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謎々





 夕暮れ時の空の下、屋上に集まった生徒は実に五十人程。そんな中に、俺と天津も混じっている。片方の腕を手錠で繋ぎ、かなり動きが制限される。それになりより、着替えてる時間が無かったせいで天津は和服姿のままだ。俺は制服に着替えなおしたが。やはり男子と女子では着替えの速度が違うようだ。




 辺りを見回すと、中々、メンバーが凄い。


 先ず、優勝候補といってもいい二人組。誠司さんと千夜の最強術士コンビ。今回は生徒以外の参加もOKな為、誠司さんも出ている。大人げないというかなんというか。


「負ける気がしないです」

「さすがは四術士、頼りになるね」

 能天気な誠司さんにツッコみを入れたのが、相変わらず怖い大我さんだ。


「てめぇも四術士だろうが」


 大我さんのパートナーはというと、無理やり手錠を付けさせていた十文字の従士だ。なにやら面識はあるようだが、その様はさながら恐喝だった。


「いやぁ、忘れてた忘れてた」

「ちっ、自覚がねえのか余裕なのか」


 などと会話を交わしている大人組だが、俺からしたらどちらも余裕に見えるし、恐怖の対象だ。


 隣の天津が肩を落とす。

「急に勝てる気がしなくなった」


 安心しろ。お前が弱気なのではない。誰もがあの面々を見たらそう思ってしまう事だろう。


 優勝はならずとも入賞くらいはしてやる。三位くらいまではできたはずだ。理想は低くすぎずだ。








 不意に、屋上に実況席を用いた柿崎さんと霧島さんがマイクを握った。


 喋り出したのは柿崎さんだ。

「さて、時間も間近に迫りました、校舎からの大脱走! 参加選手は凄い面子です!」

「四術士が三人なんて、凄いよね。優勝候補かなこれは」

 と霧島さんが告げると、誠司さんはニヤニヤとしている。


「けど一つ気になる事があるんだけど……」

 霧島さんが一つのペアに目を向ける。




「白井君と卯月ペアなんだけどさ、一人男だよね?」

 指摘されてようやく気付いた。白井の隣にいるスカートを穿いたやつは卯月だ。なぜあんなみっともない恰好をしているのか。そして白井は顔面が腫上がっている。


「男女ペアって意外と難しいでしょ? だから女装もありにしたの」

 とはいったものの、小柄な卯月でも見てられないな。あれは。

 目を背けると、今度は屋上の扉が開いた。もう直ぐ、始まるというのに何事だろうか。



「おっと、これは飛び入り参加者かぁ!?」

 現れた二人の姿を見て、俺は目を丸くした。










D組で自主制作した映像の上映会も無事終わり、生徒達は一息ついていた。それも集客もそこそにできたからだ。撮影に何時間もかけ、手を込ませたかいがあった。


 片付けが終わった頃、教室の床に座り込んだ女子が薫子に話しかけた。


「いやぁ、薫子ちゃんのおかげで大成功だよぉ」

「私は少し案を出しただけよ」


 薫子が否定をしても、周りの持ち上げムードは変わらない。そんな最中、一人の女子が思いついたように言った。


「そーだ、もう直ぐ生徒会企画始まるよ」

 その言葉を聞いて、誰もが見ようよと声を漏らした。


 一人の女子が教室内に取り付けられたテレビの電源を入れる。生徒会企画の映像は学校の内線で見る事ができるのだ。


 女子達は誠司が映し出された瞬間、大きな歓声を上げる。男子達はそれをむすっとした表情で眺めるばかりだ。


 カメラが移動し、良太郎と天津の姿を映した。その刹那、薫子がいきおいよく立ち上がる。

 それを見た一人の女子が驚いた表情で問う。


「ど、どうしたの?」

「もしかして浮気だとか思ってる? アイツなら心配ないっしょ」

 そんなフォローも無視して、薫子が駆けだす。



「別に浮気だなんて思ってないわ」と残して。



 薫子が教室を出た時、目の前には朝陽がいた。疲労困憊といった表情の。


「薫子ちゃん、お疲れ。屋台って大変だよ」

 愚痴を漏らす朝陽の腕を取り、薫子はまた駆けだした。一瞬、もつれた足を直ぐに朝陽は立て直す。


「ちょっと、薫子ちゃん!?」

「生徒会企画、一緒に出るわよ」

 薫子の怒気の混ざった声に、朝陽は言われるがままにするしかなかった。あっというまに階段を駆け上がり、屋上の扉を開けた。









 なんで薫子と朝陽が出て来るんだよ。しかもなんか、こっちを睨んできてるし。


 二人は実況席に近付き、説明をしている。話合いが終わった後、 霧島さんがコメントする。

「これも盛り上げポイントの一つ! つまり参加認めるよ!」



 手錠を貰った二人は互いの手に取り付けた。

 それから、そそくさと朝陽は俺達に近付いてくる。


「よっ、出るからには負けねえぞ」

「それはこちらもだが、なんで急に」

 朝陽が苦い顔を返してくる。


「薫子ちゃんがどうしてもって」


 薫子が?

 本人の顔を見たが、顔を背けてまるで目を合わせてくれない。なにか変な事でもしただろうか。


 頭をフル回転させて考えてみたが、一つしか出てこない。まさか――試写会に行かなかった事に怒っている? だがそれは忘れていただけっていうか。別に悪気があったわけじゃないんだ。




 そんな時、大我さんの声で思考を止めざるを得なくなった。

「よお、朝陽。お前とこんな形で競う事になるなんてなぁ」


「今までの雪辱、ここで晴らすぜ」

 会話を聞いていると、本当の兄弟のようだ。ただ、そんな言葉を口に出す気にはなれない。


 挨拶を済ませたところで、ようやく生徒会企画が始まろうとしていた。


 柿崎さんの声がマイク越しに聞こえてくる。

「色々トラブルはあったけど、準備ができました」


「最後にルールの最終確認だよ。手錠を外したり壊した場合、即失格! それ以外にはルールは不問。なにしてもおっけー」


 ゴールまでの流れは、屋上から四階に降りて最初の指令をクリア。次は二階。最後は第二体育館。そうして全ての指令をクリアした後、みなが待っている校庭のゴールにたどり着けば終わりだ。



 いつもなら、なんでもありなのは喜ばしいのだが、この面子相手ではどうにも喜べない。



「では、スターターピストルが鳴ったら開始です。心の準備はいいですか?」

 その実況の声で、周りの顔は真剣なものに変化する。


 おそらく最初のスタートで一番、前に出る。それが勝つポイントだ。このメンバーと争っていても勝ち目は無い。最高の状態は後ろで潰し合ってくれる事だ。


 このスタートの音に、全神経を集中させる。音と同時に、後方に発をするイメージだ。


 横目で、柿崎さんがスターターピストルを上げたのが見て取れる。

 心臓の鼓動が早くなり、冷や汗が出た頃、大きく高い音が屋上に響いた。


 運動会とかでよくこの音を聞いていたせいで、条件反射で身体が動き出した。かなり良いペースで加速できたはずだ。天津もちゃんと合わせてくれている。


 ――前には誰もいない。

 よし、先行逃げ切り作戦成功。




「おっと、水無、天津ペアが一位に躍り出ました!」


 実況の柿崎さんもそういっているし、間違いない。見落としもないはずだ。


 その刹那、後ろで轟音が響いた。振り返ってはタイムロスになる。分かってはいたのだが、あまり大きいそれに振り替えざるを得なくかった。


 その音が大我さんのものだと気づくのに、時間は掛からなかった。



「我が身体 憑代とし その身に鬼≪き≫を宿せ」


 黒く禍々しいオーラが大我さんを包む。同時に爆風が起こり、生徒達の殆どが足を止めている。

 ……嫌な予感しかしない。




 そこまではまだ予想の範疇だった。憑をするのは聞いていた通りだし、相手は四術士、買い被りなどはしない。


 だが次の変化は予想外といわざるを得ない。

 大我さんの頭から角が生えたのだ。それまるで鬼のように刺々しい、二本の黒い角が。


「んだよ、あれ」

 思わずそんな声が漏れてしまう。


 それに反応したのは天津だ。

「聞いた事がある。大我さんは召喚した式神を、自分の身体に降ろせるって」


 なんだその突拍子の無い話。式神を自分の力に上乗せできるって事かよ。けど、あんな姿を見てしまったら信じざるを得なくなってしまう。


 すかさず、霧島さんが実況をする。

「大我さんは、自分で召喚した酒呑童子を倒して、手なずけたという話がありますからね。付いたあだ名が――鬼殺し」


お酒みたいな名前だ。

 って、関心してる場合じゃ――。


 思考が止まったのも仕方ない。たった一歩の加速で、大我さんは俺達を追い抜かし、あっという間に扉の前に移動した。その時に起きた風で、天津が尻もちをつく。手錠のせいで、俺も態勢を崩した。


「ごめん」

「いや、いいんだが。それより大我さんをどうするかだ」


 扉を壊そうとせず、大我さんは律儀にドアノブを回した。余裕を見せているのだろうか。

「あばよ、鈍間共」


 捨て台詞を吐いてから、いち早く屋上から出ようとした大我さんだったが、その足は止まった。


「てめぇの仕業か、誠司」

 扉のあった場所に、大きな鉄鋼が出現したのだ。厚さも大分あるし、簡単に壊せる代物ではない。



 誠司さんなら、大我さんを止められるかもしれない。それにパートナーは千夜だ。


 十戒で動きを止めた誠司さんは、走って扉へと近づく。

 他の生徒は完全にビビっているせいで、まるで近づこうとしない。扉を抑えられては、隙をぬすんで通るしかないか。


 とその時、大我さんは拳を振り上げた。まさかとは思うが、あれを殴って破壊するつもりなのか。


「俺も舐められたもんだな!」

 その拳は振り下ろされ、鉄鋼はばらばらに砕け散った。


 俺と天津はそれを見て、呆然と立ち尽くした。入る余地なんてまるでない。そして一番、身近でそれを

見ていた大我さんのペア、つまり十文字の従士は涙目になりながら足を震わせている。


「わ、私の事も考えてください!」

「あ、わりぃわりぃ」


 瞬間、大我さんの身体を多量の鎖が止めた。


「行くよ、千夜ちゃん!」

「合点承知です」


 二人は近づきながら指紋を始める。


「二人がかりでの縛か。けど、それじゃあ止められねぇよ!」身体に力を入れ、大我さんはそれを壊す。


「一瞬、止められればいいんだ!」

 誠司さんの掛け声で、千夜が放ったのは俺もよく知るあの呪術だ。


「その身に体現しろ 五行一貫!」


 六芒星が出現し、自然現象が次々と起こる。他の生徒を巻き込まない為か、前よりも威力が弱めに見える。だがそれでも、まともに受ければ一溜りも無い。だが、相手は大我さんだ。


 起こる呪術を見切り、持ち前のスピードで次々と躱していく。


「実戦経験がたりねえな、十文字のガキ!」


 そのまま大我さんは、誠司さんへと拳を振るった。


 速度と威力。まともに食らえば、確実に死ぬ。だが、誠司さんは物怖じもせず、指紋をした。するとどういう事か、拳は誠司さんを勝手に避けた。それが何度も続く。


「拳を動かしてる?」

 ふと疑問のように呟く、すると天津が見解を述べた。


「多分、空で軌道を変えてるんだと思う」

 もしそれが正解だとするなら、誠司さんの反応速度、指紋の早さ、空の威力。どれをとっても圧倒的だ。


 ――あんな呪術士に俺もなりたい。




 急に天津が大きな声を出してから、指を差す。

「今なら扉の前、誰もいない」


 戦いに気を取られて、誰もそちらに注意を払っていなかったらしい。今が好機。


 ならべく目立たないよう、呪術は使わずに走る。天津は和服のせいでスピードが出ないが、なんとかなりそうだ。


 扉の前に付いた頃、後ろを確認すると、相変わらず派手な呪術を使って戦っている。


「手錠のせいで動きが制限されてるみてえだな!」お構いなしに動く大我さんが言った。


「貴方は少しくらい気にしてください!」

 悲鳴に近い従士の声を背に浴び、俺達は一位へと躍り出た。


「作戦成功だね」

 天津が嬉しそうに言った時、無駄な三角跳びをした二人組が、俺達の前に現れた。


 白井と卯月のC組ペアだ。こいつらも相当、がめつい。

「良い機会だ。潰してやるよ、水無!」

「君達より、あのくそアマだけど、肩慣らしくらいにはなるかな」

 二人は交互に煽って来た。


 それにしたって、女装姿は面白すぎる。しかもウィッグでツインテールまでしているし。


「笑ってるとか、随分、余裕じゃねえか」

 白井は木刀を振り下ろす。だが、俺達の前でそれは止まる。


「式神召喚、イリガミです」

 天津の式神だ。


 呪符を出してから出現させるまでのスピードがかなり早くなっている。


 舌打ちをして、木刀を戻す白井。

「そして、イリガミは表裏一体の式神」


 刹那、C組ペアの背後から現れたもう一体の式神。存在感の無い影のような犬に二人はまるで気づいていない。そして気づいた時には……。


 目の前に障害が無くなった俺達は、また歩を進める。


「やったな、天津」

 ハイタッチを決めてから、指令の前へとたどり着いた。机の上にモニターが置かれているだけの、ちんけなものだが。



 まあ自分達で設置したのだから、文句は言えない。


 リモコンで電源を入れると、借り物競争という文字が出て来た。置いてある封筒に持ってくる物が書いてあるのだが、その内容が学校の制服だった。注意書きに自分が着用している物以外と書かれている。変なところにまで気が回って困る。なければ俺のを出して直ぐだったのに。


 かといって人の物を勝手に持ってくるのは悪いし――。企画参加者の誰かのを強奪するとか? そういえば、白井と卯月はぶっ倒したし戻って手に入れるのもありか? 


 いやだめだ。引き返すのはは同時に危険が伴う。もっと最善の方法を考えろ。



「遅かったわね」

 その声は角から聞こえて来た。そして良く知っているものだ。


 現れたのは薫子と朝陽。なのだが、俺達の前に屋上から出たやつはいないはずだ。それなのに俺達よりも早く来ている。どういうわけだろうか。


「はっはーん、なぜって顔してんね」

 煽るような顔を向けて来る朝陽。どうせ、お前は薫子に付いて来ただけだろ。


「簡単よ。窓から侵入した」


 なるほど。誰もが屋上の扉に意識を向けてる中、意表をついたというわけか。さすがは薫子。悪知恵が働く。



 そこで、俺にも悪知恵が働いた。朝陽も薫子も制服を着ている。こいつ等から上着だけでも奪取できれば、借り物は達成だ。良い事に俺達の持ってくるものがなにかは分かっていない。ならば隙を作れる。


 そこで一度、薫子を見る。

 ――駄目だ。スキがない。つか、そんな度胸が俺には無い。そもそも、薫子と朝陽はなにを探しているのだろう。


 って、他人よりもこちらだろう。どうやって制服をゲットするべきか……。


 突如、天津に手を引かれ、俺達は歩き出した。周りに誰もいなくなったところで、詰め寄る。


「おい、どこに行くんだよ?」

 天津からは生徒会室。という短い返答が返って来た。


 生徒会室にあるもの――そうか。その作戦があったか。


 辿り着いてから迷わずに扉を開ける。それから天津はロッカーを開けて、制服を取り出した。


 天津は生徒会室で着替えた。だからここに残っていたのだ。これはラッキー。


「よし、戻ろう」


「足大丈夫か? さっきから走りっぱなしだが」


 ここまではそれなりに距離があったし、階段までかけて来た。歩き難い服装と、歩き難い靴では辛いだろう。だがのそのそ歩いていては上位をキープできない。靴だけでも変えなかったのが悔やまれる。


 そこで閃くものがあった。


「天津、ここで着替えたのなら、履いていた靴もあるんじゃないか?」

「うん、あるけど……あっ」


 それだけで通じたらしい。早速、靴を取り出し、革靴へと履き替える。革なので多少の重みはあるが、さっきよりは断然ましだろう。


 生徒会室を出てから、足早にさっきの場所に戻った。そして天津の制服を提示すると、クリアという文字が液晶に映し出される。


 そのタイミングでスピーカーから実況の声が聞こえたのだが、俺達がクリアしたのは五番目らしい。先に四組いるようだ。正直、二位くらいかと過信していた。



 急ごう。



 ペースを上げて階段を下り、次の指令場所までたどり着いた。そこには薫子ペア、大我ペア、誠司ペア、知らないやつがいた。


 どうやらあのバトルは終わってしまったらしい。時間を稼げると思ったんだが、そう上手くもいかないか。


 だが四ペアともここで止まっている。指令はそれほど、難しいという事だろうか。みな、手に紙を持って頭を悩ませている。


 その一つ、誠司さんのを盗み見る事ができたのが、こう書いてあった。


 『黒い犬と白い犬がいます。おとなしくて全然吠えない犬はどっちでしょう?』


 なぞなぞだ。

 正直、苦手とも得意ともいえない。閃きに頼る俺には特に。この問題の答えだって、まるで分からない。


 その問題と直面している誠司さんペアだが、千夜は問題そっちのけで明後日の方に歩き出した。


「あんなところに黒猫。かわいい」

 窓の縁にいた黒猫を抱え上げ、愛で出した。


 誠司さんは気にした様子も無いのだが、突如に分かった。と声を出した。


 いつも天然っぽい感じだが、まさか本当に謎が解けたのだろうか。こういうのは柔軟性が大事だというし、もしかしたら……。とにかく、この二人に先を越されたら一番、厄介だ。



 モニターの前のボタンを押してから、誠司さんは答える。

「答えは白だ! 理由は――白って頭良さそう。それに黒ってなんか怖いイメージある」


 ド真面目に答えているが、モニターには×印しか出てこない。


「えー、絶対、あってると思ったんだけどな。ちぇっ」

 うん、これなら早々、解けないだろう。



 俺達もモニターに近付き、一つのなぞなぞの紙を手に取る。

『目は四、鼻は九、口は三、では耳は?』

 は。


 偶になぞなぞは意味が分からな過ぎてイライラする事がある。

「なぞなぞだね」


 誠司さんの問題を見てない天津はここで理解したらしい。




 数字は目の数。とか一瞬、考えたが違う。漫画でも四個なんて中途半端なやつを見た事はない。


 天津も考えあぐねているし、大丈夫だろうか。


 他を見回す。大我さんは先ず解けないだろう。薫子は頭は良いが、柔軟性は無さそうだ。朝陽も人並みだろう。つまり焦らなくても平気だ。


 とその時、分かりました。と従士が声を発した。そう、大我さんのパートナーだ。完全にノーマークだった。


 ボタンを押してから答える。「チーズ!」

 なんとも馬鹿っぽい答えだ。だが、モニターには○と出ている。これがなぞなぞというものか。


「やるなぁ、姉ちゃん」

 大我さんは嬉しそうに従士さんに言う。


「私、十文字家のエリートですから」

 そのまま走り去ってしまい、大我ペアが一位に躍り出てしまった。


 そんな中、天津は呟く。

「共通点を見つけて、絞り込む……」


 なぞなぞにそんな高等技術があったのか。なんとなくこんな感じって答え方じゃないのか。


 共通点と言っていたので、俺もあげてみた。

「共通点なら、人間に付いているとか、全部、顔のパーツとか」


「そうなんだけど、それだけじゃどうも弱くて……」


 まあ確かに、この数字の羅列は意味が分からない。


 それからも天津が呟く。

「顔のパーツ……共通点……。あ――五感。五感だよ!」


 言われてみれば、全てが五感を使っているが、それがなんだというのか。


「ああ。だが、目と四の関連性が見えな……」


 俺は言葉を止めた。――閃きがあったからだ。


「そうか、四。つまり視力か」


 天津が何度も頷く。


「鼻の九は嗅覚、口の三は味覚。そして耳は……」



 少し考えると、おのずと答えは見えて来た。二人でボタンを押して、同時に答えを発する。

「兆!」

 直ぐにモニターには○の文字が出て来た。










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