変わってくる。

 四之宮姉妹からは一歩引いて、俺は後を付いていた。






 こうやって後ろから見ると、普通の姉妹だ。ただ本性は呪術っていうチートな技を使う、怖いお嬢さん。




 長野にしては栄えた駅で、二人は適度な寄り道をしながら、歩を進めていた。

 雑貨屋、本屋、ドラッグストア。そして本来の目的地であるカフェの前で足を止めた。

 看板には『コロア』とお洒落な文字で書いてある。外装は暗い色を基調としてるが、看板の一部は差し色になっていたりと、またお洒落だ。

 ガラス張りで中は置く行きのある感じと見て取れる。







俺のようなゲーセンと本くらいしか脳の無い学生には、一生縁なき場所だと思っていたが、意外な巡り合わせがあるもんだ。

 四之宮姉が扉を開けると、ベルの音がした。どうやら客が来た時ようのサインらしい。この古風さがまたお洒落なのだろう。

「どうも~♪」


「あ、桜子ちゃん」

 桜子ちゃん? ああ、四之宮の姉さんの事か。やはり、顔は広いらしい。





 店主と思わしき人も女性で、これまたお洒落な人だ。髪は後ろ結びにしていて、派手すぎないエプロンとマッチしている。







 案内された場所は一番奥の席で四之宮姉の特等席らしい。ここだけ他の席と距離がある事に疑問を感じながらも、俺は腰を下ろした。

 荷物があるせいで、桜子さんの隣は埋まってしまい、俺と四之宮が隣どうしで座る形になってしまった。





「アタシ、珈琲にするけど二人はどうする?」

 にこやかな笑みで桜子さんが訊いてくる。

 私もそれで、と四之宮が言ったので、俺も空気を読んでコーヒーにした。







 こうしてじっくり四之宮のお姉さんを見ると、やはりそっくりの美人だ。つんと高い鼻はその象徴のようでもある。目は大きく人懐っこく、妹と同じように綺麗にパーツが収まっている。

 髪は毛先だけが薄い紫になっていて、大人っぽさを演出している。






 それから数分後にコーヒーはやってきた。

 取り合えず、豆の匂いってやつを感じてみたが、なにも分らなかった。

 四之宮はブラックのまま一服、桜子さんは砂糖を大量に投入してから一服。正反対の姉妹である。

 俺はというと、砂糖を適量にミルクを一杯。普通である。







「んじゃ、自己紹介でもしようか!」

 今更ながらの発案だが、大事なことだ。



「薫子のお姉さんで、四之宮桜子≪しのみやさくらこ≫。大学生やってまーす。よろしくね♪」

 大学生……。通りでお洒落なわけだ。


「水無良太郎です。本が好きです。宜しくお願いします」

 少し固すぎたか……。

「良太郎君かぁ。可愛い名前だね」

 か、可愛い……。始めて言われた。

 でも女子はなにも褒めるところが無い時に可愛いって使うらしいし、これで喜ぶのは自惚れだ。






「薫子は別にいっか」と四之宮の自己紹介だけははぶかれてしまった。

 そこで桜子さんが俺を見つめる。

「せっかく良太郎君がいるわけだし、学校での薫子はどうか聞きたいなぁ」


「ちょっと姉さん!」

 桜子さんを冷たい目で四之宮が睨むと、それっきり黙ってしまった。


 そして足を踏まれて、余計な事は言わないでと一言。

 俺は二人の玩具ですか……。






「別に大して話しませんし」


「ふーん、そうなんだぁ」と意味ありげな目で見られる。

 それから桜子さんがパフェを注文した。かなりの甘党のようだ。






「ところで薫子、呪術はどれぐらいまで進歩したのよ」


「え……姉さんなに言ってるの?」

 その質問は虚をつくものだった。






 俺だってもうわかる。呪術を簡単に人前で話してはいけない事くらい。確かに他の客とは距離もある。けど俺の存在は決定的だ。

 そこで頼んだパフェがやってきて、桜子さんはスプーンで一口頬張る。






「だってその子は知ってるんでしょ? 呪術の事」


「なにを根拠にそんな事!?」


 大きな声を出して四之宮が反応する。明らかな動揺だ。俺はこれで彼女らの関係生が分ってしまった。その差を。






 周りからの視線が無くなったところで、桜子さんは説明を始めた。

「簡単な推理よ。良太郎君が呪力を持ってる事くらい、小さな結界を作れば分る。それに薫子の性格上、普通の友人を作れるとは思えない。そして話してくれた事との整合性を考えると――。まあ一番の決め手は……女の勘?」

 それから桜子さんは笑って見せた。






 やはり女の勘は恐ろしいのかもしれない。もしかしたらキスした事も分ってるんじゃないか、そんな気さえする。


「キスなんかしてたりして」

 軽く桜子さんが言った言葉に、俺は含んでいたコーヒーを吹き出した。

 テーブルを店員さんに拭いてもらう惨事となり、悪い事をしたと反省する。とはいえなんとかごまかせたので、多分、大丈夫だろう。








 四之宮も先程の推理に納得したようで、呪術の話となっていた。

「七戒まで」

 俺の知らない言葉が出てきた。蚊帳の外だな、これは。

「へー、まだそんなもん。才能あるんだから頑張りなよ、次期当主なんだし」





 桜子さんの短い言葉に幾つか引っ掛かる部分があった。

 気づけば、俺は手を上げていた。

「あの、なんで薫子さんが次期当主なんですか? 普通だったら長女の桜子さんが……」


「四之宮家は完全、実力性なの。アタシは呪術の才能無いから、それで薫子」





 なるほど。と俺は頷いて見せる。しかし――。

 だったらなんで四之宮はこんなにも桜子さんを警戒しているんだ。実力で上なら気にする必要もないんじゃないのか。







「良太郎君って頭の回転早いね、やっぱり面白い」

 不敵な笑みを見て、俺はゾッとした。

 まるで全部、見透かされてるような……。これなら確かに警戒したくもなる。



「もっと強くなってよ。ほら、呪術学校通えばいいのに?」


「無理な事くらい、姉さんが一番分かってるでしょ」


「まあ過保護親父に、頑固ママだもんねー」





 なんだろう。二人の会話を聞いてると、妙にむかむかする。

 四之宮はやりたい事があるのに、それを親に邪魔されてるって……。おかしいだろ。だからつまんなそうな顔してんのかよ。

 なんか納得いかねえ。






「つまんないっすね」

 あ、言ってしまった――。

 ここまで来たら後戻りできないか。仕方ない、思ってる事を言ってやろう。


「親がどうだか知らないですけど、それで諦めてつまらなそうに生きて、なんか死んでるみたいだ。大人の思い通りで楽しいか」


 四之宮は黙っている。桜子さんに関しては楽しそうに見ているだけだ。




「貴方になにが分かるの……。そんな簡単なことじゃないの。逆らう事は」

 なんで皆、そうやってビビるかね。

 けどやる気のないやつを、救済してやる義理も無いか。









「だったら、良太郎君が親を説得したら?」



 まさかの桜子さんの提案に、俺と四之宮は固まった……。










 それからの強引な流れで、結局、それは前向きな形で進むことになってしまった。

 利害は一致しているのかもしれないが、それでもやっぱり、俺は損をしてる気がしてならない。それに桜子さんの手の平のような気がする。






「少しだけ期待してみる」

 それだけ四之宮に言われて、俺は二人と別れた。

 けどアイツの顔から笑顔が見れるなら、少しやってみてもいいかもしれない。つまらない顔ともお別れできるしな。
















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